My Love〜高校生編・第12話「ヤング・ボーイ」
裕華と僕の唇は、今初めて重なり合った。
ふっくらと柔らかくて温かいくちびる……。
「鼻が邪魔だと誰かが言ってたわ」という石野真子ちゃんの歌を思い出すくらい、一度ではあるがキス経験者の僕はほんの少しではあったが余裕が持てているのに対し……
まるで小鳥のように小刻みに震え、必死に僕の腕に手をかける裕華……そんな状態が30秒も続いたのだろうか?僕のほうからくちびるをゆっくりと離した。くちびるを外す瞬間ってどちらか先に離さなければならないのだが、裕華は初めてのキス、僕がリードしてあげるのが当然のことだと思った。
裕華はずっと下を向いたまま、僕にしがみついたままだった。僕だってキスをしている間は夢中だし緊張もする。だから初めての裕華は緊張もありはずかしさもあり、キスが終わった後、どうしたら良いのかもわからないでいると思う。でも僕も何が正しいのかを明確に答える事はできない。だからこそこんなとき裕華がホッとする優しい言葉をかけてあげられたらカッコいいんだろうなぁ……
しかし、語彙力のない僕は言葉が浮かばない。でもこのまま黙っていても先に進まない。決死の覚悟で口にしたキス後の第一声、それは僕にとって精一杯の本音だった。
「裕華、好きだよ。大好きだよ。ありがとう」
こんなシンプルで簡単で単純でストレートな言葉で裕華はどう思うのだろう?
下を向いていた裕華はその言葉を聞いて、やっと僕の顔を見上げた。僕の不器用な、でもそのストレートな言葉に裕華は不覚に思ったかどうか定かではないが涙を流していた。
「ヒロちゃん……ありがとう、とってもうれしいよ……私もヒロちゃん大好きだよ、キスって素敵だね。これからもず~っとず〜っと一緒に仲良くしてね。」
「もちろんだよ。裕華、これからもよろしくね。」
お互い見つめ合いながら…僕は裕華の最高の笑顔を見ることが出来た。愛おしい存在、こんなに胸が熱くなるほど愛した事は僕も初めて……
「裕華、まだまだイエッサー大丈夫だよね?」
「うん……大丈夫だよ……もう一回キスしたいんでしょ?」
「あはははは、バレたか、そのとおりだ」
「ヒロちゃん……私もだよ………。」
その後は余計な言葉は必要なかった。2回目のキスは裕華のほうからくちびるを寄せてきた。
これは僕もびっくりしたけれど愛し合う2人だから別におかしなことではない。僕も2度目のキスなので1回目とは違うところを見せたい。唇を重ねた後、大きく口を開け僕の舌は裕華の舌をまさぐっていた。びっくりしたような裕華だったが裕華の舌が僕の舌に絡んできた。
僕もそれは初めての経験、裕華の舌を唇で優しく吸い上げた…。まるでお互いの舌の取り合い、途中からおかしくなって2人で笑ってしまった。
「ヒロちゃーん、やだーーおかしくて、おかしくて……。」
「裕華、これが大人のキスっていうやつだよ、僕も初めてだったから……笑わせてごめんね」
大胆なキッスもまだまだ僕らには早かったかな?と思いながらも夕日が落ちるのも早いそんな公園の夕暮れだった。
帰りのバス停まで、公園から二人はまた手を繋いで歩いた。もうよそよそしさはなかった。僕らはもうただのお友達ではない。
そう、恋人同士、あぁなんていい響きなんだろう、手をつないで一緒に歩く仲、そして…唇を許しあう仲…とても幸せに思う僕であった。
こんなに全てがうまくいくなんて……。
幸せすぎて怖いくらいの16歳の若い少年。
その幸せすぎて怖いが本当になってしまう。
幸せのピークがここだとしたらあとは、まるで坂道を転がり落ちるかのように運命という悪魔に二人の幸せと気持ちを引き千切られていくのであった。
〜第13話に続く〜