My Love〜高校生編・第2話「今の君はピカピカに光って…」
裕華と席を隣合わせにしてからというもの、僕は学校に行くのが楽しくてしかたなかった。
元来、頭の良いほうではないので勉強が面白い訳がなく、かといって熱血的なスポーツ系のタイプでもなかった。強いて言えば歌謡曲とフォークギターとアニメの好きな、もしかして今でいう「オタク」系だったのかも知れない。
とにかく彼女が隣にいるだけで毎日、言葉にできない甘酸っぱい気持ちでいっぱいだった。これまでは彼女がほぼ一方的にしゃべってばかりで自分から声をかける勇気さえなかったのだが彼女の明るさが僕に勇気を持たせてくれた。
僕は精一杯の勇気をもって裕華に話しかけたのだった。
「か、柏木さん、さっきの数学のこの、も、問題わかります?」
おいおい、なんでそんなつまんない事をきっかけにしなきゃいけないんだ?あ、いやつまらないことではない、そもそも本来、学校とは勉強をしに来るところなのだ。おかしな事ではない。でも…彼女、シラけてないかぁ?あーやっちまったかな? 彼女の一言が怖かった。
「荒木君もわからなかった?実は私もなんだぁ!ね、後で一緒に先生に教えてもらいに行こぉ!」
あーよかった、彼女も気にしてしたんだね。
どちらにしても話のきっかけとしてはうまく転がっていった。
ひとつわかった事がある。この子は素直でまっすぐな子なんだなぁと…。陰も日なたも、嘘も方便もない純粋無垢な子なんだ・・・。
そっかぁ、変に意識しちゃ駄目なんだ。もっと気楽に向き合おう!そう思うと幾分話すのも楽になった。
「ね、柏木さん、昨日の『ザ・ベストテン』見た?」
「見た、見た、ツヨシ、かっこよかったね!」
今は「ナガブチ」と呼ばれているフォークのカリスマ、長渕 剛も昔はこう呼ばれていた。
「順子、いい歌だね。僕、今ギターで練習してるんだ。」
「え~そうなの?荒木君ってギターできるんだ。かっこいいんじゃない!」
「そ、そう?かっこいい?」
「うん、ギター弾ける人、好きだよ!」
え?今、何て言った?今? 好き!ってイッタァ~?
「お兄ちゃんも、お父さんもギター弾けるんだ。だから荒木君もかっこいい!!」
あ、その程度のレベルか、なぁ~んだ、でも、ポイント稼いだ!ギターが弾けるという事は彼女にとってポイントが高いらしい。
よしよし…。自分で自分を褒めている自分がなぜかおかしかった。
放課後、僕は裕華に連れられるまま、職員室の数学の先生のところまで一緒に行って、例の問題を教えてもらった。そんな問題は最初っからどうでもいい! 僕は裕華に話かけただけなのに…とは思いながらせっかくだからしっかり教えてもらった。でもこの事が、僕にとって思いがけないことになるのだった。
職員室を出たふたり、気が付けば友人はとっくに帰ってしまったし、部活をやっている友人を待って帰るわけにもいかない…。
もしかして、このシチュエーション、とっても、おいしい?もしかして2人っきりで一緒に帰れるのかぁ?
あぁドキドキしてきた…。でもこの気持ちをちゃんと裕華に伝えなきゃ!「一緒に帰ろうか?」ってただ言うだけだろう?
もう!ヒロユキのいくじなし!ほら、言えよ~!!
「荒木君、バス同じだから一緒に帰ろうか?」
情けない、彼女に言わせるなんて…。とは思いながら僕は飛び上がるくらい心の底からうれしかった。
「そうだね、一緒に帰ろう。」
そう、引きつりながらにっこりすると、裕華は満面の笑みで
「わ~い、やったぁ!」
と今まで見たことのない最高の笑顔で答えてくれた。その君の笑顔はピカピカに光っていた。
最高の気分で二人で待つバスの停留所、しかしその幸せとは裏腹に彼女の僕に対する真意が恋なのか、どうなのか?
知りたくて、たまらなくなってきたのだった。
〜第3話に続く〜