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三宿Web卒業生として #2
僕が三宿Webに出会ったのはもう10年以上前。
当時原宿にあった「エスカレーターレコーズ(現:BIG LOVE)」で海外(特にUKインディーズ)の新譜を積極的に聴いていた僕はオーナーの仲さんのレコメンドを必死に追いかけている毎日でした。
その中で、「とりあえず三宿Webでのイベントに遊びに来なよ」と誘ってもらい、全くクラブに行った事のなかった僕と友達(高校の同級生)はかなりビクビクしながら深夜に出かけたのを覚えています。
階段を降りた地下の入り口の独特なお香の香り、見慣れないバーカウンターでのカクテルメニュー。
仕切りの向こう側の暗ーいブースでプレイ中のDJを見て、とにかく非日常の世界に飛び込んだ感がすごくて、とても恐縮していました。
全くお酒の知識もなかった僕は精一杯背伸びをして「ニューヨーク」というショートカクテルを知りもしないのにオーダー。
全く味がわからなかったです。
とにかくその晩の「知らない世界に飛び込んだ」感覚が非常に頭に残っていて、遊びに行くだけで「大人」になった気分を味わっていたんだと思います。
それから一緒に通っていた友達とも少し差を付けたくて(おかしな話ですがきっとそう思っていたと思います)、気づいた時にはHPよりアルバイトの応募を送っていました。
少しでもあの空間の中にもっと入り込みたいと思ったのだと思います。
「店舗にて面接をします。」意外にも返信はすぐに来ました。
-面接日当日-
実際には初めて話すナガサワさんは首回りが深めのパーカーで顔を半分隠していて、全く表情が読めない...
視線だけわかるので全て見透かされているようでかなり緊張しておどおど受け答えした記憶があります。
「エスカレーターのイベントに来ていたみたいだけど、ウチはそれ以外にもいろんなアーティストがイベントをしているし、ヒップホップやJ-POPが流れるイベントもある。そんな中で好き嫌い顔に出さず仕事できる?」
そう聞かれました。
当時はかなりスカしていたので、「今の歌謡曲とか全然わからんわー」スタイルでいたのですが、そこはなんとかやりますと生意気に回答。
「憧れもあって、華やかに思っているかもしれないけど、地味な仕事も多いし、自分が犠牲になって我慢してこなす仕事も多いけどやれる?」
さらに念押しされました。
「やれます。」と回答。
右も左もわからない二十歳の僕には何事も考えず「YES」と答えるのが唯一武器でした。
その後も何度も「辛さ」、「厳しさ」を挙げ、確認をしてくるナガサワさん。
僕は必死に頷く。
なんとか無事その場で「これからよろしく」と握手をされ採用に。
その瞬間に見えなかったナガサワさんの表情がやっと少し見えました。
この時の事を昨日の事のようによく覚えているのには訳があり...
確かにナガサワさんが言う通りに三宿Webでの仕事は僕にとってかなり厳しかった(細かいそれはまたの機会に...)。
まだ若かったのでひたすらがむしゃらに取り組む事もできますが、キャパがオーバーする事もありました。
その度に面接時に「やれるか?」と問われ「やれます。」と答えた事がいっつもフラッシュバック。
僕は間違いなくナガサワさんにYESと約束していたから。
それは後に僕が他店舗のマネージャーになった時の面接時にかなり大事にしていた事。
「楽しくこの仕事をこなすには、相応の努力や我慢が必要。」
最初に意識をこの水準まで引き上げ、仕事に対する責任を感じさせる事です。
最初に甘い事を言ったり楽な事を言わず、モチベーションを保って腐らない「約束」をする事。
飲食の業界は「美味しく」、「楽しく」、「賑やかな」イメージを大切にする事はもちろんですが、人の体に入る物を提供している以上、言い方を恐れず言うと「殺す」事もできてしまう仕事です。
その為に働く人の「意識」というものは、常に目配り、気配り、心配りによって作られるものです。
その壁をクリアにすると、可能性が多くとても夢のある素敵な仕事だと思っています。
当時、採用してすぐ送られてきた三宿Webの業務マニュアル。
ナガサワさんの言葉で綴られたその膨大なテキストは単なるマニュアルではなく、もはや仕事や人生観における「心得」のようなものでした。
今でもたまに読み返しています。