フランス葬儀事情#07
世界のお葬式に関する話題をお伝えしています。
※2011年にフランスの葬儀業界を視察した際の内容を業界誌で「フランス葬儀業界探訪記」として特集して頂いた内容の抜粋となります。記載されている数値は当時のものになります。
レビヨン社訪問 火葬場&霊園
レビヨン社はパリで二番手という大手の葬儀社です。
ペーラルシェーズというパリ市内でも有名な墓地で待ち合わせて、すぐ近くの店舗へ案内してもらいます。
レビヨン社は元々墓石販売が母体の会社です。ペーラルシェーズ墓地の中にも管理しているお墓が多数あるということで、墓地の管理台帳や預かっている鍵を見せていただきました。
埋葬のお墓だけでなく、火葬後の骨壷を埋葬するお墓や納骨堂もあるため、骨壷も展示されています。レビヨン社ではオリジナルの骨壷も作成していて、棺の形をした骨壷もありました。
ペーラルシェーズ墓地の中には、火葬場も併設されています。この火葬場は、主に行政の出資で運営されていますが、唯一民間からの出資が認められているのがレビヨン社ということで、信頼度の高さが伺えます。
1880年ごろに設立されたパリでも一番歴史のある火葬場ですが、設備は新しくなっており、年間で約5000件の火葬を行うそうです。
セレモニーが出来る式場も大小3つ併設されています。このうち大ホールは、天井がドーム上に設計されており、市の重要文化財にも指定されているそうです。
セレモニーは、葬儀社のプランナーが家族と相談して予約を取った上で、火葬場に所属するディレクターが運営するそうです。おそらくこの火葬場独特の形だとは思いますが、プランナーとディレクターの役割分担が明確になっていることの表れだと思います。
フランスでは火葬をした場合、遺骨はお墓や納骨堂に納めるか、散骨するかを選択する形で、自宅などの手元においておくことは認められないそうです。ただし、すぐに決められない家族への救済策として、火葬場もしくは葬儀社が1年間は保管することを認められています。この火葬場でも850個の骨壷を預かっているということです。
行き先に困って置き去りにする人もいるのでは、と質問してみると、受け取りに来ない場合のマニュアルもあるそうです。
期限を1ヶ月過ぎても受け取りに来ない場合は手紙を出し、それでも返答が無い場合は電話もするそうです。どちらにも応答が無い場合、散骨してよい、という法律になっています。
日本でも遺骨を火葬場に置き去りにする例が多少なりとも発生しているので、いずれこのような処置が必要になるかもしれませんね。
フランスでは散骨も法的に認められており、散骨場の設置も法律で定められています。
ペーラルシェーズ墓地内の散骨場に案内してもらうと、まさに散骨の場面に立ち会うことが出来ました!ベルトラン社の時といい、今回の視察では実際の現場も見ることが出来て幸運でした。日ごろの行いのおかげですね。
散骨には、専用の容器を使っています。筒状の本体の底に、円周上に穴が開いており、上についた取っ手のレバーを引くと、穴から遺灰が出る仕組みになっています。
散骨場として定められた区画の芝生の上を、火葬場のディレクターが容器を持って歩きます。全て撒き終わると、芝生からでて一礼をして終了です。上に土をかけるなどの作業も一切行わないので、風が吹くと遺灰も飛んでいってしまうように思いますが、問題ないのでしょうか。
遺骨に関するスタンスの違いをまざまざと感じました。
ペーラルシェーズ墓地は著名人も多く眠っているということで、墓地の中も案内してもらいました。ショパンやモリエールといった日本でも有名な芸術家のお墓もこちらにあるそうです。
日本でも最近は様々な形の墓石が増えつつありますが、やはりフランスはバリエーションが違います。銅像が乗っていたり、建築した建造物の模型が乗っていたり、家ごとの小屋があったり、見ていて飽きません。実際に観光名所でもあるようです。これだけ形がいろいろだと墓地の中で迷子になることもなさそうですね。
6、 レビヨン社訪問 サロン
火葬場と墓地の見学が終わると、社長自ら車を運転して、レビヨン社のサロンまでご案内してくれました。
パリ郊外のサロンまでは車で30分ほどでしたが、市内とは風景が全く違う、のどかな町でした。
サロンは2階建てです。1階はサロン、つまり葬儀社運営の安置施設として運営していますが、2階はなんと一般向けの賃貸住宅だそうです。日本だったらまずあり得ない発想ですね。
それが成立していることもすごいと思います。
サロンは基本的な面会時間が午前8時30分~正午まで、午後2時~5時までと決まっていて、それ以外の時間は予め電話でお願いをするそうです。昼休みの長さにもお国柄を感じますね。
内装は柔らかい黄色を基調としていて、広々とした印象です。サロンは大小併せて7部屋で、大きいお部屋にはトイレと洗面所も内部に設置されています。居心地の良さを追求し、椅子の高さにもこだわって設計をしているということでした。
サロンには世界各地の風の名前がついており、おしゃれな雰囲気です。(フランスだから、という先入観から余計にそうみえるのでしょうか)
このサロンは、霊安室の設備も非常に整っています。このサロンは、2007年に繊維工場だった施設を買い取り、改装したそうです。
2003年に記録的な猛暑を観測したフランスでは、例年より1万5千人も死者が多く、安置のスペースに困る事例が続出しました。その際の教訓を活かし、テロや災害などの緊急事態に備えた設備を整えようと、社長が独自に用意した霊安室は、70~120体のご遺体を収容できるようにしてあるそうです。
民間の葬儀社として社会に貢献する素晴らしい取り組みですね。
霊安室の横にはエンバーミングのための部屋もありました。レビヨン社でも火葬のお客様が増えているそうですが、単価の下落を抑えるために、エンバーミングや棺のグレードアップ等オプションの提案を積極的に行っているそうです。
15年前は8%だった火葬率が、現在は30%になっており、20年後には60%ぐらいまで増加するだろうという予想をしているということでしたが、単価の安い火葬が増加することに対する企業としての対策としては、商圏を広げ、件数を増やすことがメインということです。
従来の墓石業者の廃業が相次いでいることから、墓石のシェアを伸ばし、葬儀部門の補填も考えているそうです。
レビヨン社はパリで2番手に大きな葬儀社ということでしたが、社長さんは自ら車を運転して案内してくださる気さくな方でした。今後も益々発展してパリ一番を目指すとおっしゃっていたので、われわれも負けずに頑張りたいと思います。
フランス葬儀事情#08に続きます。
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