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葬儀社の主な業務内容

あまり知られていないお葬式の業界について経営学の視点からお伝えしています。

葬儀の種類

  葬儀の種類を「一般葬」「家族葬」「一日葬」「直葬」の四種類に分けて述べる。

 一般葬
 亡くなった故人だけでなく、その家族・親族が関わりを持ったコミュニティに対して広く葬儀の開催を告知し、通夜及び葬儀・告別式に家族・親族だけでなく“会葬者”と呼ばれる関係者が参列する葬儀である。本来の葬儀・告別式の意味合いを考えると、会葬者が参列するのは葬儀・告別式であるが、昨今は通夜のみに参列する会葬者が非常に多い。これは、家族・親族以外が日中に葬儀のために仕事を休むという文化が廃れてきたためであり、葬儀規模縮小の傾向の一部といえる。

 家族葬
 その名の通り“家族”を中心として、故人と直接関わりのある親しい間柄のコミュニティ内に告知され、通夜及び葬儀・告別式に、ほとんどは家族・親族を中心として、場合によっては家族同然の付き合いをしていた、ごく親しい友人などが参列する葬儀である。葬儀の流れ自体は「一般葬」と変わりなく、参列者の範囲によって一般葬と区別されるため、宗教的な儀礼の有無は区分に関与しない。

 一日葬
 “費用を抑えたい”“健康面から長時間の参列が困難な関係者が多い”など、様々な事情により時間を短縮するため、通夜を行わずに葬儀・告別式一日のみを行う葬儀である。実質的に規模も小さくなりやすく、告知の範囲は「家族葬」とほぼ変わらないことが多いが、一般葬と同様の範囲に告知する場合もある。

直葬
 「一日葬」から更に宗教的な儀礼などを排し、火葬のみ行う形である。告知の範囲としては、「家族葬」「一日葬」とほぼ変わらない場合もあるが、親族には伝えず、故人と直接血縁関係のある家族のみで執り行われることも多く見受けられ、参列者がごく限られた人数の場合が多い。
上記の通り、「一般葬」「家族葬」「一日葬」「直葬」は、葬儀に参列する範囲と形式によって区別される。

(出所)筆者作成

サービスの流れと内容

 次に、葬祭サービスを提供する流れと、その詳細を述べる。
以下に記載する内容は一般的な内容であり、上記の葬儀の種類によっては省略される項目もある。

依頼の受領
 利用者からの依頼を受領し、必要な情報を聞き取る。葬儀の依頼は、電話で行われる場合が大半を占めるが、利用者から葬儀社に直接連絡がある場合と、紹介者が仲介して連絡する場合がある。

搬送・安置
 現在は、死亡場所が病院や介護施設などになる場合が多く、そこから安置場所へのご遺体の移動が必要になる。そのため、葬儀社が運行または手配した霊柩寝台車によって、搬送する。尚、搬送の際は、故人の家族が自家用車で運ぶ場合を除き、一般貨物自動車(霊柩限定)の免許が必要となる。
 搬送後の安置場所は、葬儀社が運営する葬儀式場・安置施設や、公営の火葬場などの保管場所が選択されることが多い。以前は自宅に安置することが当たり前であったが、現在は、様々な理由から自宅での安置が難しい場合が多く、専用の施設が求められている。

打合せ
 葬儀の具体的な内容を決める打合せであり、葬儀社の担当者と遺族の代表者が、葬儀形式・日程・場所を元に詳細を決定する。この時点で見積書を発行し、利用者と葬儀請負契約を結ぶことが多い。

納棺
 ご遺体を棺に納める儀式である。火葬するためには、必ずご遺体が棺に納められていることが求められるため、これはどの葬儀形式の場合でも必ず行われる。映画「おくりびと」は、この納棺の部分のみを行う納棺士を主人公に据えている。

通夜
 葬儀・告別式の前日に行う儀礼である。本来の通夜は、夜を通して家族・親族が故人を見守ることであったが、現在は約1時間の宗教儀礼を指すのが通例となっている。尚、現在は無宗教葬を希望する遺族も増えつつあるため、必ずしも宗教的な儀式が行われるわけではない。
前述のとおり、会葬者が参列する場合、通夜に参加することが多くなっている。そのため、参列後の食事や返礼品などを用意することが多く、葬儀社にとっては売上を上げやすい項目である。

葬儀・告別式
 出棺前に行う儀礼・式典である。本来は、葬儀は宗教的な、家族・親族が参列する儀式であり、告別式は社会的なお別れとして明治期に始まったものであり、会葬者が参列する式典である。当初は、葬儀と告別式は時間を分けて行われていたが、簡略化の流れの中で同時進行が通例となった。葬儀・告別式の時間中に、初七日法要も繰り上げて行う場合もある。
 これらの儀式・式典終了後、式場内で最後のお別れを行い、火葬場への出棺となる。出棺には霊柩車を使用するが、これは寝台車による搬送と同様に一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)の免許が必要である。

火葬
 火葬場で棺を火葬炉に納め、火葬終了後収骨をして骨壺を遺族が受け取る。火葬場は公営が多いが、東京23区は民営が大半を占め、横浜市にも一部民営の火葬場存在する。火葬炉の操作や収骨作業については、火葬場の職員が行うため、進行に沿った案内をするのが役割となる。
 
 葬儀が発生してからのサービス内容は以上であるが、上記以外に、葬儀発生前の問合せに対する対応や、事後の請求・集金、アフターサポートなども業務に含まれる。

施設・設備


 上記のサービスを提供するにあたり、式場機能・安置機能・霊柩車、寝台車などが必要となる。

式場施設
 現在では家族葬の利用に特化した小規模な施設が主流となっている。従来の葬儀式場が一般葬を想定して、多数の会葬者をスムーズに案内することに主眼を置いているのに対し、家族・親族など故人と近しい立場の人々が、最良のお別れをするための空間を構築することに注力している。
 具体的には、実際に式場施設に家族・親族が来館してから、葬儀が終了するまで、式場よりも控室に居る時間の方が長いため、控室に式場と同等のスペースを割き、故人も控室に安置できるようにしつつ、くつろぎやすい環境を整えていることが多い。これは、現在の生活者のニーズが、「仰々しい式場は必要ない」「故人と一緒に過ごしたい」「自宅で故人と過ごすことは難しい」ということに集約されたため、自宅のように過ごせる、というニーズを念頭に設計したことによる。そのため、バス・トイレなどの設備はもちろん、簡単な調理が行えるキッチンスペースを用意している施設もある。
 また、式場設備についても、家族葬を想定しているため比較的小さなスペースとなっている。一般葬を想定した式場の場合、50人以上が座れるスペースを確保することが多いが、家族葬の場合は、10~30名分のスペースに留まっている。これは、少ない人数に適切なスペースを確保することとともに、スタッフ側の管理運営のクオリティを保つための工夫でもある。

安置施設
 安置専用の施設に対する需要が増加している。以前は亡くなった後は自宅で安置するのが当たり前であったが、現在では、葬儀社の安置施設や、火葬場などに附帯する保管設備の利用が圧倒的に多い。
 自宅ではなく安置専用施設の需要が高まった理由は、主に3点考えられる。
 1点は、高齢化に伴い故人が最期に暮らす場所が介護施設になることが多く、自宅を処分している場合もあり、無人になっていてすぐに使用できる状態でないためである。故人の子供などの親族についても、離れて暮らしているために葬儀を行う地域から遠い場合が多い。
 2点目は、地域社会との関係性が変化してきたことにより、周囲に不幸を知られたくないというニーズが発生したことである。自宅にご遺体を安置する場合、安置をする際のタイミングはもちろん、その前後でも葬儀社スタッフをはじめ人の出入りが激しくなるため、不幸があったことが知られやすい。以前は不幸があれば、自宅玄関には忌中であることと、葬儀日程のお知らせを掲示したり、町内会の掲示板に訃報を掲示したりするのが当たり前であったが、現在は防犯上の観点からも行わないことが増えているように、周囲に知られたくないというニーズがある。
 3点目は、自宅の物理的な間取りの問題である。従来の日本の住宅は、葬儀自体も自宅で行う想定であり、和式の可変的な間取りでスペースを確保しやすかったが、昨今は洋式の住宅が多く、ストレッチャーや棺に入った状態の遺体を移動するのが困難な場合が多い。
 また、前述のように故人の自宅が無い場合、子供などの自宅が候補になるが、もともと故人が住んでいないため、故人のためのスペースが用意しづらい場合が多い。
 更に、自宅では遺体の温度管理を徹底することが難しいため、衛生面から考えても、エンバーミングをする場合を除いては、長期間の自宅安置を推奨できないという葬儀社側の意見も多少の影響はあると思われる。
 上記の理由から、一般的に自宅安置から専用安置施設の利用に大きく傾いている。

霊柩車・寝台車
 現在、葬儀社を行う上で法的な制約や免許は無いが、遺体を運ぶ霊柩車・寝台車については、運輸局から一般貨物自動車事業(霊柩限定)の免許を取得する必要がある。
 これは、遺体が法律的には「モノ」として扱われるためであり、この搬送で利用者から代金を受け取っていることから必要とされる。そのため、葬儀社の中には自社では搬送のための車両を持たず、外注している企業も多いが、尚、霊柩車とは火葬場への出棺に使用する専用車両を指し、出棺時以外の病院から安置場所までの移動や安置場所から式場への移動などに使用するのが寝台車として分けている。

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清水ゼミ《葬儀社経営を学ぶ勉強会》
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