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【写真】デジタルかアナログか

フィルムは終わるのか

ファインアートフォトをやっていると多くの方や作品と出会います。デジタル写真はもちろんのこと、フィルム写真や、オルタナティブプロセスなど多種多様です。私も作品によってはプラチナ・パラジウムプリントという約120年前に発明されたプリント方法も行って来ました。それはデジタルにない美しさと高いアーカイバル性(耐候性)を持っています。

オルタナティブプロセスは写真の歴史の中で割と初期に発明された手法です。プラチナの他、鶏卵やサイアノなど約7種類ぐらいが現在でも技術継承されており、アートマーケットにおいてもある程度のシェアを持ちます。
但し、このアルタナティブの話をし始めたら終わらないので、現代のデジタル写真と今なお残るアナログ写真(フィルム+印画紙)について考察してみます。

工程が複雑なアナログ

世の中の技術の進化がもたらすものはひとことで言うと「難しいものを簡単にする」ことです。デジタル写真ももちろんその「難しいものを簡単にする」技術の代表と言えます。
アナログ撮影は35㎜フィルムで通常36枚まででフィルム交換が大変でした。撮影の後も大変でした。フィルム現像だけでも、現像→停止→定着→洗浄→乾燥→カット&整理 という工程を行います。

プリントも引き伸ばし器にフィルムと印画紙をを設定し、適正なピント、露出時間を設定し、一枚一枚焼き付けます。その後の現像工程はフィルム同様の工程ですが暗室を必要としました。但し、フィルム時代の後半の店舗ではこれらの作業の多くは自動化され「当日プリント」も可能になってきました。

一方デジタルはこれらの工程をほぼ失敗なく、と言うか必要なく一気に映像化でき、データのみであればクライアントに送信でき、そのフォーマットは印刷機やWebまで互換性があります。今や当たり前のことですが凄いことなのです。もちろん家庭のプリンターにおいても簡単にプリントできるのです。

写真としての違い

では写真の質としてはどうでしょうか。デジタルの方が色域も広くなって来ました。解像度は大判フィルムに匹敵する性能です。A1サイズ以上にプリントしても何も問題ありません。但し、色の明るさは256段階で表現されていいます。要するに256段の階段状になっているのです。

アナログはこの明るさのステップはなく滑らかで階調の段数は無限大と言えます。
デジタルにおいては色使いや粒状感は「〇〇フィルム調」と言ったようなモードがカメラや画像処理ソフトに設定されて、アナログを再現できるようになってきましたが、アナログのスムーズな階調のつながりだけは理論上どうしても再現出来ないのです。そこが「アナログの方が美しいね」とか「デジタルってカクカクしてるよね」という印象はこの影響だと思います。

現代アートではどっち?

現代アートととしてはデジタルとアナログはどちらが適正なのでしょうか。現代アートというくらいですからデジタルであるべきで、アナログは単なる懐古趣味の後ろ向きなアートと受け止められてしまうのでしょか。

2019年の10月、ロサンゼルスのギャラリーでフォトフェスティバルがあり、そこに私の作品も出展されたのでオープニングイベントに出席しました。そのときにサンディエゴにあるMOPA(ミュージアム オブ フォトグラフィック アーツ)という写真美術館を訪れることができました。

MOPAは全米に4つしかない写真専門美術館のひとつとして権威のある美術館です。そして私たちは運よく館長のデボラ・クロチコさんにお会いすることができました。私たちの作品を見ていただいたり、いろいろな質問に答えたりしていただきました。

サンディエゴのMOPA 格式高い写真美術館です。

その中で「ファインアートフォトとしてデジタルとアナログはどう使い分けるべきか?」という質問をさせていただきました。
デボラ館長の答えは、

「どちらも現代アートです。たかが100年ちょっとの中でのできごとで、人類の美術の歴史の中では一瞬に過ぎません。あなたの好きな方で良いと思います」

もう全然視点が違いました。そしてとても腑に落ちる回答でした。
自分の表現として合っている方を使えば良いのです。

MOPA館長のデボラさんに私のプラチナ・パラジウムプリントを見てもらっています。

今後も安定してフィルムや印画紙、オルタナティブ用の薬品などが手に入るかと言う懸念がありますが、手に入るうちはアナログという選択肢もアーティストして「あり」ではないでしょうか。


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