池永寛明|社会文化研究家

コロナ禍・ウクライナ紛争を契機に構造変革しつつある日本社会の過去・現在と未来を構造的・文化的に捉え、未来を展望・発信。AIと社会をつなぐデータビリティコンソーシアム事務局長・Well‐Being部会長、堺屋太一研究室主任研究員など。著書(「日本再起動」「上方生活文化堂」など)

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コロナ禍・ウクライナ紛争を契機に構造変革しつつある日本社会の過去・現在と未来を構造的・文化的に捉え、未来を展望・発信。AIと社会をつなぐデータビリティコンソーシアム事務局長・Well‐Being部会長、堺屋太一研究室主任研究員など。著書(「日本再起動」「上方生活文化堂」など)

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    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

最近の記事

世界は日本を買いつづけるだろうか?

平日の昼下がり、テニスラケットを買いに、梅田のテニス専門店にいった。店内は混在している。海外の人、とりわけ中国からお客さまが多い。店の人を探すも、全員、接客している。お客さまの中国人は、店員のテニスラケットの説明をスマホで誰かに伝えている ライブ配信で紹介販売する中国のライブコマースなのか、中国にいる普通の観光客なのか分からないが、なぜ日本にいる中国人のスマホを通じて日本人の販売員の説明を聴き、中国にいる中国人が買うのだろうか?為替レートで割安なこともあるが、それだけではな

    • 漢字はなぜ漢字というのか?―なんでも○、なんでも正解(下)

      母の実家である兵庫県佐用町平福を久しぶりに訪ねた。室町時代は城下町、江戸時代は宿場町であった静寂な町の古い瓦をのせる三角屋根がつづく伝統的建造物群を歩くと、心安らぎ、日本的なものを感じるが、日本住宅のルーツは中華文明である。三角屋根は世界各地にあるが、瓦をのせる三角屋根は中華文明である証拠である。日本の住建築の風水や鬼瓦、暦、節句など生活習慣などの多くは、中国から来ている 漢字とは、漢の字と書く 中国人は日本人が使う「漢字」という言葉に驚き、親しみを覚えられる。現代の日本の

      • なんでも○、なんでも正解(上)

        小学校のテストの採点、クラス全員○ ある小学校のクラスで、テストがあった。そのテストの採点結果は全員○、全員正解。先生不足のために応援に行った先生OBが、そのクラスの担任に、「この子の解答、間違っているよね。どうして○にしているの?どうして全員○なの?」と訊ねると、「いろいろと面倒くさいじゃないですか!✕にしたら、いろいろと言われて鬱陶しいじゃないですか!」と若い先生が、なにがおかしいの?と顔で答えた ついに、ここまできたのか 1 なんでもかんでも「ヤバい」 いろいろ

        • 自分がいない―(続)闇バイトの裏に流れている時代の文脈

          闇バイトさせる人、闇バイトする人。凶悪犯罪の頻発に、SNSでの「闇バイト」アルバイト勧誘の見本を紹介しながら、「闇バイトにだまされないように、詐欺の加害者にならないように」との公的機関による投稿が続き、マスコミ等での報道がつづいているが、それが真の課題の解決だろうか?本当の課題の所在は、そこにあるのだろうか? 1 「自分」とはどういう意味? 闇バイトの増加に、なにがおこっているのか?その背景に流れる課題として、前回は「ソサエティとコミュニティ」の変化から考えたが、今回は個

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          闇バイトの裏に流れている時代の文脈

          なにがおこっているのだろう?この広域強盗事件を闇バイト・ホワイト案件を中心に捉えられているが、その視座だけでいいのだろうか?物事には背景・文脈があり、それがおこった社会構造の変化の本質をつかまないと、これからの社会を読み違えてしまう 1 ハイブリッドワークが、社会を変えつつあること あれから 毎日会っていた会社の人となかなか会えなくなった 人と人の直接性が減り、関係性が薄くなった コロナ禍でテレワークがはじまって 出社とテレワークが混在する ハイブリッドワークが普通にな

          闇バイトの裏に流れている時代の文脈

          グラウンドに一礼する子どもたち―美しい日本⑤(追伸)

          そのソフトボールチームの子どもたちは、練習の始まりと終わりに、グラウンドに一礼する。そんな一礼する子どもたちを見て、いい姿だな、清々しい気持ちになる大人に対して あの監督はなぜ子どもたちに グラウンドに一礼させるのだろう? 意味が分からない、鬱陶しい気分になる大人がいる 日本からかつてあった文化が、消えつつある そのシーンを見なかったら、そのことに触れたことがなければ、意味や本質が分からなくなり、消えてしまう。かつてあった日本文化が消えつつあるのは、それをする人が減って

          グラウンドに一礼する子どもたち―美しい日本⑤(追伸)

          世界の人にとって「なんでもあり」の日本―美しい日本④(最終回)

          「日本はスゴイ」というテレビ番組の視聴率は高い。なぜか?それを観たら気持ちよくなるから。日本は美しい、日本はすごい、日本は美味しいと日本に来た外国人から言われると、嬉しくなるから   日本が拠って立つのは、そういう評価   外国に出た日本人の多くは、おどおどする。欧米に行き、欧米のカルチャーに合わすのが苦手である。日本だったらダメということが、世界では大丈夫ということがある。世界では食べっぱなしで外にでてもなにもいわれないのに、日本人にはそれができない。食べ終わって食器はどこ

          世界の人にとって「なんでもあり」の日本―美しい日本④(最終回)

          横断歩道で停まってくれた車に、「ありがとうございます」と頭をさげる小学生がいる国―美しい日本③

          「思いを致す」という言葉がある。時間的・空間的に遠く離れた物事に心を向けるという意味の日本語である。「思いやり」という言葉がある。相手の立場になって考え、思いを共有すること、心を配ること。日本人の豊かな「想像力」が日本を創ってきた 「今月の大切な予定はいつですか?」 私の通っている散髪屋さんは、今月の重要なイベントをさり気なく訊く。1週間後に大きなイベントがあると聴くと、1週間後の私の髪の状態を想像して、散髪する。散髪1週間後、私のお気に入りの状態になっている   「美味し

          横断歩道で停まってくれた車に、「ありがとうございます」と頭をさげる小学生がいる国―美しい日本③

          バッターボックスのゴミを拾う大谷翔平選手の心―美しい日本②

          その京都の和食のミシュラン店は、京文化を体感できる良い店だった。円安インバウンドブームで、日本料理が人気となり、予約困難店となった。コロナ禍前の1人3万円が7万円になった。普通の人には高すぎて行けない。その店に行った人から聴いた あの店、変わってしまった むごいほど落ちてしまった なにが落ちたのか?店主は同じだが店のスタッフが変わり、料理の味が落ちた以上にお客さまへのもてなしが落ちた。長年お店を支えていたスタッフがいなくなり、その店の空気が変わった インバウンドで日本人

          バッターボックスのゴミを拾う大谷翔平選手の心―美しい日本②

          日本が生き残る道-美しい日本 ①

          「SHOGUN 将軍」がエミー賞で史上最多の計18冠に輝いた。世界が日本を評価したとのニュースが飛びかった。舞台設定、ストーリー展開が巧みであり、映像のアングルは70年前の黒澤明監督の羅生門を彷彿させた。なかでも真田広之さんはじめ日本人俳優・女優の所作が、かつての日本人の所作であり、美しかった。「SHOGUN 将軍」は、本当の「日本美」が評価されたのではないだろうか では、本当の日本美、美しい日本とはなにか? 1 日本人の美的センス まず日本美を創る日本人の美的センスを

          日本が生き残る道-美しい日本 ①

          日本から「日本ならでは」が消えつつある

          「日本のアニメは、この20年で大きく変わりましたね。バイオレントなアニメが増えた。流血や暴力が増えた。子どもには見せられないシーンが増えた」ー若いインド系イギリス人の弁護士と日本文化を議論した時に、日本文化が好きだという彼は、日本文化の変容を懸念する   「日本ならでは」が飛びかう。毎日のように「日本ならでは」の記事が並ぶ。日本はすごい、日本は素晴らしい、日本は世界とは違う。しかしここでいう「日本ならでは」は、本当の「日本ならでは」なのだろうか?  1 「日本性」が日本を創

          日本から「日本ならでは」が消えつつある

          孫文はなぜ孫中山と呼ばれているのか?

          中国で孫文ブームが起こっている。中国で孫文の銅像が次々と建立されているという。日本では孫文と呼ばれているが、中国では孫中山と呼ばれ、銅像には「孫中山」と銘打たれているという なぜ孫文は、孫中山と呼ばれているのか? この呼び方に、中国の日本への基本姿勢が浮かび上がる 中華民国の国父と言われる孫文は、270年続いた清朝満州族から中国を漢民族に取り戻し、中華民国を作りあげた。その功績で、国父と呼ぶ台湾だけでなく、中国大陸でも「近代革命の先駆者」と崇められているが、その孫文の銅像

          孫文はなぜ孫中山と呼ばれているのか?

          どこまでも拡がる人―松岡正剛先生の死を悼んで(下)

          「1000のキーワードを考えてください」と「日本再起動」に向けた対談にあたり、松岡正剛先生からそう宿題をいただいた。大阪ガスエネルギー・文化研究所のメンバー全員で、古代から現代の時間軸を横軸に、社会・産業・技術・生活・教育などの12のテーマを縦軸に、1000のキーワードをマトリックス表に埋めた キーワード1000のマトリックス表をテーブルに並べ、先生と事前ミーティングした。そして大阪難波の法善寺の水掛け不動さんに水をかけ願を懸けた。そのあと、縦横無尽の議論に展開した。その一

          どこまでも拡がる人―松岡正剛先生の死を悼んで(下)

          どこまでも深い人―松岡正剛先生の死を悼んで(中)

          なにかを選ぶことは、なにかを捨てること。戦略とは勝つための方法を選択することだが、なにかを選択しないことー私はこれを肝に銘じている   「スマホのメリットは言うまでもないが、スマホによって、人の力から『地理軸と時間軸』が弱くなっていく」―6年前の「知の巨人」松岡正剛先生への「スマホのメリットとデメリットは?」の大阪ガスエネルギー・文化研究所長時代の私の問いへの答えだった。これから本格化する生成AI時代に、人からなくなるチカラであることを認識しないといけない。卓見だった 亡き

          どこまでも深い人―松岡正剛先生の死を悼んで(中)

          話がひたすら面白い人—松岡正剛先生の死を悼んで(上)

          知の巨人松岡正剛先生が亡くなられた。学生時代から、勝手に師匠と仰ぎ、先生の膨大な本を耽読してきた。博覧強記の松岡正剛先生と、大阪ガスのエネルギー文化研究所所長時代に、1年間、大阪の法善寺横丁と東京の豪徳寺の本につつまれた知的空間で、日本再起動をテーマに対談させていただいた濃密な時間を忘れられない 松岡正剛先生の死を悼み、2017年から2018年にかけ、3回にわたって大阪ガスエネルギー・文化研究所の「情報誌CEL」で対談させていただいた内容を再録させていただく。来年に迫った大

          話がひたすら面白い人—松岡正剛先生の死を悼んで(上)

          話が面白くない人たち

          1人で流暢に話すことはできても、知らない人との会話が成り立たない—マスコミによく登場する学者やオピニオンリーダーと呼ばれる人にも多い。自分の世界のなかでの一人語りはできても、議論が嚙み合わない有名人もいる   意図せず、自分が好きなニュースや情報空間に毎日過ごしてしまう。フィルターバブルやエコーチェンバーの弊害をもたらすといわれだして久しいが、自分の関心のある情報ばかりを意図せずに集めて、自分にとって都合の悪い情報を排除する傾向が強まっている。自分と異なる価値観や考え方に触れ

          話が面白くない人たち