バラが抱えている問題について考えてみた
千葉県の八千代市に在住する者として、市の花「バラ」に関心を持ち、より深く知りたいなとこの歳になって色々学んでいます。個人的な忘備録ですが、興味ある方の一助となればと思います。(後半重複で冗長となるため、一部敬称略です。ご容赦ください🙏)
千葉県立中央博物館で開催中の「令和3年度特別展 バラのすべて 〜All about Roses〜」は御巫由紀(みかなぎゆき)先生が監修する企画展で令和3年10月9日(土)~令和3年11月28日(日)の期間中、植物学・園芸・美術史あらゆる角度からバラの魅力に迫るというものです。
その特別展の中の一つに位置づけられる自然史シンポジウム「バラの育種最前線」を見に行きました。とても人気のイベントで申し込みは大幅に定員オーバーとなり、抽選を通過できたことは非常にラッキーでした。
会場内は写真撮影禁止だとのことで、メモを取るのが遅い僕はいつもカメラに頼っているので…途中で諦めました😆だったらオンラインにすればよかったと多少後悔もしましたが、やはり生でこれらの方々のお話を間近で拝聴できるのは、吸収力が違うかなとも思いました。この手のイベントで通常当たり前なオンラインアーカイブは期間限定でもいいからやってくれたら良いかなあ、と思いました。
なので以下かなりざっくりです。
※2021/12/29追記
オフィシャルなアーカイブ動画が公開されました。
https://youtu.be/b6jW2wDuYxk
前置きが長くなりますが、そもそもブリーダーでもないし、バラさえ庭にない僕がバラに興味を持ったのは昨年10月に千葉市でイベントを開催した時、当時京成バラ園の社長だった北村 恵喜さんと知り合ったのがきっかけ。
一緒に御巫先生の講座「バラの歴史」を見に行き興味を持ちました。御巫さんの著作も書籍や電子ブックでいくつか購入したり、今年は「バラのすべて」の一つ山田道恵先生のボタニカルアート体験「バラの植物画体験教室」にも参加しました。
さて「バラの育種最前線」には6人の個性的な育種家たちが出演しました。
●大場秀章(東大名誉教授)さんは御巫先生が学部生の頃からお世話になっていた方。著作「バラの誕生」は当時それに関するものがほとんどなかったため研究者や育種家たちは貪るように読んだそうです。大場さんは演題「バラの園芸化と19世紀以前のバラの育種」についてご登壇なされました。
「園芸化」とは人類が野生のバラが持つ様々な用途・魅力に少しずつ気づき、暮らしの中で次第に利用の幅を広げ、ついには観賞する・育てて楽しむプロセスと読み替えることができます。
驚くべきことに最初は戦場で利用されました。日本だと サルトリイバラ(ユリ科)、ジャケツイバラ(マメ科)などがそれにあたります。鉄条網の別名としてバラ線という言葉を今でも耳にすることがあるかもしれません。
地中海、中近東では裸同然だったことから直射日光を避ける日焼けオイルとして利用され、そして香りの良さに気づきます。これはやがて芳香剤や香水の発展へと繋がります。そして、防護柵からの発展で美花を垣根にしたり、中庭に低木を植えたりが始まり花の色や形への関心が高まります。
共和制ローマから帝政ローマの時代には鑑賞や香りの利用が中心となり、薔薇は優雅・高貴の象徴となります。中世になっても、聖母マリアの絵画の背景に使われるなど、その存在や価値は揺るぎないものになります。
セ・ミブレナはビーナス誕生の絵の背景に描かれたバラ。かなり遠くから香るそうです。香水に不可欠なダマスクバラや夏至すぎても咲くコウシンバラ、ローザケントフォリア(キャベジ)などなど原種による園芸が始まり、18世紀以降の園芸への関心の高まり・交配が盛んな時代への準備が整えられて行ったのでした。
まとめるとオールドガーデンローズの時代には野生種を栽培、自然発生的な突然変異の栽培をしていて、モダンガーデンローズの時代には積極的な交配の時代、みたいな感じでした。
●続いてバトンを渡されたのは岐阜から上田義弘さん。演題は「20世紀以降のバラの育種」です。岐阜県立国際園芸アカデミーの前学長さん。
トランスポゾン、いわゆる「動く遺伝子」を使ったラ・フランスがある意味マイルストーンらしい。大場さんの説明にあった積極的な交配の時代の幕開けを作った品種。最初のハイブリッド・ティー・ローズ。交配を繰り返した結果、自然界には存在しない個体間の交配に由来する完全に人工のバラです。オールドか、モダンかはこれを境にするようです。
ここから一気に、青色のバラのルーツになるグレイパールやその他様々な品種クイーンエリザベス・アイスバーグ・スーパースター・コンスタンス スプライ・パパメイヤンなどが生まれます。鈴木省三さんの乾杯もそうです。
修景用バラという概念も。都市の隙間を手間をかけず放っておいてもそこそこ景観を満たしてくれる用途にと。
色のコントロールも。カロチノイドを使った黄色のバラの開発。第二次世界大戦の終結の年、フランスの有名なバラ育種家であるフランシス・メイアンが作ったバラがピースと名付けられ販売されました。
色といえば困難とされたブルーのバラの歴史。1945グレーパールがおそらく源流で、青龍1992、ターンブル2006と続き、サントリーがブルーのバラを開発。真の青はアジサイなどに見られるデルフィニらしいけど。書いててなんだか訳わかりません。こちらで正しい知識をどうぞ。ウイキペディアも参考に
香りの幅も広がっていきます。人類の欲望は果てしないですね。資生堂がバラの香りのタイプと主な品種を7つに分類しました。(写真撮れなかったので詳しくは忘れました)
▶︎あまりの情報量の多さに脳みそがパンクしかけた時、ここで一旦休憩。ホールでみんなで記念撮影しました。もらえるの楽しみ!そういやボタニカルアートの時も写真撮ったはずだけどまだもらってないや。
続いてのパネルディスカッションの時間は本当に楽しかった。和気あいあいと楽しい雰囲気でざっくばらんな本音トーク。4人のパネリスト。演題は「これからのバラの育種」でした。
ディスカッションに入る前にそれぞれが思い出のバラと共に自己紹介。
これは御巫さんの演出なのか?なかなかお洒落です。
❶武内俊介さん=ミスターローズ
ミスターローズは我らが千葉県八千代市京成バラ園の言わずと知れた日本バラの父、鈴木省三氏の生誕100年を記念して作出された花。
実際、武内さんは省三氏と同じ時を過ごしていて、貴重な体験のお話も伺うことができました。厳しいけど暖かい先駆者のお話でした。
そしてセルフクリーニングの概念・環境に配慮した育成・ドイツADRの厳しいけどこれからの時代のお手本となるような基準について・世界最強ノックアウトの登場などなど、最先端のお話に突入。
❷小山内健(おさないけん)さん=フィネス
多種多様な香りのミックス
房咲き ラフランスの青み
育てがいある(完全に強いって訳じゃなく、ある程度面倒を見てあげる必要がある品種、の意)関西ノリでとっても楽しくお話ししてくださいました。
しかしお話の内容は御巫さんもおっしゃってましたが、とってもドンピシャで的確です。
●河合伸志(かわいたかし)さん=ショコラティア
茶系小型ツルバラ。庭園を美しくするのはツルであるとおっしゃってました。趣味でやってますっておっしゃってましたが、それは企業としてでなく、つまりバラ園のような形でなく個人がお庭を楽しむスタンスで、ということだと理解しました。とはいえ横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザーであり、群馬県中之条ガーデンズのアドバイザー・さらには...以下省略。
●木村卓功さん=シャリマー
美しい 強い の両立
埼玉は暑い。強いと一口に言ってもその土地の状況によって現れる病気が違ってくる。暑ければ暑いなりに、寒ければ寒いなりに病気が来る。
僕は早すぎてついていけなかったけど、うどんこ ベト サビ 炭疽 黒星などなど詳しい話が聞けました。
●武内俊介さん=快挙
再び登壇。
快挙は、前述した通り、ローマ賞 金賞 を受賞した品種。
耐暑性 首を垂れない
JRCでも垂れず
さてここからパネリストそれぞれがお題をもとに話します。
❶武内俊介さん
京成バラ園の歴史と育種
八千代という、新興住宅地。開拓団。
平成7年入社 八千代市 1953年 花見川団地は団地発祥の地、みたいな時代。造園家の岩波という人が 牛の牛糞を発酵させて畑に撒かされたそれが一番辛いという話をしていた。関東ローム層という土。それでも京成バラ園にはおそらく文化的な人が多かったのだろう。この頃から世界を的にした経営を夢見ていた。
二子玉川で自分のバラ園をやっていた鈴木省三氏が京成バラ園に招かれた。
印象としては怖い人。割と人を平気で使うが、その度に一冊本をくれた。それがあとでとても貴重な本であったとか。
電車でたまたまの隣の人に話しかけ、いきなりその人の家に出かけバラを植えに行く。そんな真っ直ぐでバラ一筋の人だった。
バラの気持ちを知るために一緒に夜露に濡れたとか、伝説の人。
野村かずこさんや省三氏の愛弟子平林さんとも交友があったとか。(この二人の人物は意味がよくわからなかった)
ところが、入社5年目に省三氏と愛弟子平林さん2人とも死んでしまった。
育種は少なくとも10年かかると常日頃から言われていたのに!
それでも社員と団結して、京成バラ園はイタリアローマ市が開催するバラの新品種国際コンクール(Premio Roma per Nuove Varietà di Rose ローマバラ国際コ ンクール)にて1973 年「朝雲」の銀賞、1982 年「乾杯」の金賞、2010年「快挙」の金賞と国際的にもこの世界に貢献してきた。国内でこの賞をゲットできたのは京成バラ園のみ。
❷バラ園で必要とされている品種
河合さん
景色になるというスタイル
ガーデンデザイナー 吉谷桂子さんとの関係。河合さんは横浜イングリッシュガーデンや中之条ガーデン(群馬)をてがける
和モダン
浜松
バラは四季咲きではない
アイスバーグは四季咲き
色がボケないよう早咲きであることは大事。早咲きは温暖化な昨今開花期に梅雨を免れるというメリットもある。
ハウステンボスを見ると感じるのは...耐用性が高い品種植えてもやっぱメンテ大事だよねw
リーマン以降人々はまあるいものの癒しを求め、多重弁が好まれるようになる。
ふわり感は大事。組み合わせが容易になるから。イングリッシュローズの柔らかな枝ぶりとか。
ソエロは汚らしい。セルフクリーニングをもつ種は管理しやすい。
パパメイヤン 枝ぶりが荒くて背が高い。対処的には密に植えればなんとか。しかし...
ツルバラはブッシュ。
はるかぜ
耐病性高いのを上に。でないと病気がお庭に降り注ぐよー。
ポルカ、
ステム短いのが大事
さんざんパパメイアンを悪く言ってエンディングで次の小山内さんのプレゼンのトップ画像がパパメイアンだった件(笑)
❸小山内健さん
京阪園芸
家庭園芸で求められている品種
関西は砂と粘土 石のような土壌。
コウシンケンベンがもてはやされた時代。
大阪という土地柄 香り 赤バラ人気。
20世紀
バラ園の影響が強く、最盛期にバラ園で綺麗に咲いているものを「お手本のバラ」つまり目に見えたものがそのまま購買につながった。
ところが時代の変化特にインターネット・SNSの普及により情報が蔓延してくるとバラの趣味も多様化。
バブル以降は従来の種は在庫あまりの状態に。コウシンケンベンからの離脱。
トロピカルシャーベット
岐阜の花フェスタで金賞。
●綺麗に咲く。丸くても角でも
それぞれが。セルフクリーニング
●長くさく
寿命
切っても切っても
●手間のかからない種
病気
丈が目線
狭い場所で 鉢植えにも向く
ブーケ コンパクト 花付きが良い
●香りはラストの決め手
強いバラで香りはこれから
●トゲなし強いバラ
❹日本のバラ育種の課題
木村卓功さん
まずは経営しっかり
美しさ だけでなく
ノックアウト 強いけど
ノバリス コルデス社
メルヘン 強い かおり
伊丹慎一郎偉大
育種の裾野広げるには経営が大事
●作ったものは販売して売り切って、次の開発に再投資するサイクルにつなげる。世界を目指すにはこれが大事。
世界のナーサリーを回って育種と経営を学ぶ。
香りをよくするには
片方だけよければ?
たくさん組み合わせをやる
四倍体(なんのこっちゃ?)
花弁室か弱い=香り
しかしどこから香りがくるのか?もアリ。
遺伝的に考えるというアプローチも。
バランスのよいミルラは難しい。
一旦入るとなかなか抜けない
キライという方もいる
花粉臭?
つくば 香りの専門家。
(お名前聞き取れず)
匂いはどこからでてるか?ミルラはどれにも入っている。香らないバラから出てくるのは…人が感知できないものがある秘めている。フェチダ。
ネーブルオレンジ?香りの濃度。
枝割りという現象?
●再び、生産が安定しないと、いくら期待できる内容でも販売や研究を続けられない
目つぎ、切り継ぎ。
●安定したバラ苗を供給できる
農家さんの跡継ぎがいない!
若い世代は嫌になる
高齢化。
最後に
●竹内
脅威? 遺伝子組換え 学ぶことはやる スクリーニングはカルチャーを壊す 遺伝子資源の存続と経営と。
ミラマーレについて
秋は真っ赤になる
●木村
品種保存は大切だが
棲み分け。遺伝子組換えでは簡単に入らないのでは?
自然交配のスタンス
●河合
植物が美しい
庭が美しい
感動はつるバラ。
趣味ならではの追求。
●小山内
広報に徹する!
園芸家で「演芸家」としてアピール
今回は個性的な育種家たちのかなり専門的な話なので、ついていけるかな?と不安でしたが、全てとは言いませんが、かなり理解や共感できる部分がありました! ...って言いたいところなんですが...非常にざっくりですし...
正直iPhoneのメモアプリで、メモとるので精一杯で取りこぼし満載だと思います。本気で園芸をやられている方、あるいはスッキリまとまった文章を期待した方には不快だったかもしれません🙏🙇♂️僕の箇条書きのメモですからね😅
それでも門外漢の僕でも印象に残った二つの点がありました。
❶個人的にヨーロッパなイメージだったバラが、実は日本やアジアの薔薇の関与によって、その育種の転機に大きく影響していた事実に驚きと感慨を覚えたこと
❷苗農家の後継者不足。これは地方が、そして日本が抱える共通の課題であり、バラ園に限らず地域の抱える包括的な問題と捉えて取り組むべき課題であろうと思いました。
それはざっくり言えば、時代の変化に応じて企業や団体・組織や個人は変化したり、あえて変わらないようにしたり…つまりは時代と「呼吸」しながら存在している・そうせざるを得ない、ということです。
そしてそのような戦略的な姿勢が望まれる時代なのだという気がします。
2021/10/21追記
❷に関し再考。
千葉県八千代市に自然科学・文化的な側面からこれだけ世界的な貢献をしている企業があるのに、上記の理由からその存続が危ぶまれるようなことがあってはならないとの危機感を覚えました。
同時に自然という未だ人類がコントールはできない畏敬すべき存在を大切にすること、日々それに対峙しバラ苗に限らず農業・林業・漁業を続けていらっしゃる一次産業に関わっていらっしゃる方々の苦労に感謝することの大切さを再認識いたしました。