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子ガラスのおかげで
この1週間、バカなマネをしたものだ。
保存林を通り抜け、小さな社にお参りして引き返すのが毎朝の散歩である。保存林に隣接して、手前には草むらがある。そこにカラスの幼鳥がいた。巣から落ちたのか、巣立ちにしくじったのかはわからない。
頭上で複数のカラスが見張り、少しでも幼鳥に近づくと激しく鳴きわめき、枝から枝をせわしなく移動しては、こちらの注意を自分に向けさせようとしているかのようである。
幼鳥も大きく口を開いて「寄るな!」とばかり威嚇する。口のなかの赤色が不気味だ。幼鳥の身体の大きさは成鳥のせいぜい八割り程度で、クチバシの一部はまだ少し黄色い。
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子ガラスにしても、頭上にいる数羽のカラスたちにしても、ぼくが近づいたら攻撃するにちがいない。そんなリスクをおかしてまで、この幼鳥を拾い上げて保護してやる必要はあるまい。
そう思ってその場をあとにした。お社に参拝している背後の木の上では、カラスの成鳥たちがぼくを見張っていた。移動すると、電柱にとまったりして50メートルほどだがついてくる。不愉快な追跡だ。
それなのに、草むらの幼鳥が無事でいるだろうかと気になって、翌日の朝も草むらまで足を伸ばした。左膝に痛みがあり、3週間余り家にこもっていた直後だった。左膝の痛みはおさまっているが、今度は右膝に異変を感じていた。子ガラスのほうは、数メートルほど移動していたが、相も変わらず口を大きく開いての威嚇は意気軒昂である。
このあたりには猫も多いし、たぶん、イタチだって生息しているはずだ。しかし、この幼鳥と頭上の親鳥たちの必死さにはかなうまい。安心はしたものの、毎朝、見にいった。
3日目あたりからは腰がふらつき、何度も座って休んだ日もあった。結局、幼鳥の姿が消えた日曜日の朝までの数日、毎日を通った。子ガラスは飛んでいったらしい。かわりに右の膝に痛みがやってきた。