
まさかの結末
今朝、草むらに散る10片ほどのカラスの羽根を見つけた。子ガラスは飛んでいったとばかり思っていたが、なんらかの小動物に襲われ、さらわれていったらしい。羽根があった場所は、まさかと思えるほど前日にいたところから離れていた。きっと、飛ぼうと懸命になっていたのだろう。
襲われた子ガラスも精一杯の抵抗を試みたらしい。羽根の散り方でそれがわかる。もう少しで飛べただろうに、なんとも悲惨な結末になった。きのうの雨でぬれた草むらに残る羽根を見つけ、朝からいたたまれない気分である。
たかが子ガラスではあっても、無事に飛んでいってほしかった。毎朝、ぼくがのぞくと、大きく口を開いて威嚇するので、「かわいくないヒナ鳥め」と思ったこともあった。頭上のほかのカラスたちの騒ぎ方も激しかっただけに、これなら大丈夫、無事に飛んでいけるだろと確信していた。
今朝、草むらを横切りかけたとき、激しく鳴く1羽のカラスがいた。見上げると、小ぶりのカラスだった。最初の朝に会ったヤツだろうか。ぼくが見上げると、たちまち飛び去った。それで、ハタと気づいたのである。「あっ、子ガラスは殺(や)られたな」と——。
最初の日の朝からあれが母鳥に思えてならなかった。川をのぞき込んでいるぼくのすぐ近くのフェンスまでやってきたくらいだ。だが、すぐに飛び去って木の上にいた。
今朝、頭上で鳴いていたカラスが飛び去ってすぐ、草むらを探した。遠く離れた場所で子ガラスの羽根を見つけた。あきらかに、抵抗した痕跡である。無事に飛んだと思っていただけにショックだった。
母ガラスは諦め切れずにいるのだろうか。それで、ときどき、木に上にやってくるのかもしれない。
まさか、ぼくに教えにきたわけではあるまい。「あなたがわたしの子を保護してくれなかったから殺されてしまったわ」と恨み言をいいたいのだろうか。でも、無理だよ——。