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クルマの自動運転は夢物語?
いっとき、クルマの自動運転が明日にでも実現するかのような騒ぎだった。第一線で自動運転の開発にたずさわっていた会社の方からも、運転免許証は返納する必要はないとの明確なコメントを聞かされ、おおいに力づけられた。
しかし、実証実験か何かでうまく自動運転は機能してくれず、あれほど大騒ぎしたマスコミも取り上げなくなった。むろん、開発は進んでいるだろう、だが、いまでは、「昔、そんな話があったよね」というレベルになってしまった。
あの騒ぎからかれこれ10年になる。一部のバス路線で自動運転の車両が走っているとのニュースは聞くが、あのころは、2、3年、たとえ、遅れても5年くらいで自動運転の世の中がやってくるはずだった。
開発の現場では、実用化がどこまで進んでいるか知らないが、この調子だと、この先の10年後にも期待できそうにない。電気自動車でさえ、モタついているのが現状である。
知り合いが、たしか、ガソリンも燃料にするが電気でも走れるというワゴン車に乗り換えたのは、もう、20年以上前だった。彼の誇らしげな顔が忘れられない。しかし、まず、坂道でつまずいた。馬力がないのである。
キャンプのとき、クルマのライトを使えば、ランタンなどいらないと彼は豪語した。当時はエンジン音がうるさくてとても使いものにならなかった。
これらはふた昔も前の話なので、きっといまでは、電気自動車もガソリン車に遜色ない性能なのだと信じている。ぼくが勝手に信じているだけで改善されているかどうかまでは知らない。
一方で空飛ぶクルマの開発も進んでいるらしい。「あれ、自動運転はどうなってしまったの?」と思いながら眺めている。やはり、クルマにおいても日進月歩の進歩は続いていると信じたい。
これまでの進捗を見ていると、ぼくが生きているうちに自動運転が実用化されるかどうかはかなりあやしい。運転免許証の自主返納などせず、更新を続けるべきだとはいうものの、更新の現場での年寄りいじめはだんだんひどくなっている。
更新のハードルを高くしておいて、年寄りが自ら運転免許証を返すように仕向けているのはあからさまだ。マスコミもそんな国策に迎合して、年寄りが起こした事故に飛びつく。若い連中が起こした事故よりも年寄りの事故を優先して報道する。
世間の目を、「年寄りはクルマを運転すべきではない」というほうへ誘導していのが露骨である。ハードルを高めておき、モタモタしているうちに更新期間が終わってしまうのを待っている。あるいは、屈辱に耐えられず、しぶしぶながら運転免許証を返納する——どれも、まさに年寄りいじめである。
ぼくのようにどうしても、まだ、クルマが必要な年寄りもいる。ぼくだって、いじめを承知で運転免許証を更新したくない。だが、頭を低くして免許証を更新し、クルマを運転している。そんな年寄りだってたくさんいるのである。
空など飛ばなくてもいい。せめて自動運転で、年寄りでもクルマの運転席に座れる時代になってほしい。そんなクルマとなると値段が高くておいそれと手が出ないだろうけど。
それはともかく、ぼくが生きているうちは、やはり自動運転のクルマなど夢のまた夢に違いない。10年後だって、たとえ20年経っても、きっと、まだ、現在と変わらずに人間がクルマを運転しているはずだ。
年寄りをいじめていた側の人々が老いてしまい、今度はもっと手のこんだいじめにあっているだろう。そんな気がしてならない。