飛行機雲が妖しい雲に見えたとは
非科学的は排除する——基本的には賛成である。かといって、科学万能派ではない。いまだ科学で解明できない事柄はいくらでもあるからだ。しかし、やはり、科学に寄り添ってしまう。
20数年前、インターネットの初期、ヤフーの掲示板が全盛の時代である。掲示板では人間社会の実態の多くを学んだ。この掲示板で、どう見ても飛行機雲に過ぎない雲を、地震雲だと騒いだ人がいた。科学的か非科学的か以前の問題である。
別のひとりが明確に否定した。彼はたしか地球物理学を学んでいた。そもそも、地震雲はないというのである。詳細は覚えていないが、胸のすくような科学的な論証だった。写真の雲は飛行機雲であるとバッサリ指摘した。
それからだいぶたち、この一件を忘れかけたころ、関東からだいぶはなれた、たしか九州でささやかな地震があった。飛行機雲を見て地震雲だと騒いだ人が、「ほら、地震が起きたじゃないか」のような投稿をした。だれも相手にしなかった。
地震雲を信じるのはいい。そのとき、飛行機雲が地震雲に見えてしまうのもしかたないだろう。だが、強弁を続けるのはあまりにもみっともない。関東に、なぜ、はるかかなたの地の地震雲が出現するのだろう。それだけでも、あまりにも非科学的ではないか。
この国での地震が日常茶飯事なのはだれもが知っている。報道はされないものの、毎日、どこかが地震で揺れている。さらに、彼が住んでいるという相模原のあたりでは、南の方角の、そう離れていない場所に厚木基地があって、軍用機が頭上を行き交うのが日常のはずだ。条件が整えば飛行機雲などいくらでも空にある。科学的かどうか以前に、飛行機雲を見て地震雲だとビビっていては、とうてい、住み続けていかれない。
デマはそんな妄想の産物なのだろう。昨今、インターネットはフェイクニュースの温床になった。科学の進歩に人間の悪意が重なるいい事例だろう。
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