見出し画像

花のない彼岸の入り

 おととしだった。犬の散歩仲間のお年寄りがいった。
「えらいものですねぇ。時期がくるとちゃんと咲いている」
 あちこちで赤いヒガンバナが季節を告げていた。

 このあたりだと、都営の団地の敷地に群生地がある。そこでは、白いヒガンバナも咲く。それなのに、彼岸の入りとなった今年はまったくヒガンバナがない。発芽さえしていないのである。昨日のテレビで、たしか北関東の公園に咲いたヒガンバナがニュースになっていた。

 近隣でヒガンバナの里として名高いのは、埼玉・日高市にある高麗川のほとりの巾着田である。昔は春のレンゲがきれいだったが、いつのまにか「巾着田曼珠沙華公園」となった。まだ、公園となる前の50年前、巾着田へはちょくちょく遊びにいった。

 駐車場は無料だし、きれいな公衆トイレもあって、適度に自然も残っている。近くにあった高麗川のマス釣り場は、夏、水温が上がるからと休業になるくらいなので冬のキャンプにはうってつけだった。カワセミをはじめて見たのもここだった。いまでは、考えられないのんびりした、清潔な遊び場だった。

 暑かった去年も、町田では、彼岸のころに、ヒガンバナたちが咲いている。ぼくが住むマンションの敷地の一角では、造成された近所から移植されたきたらしいヒガンバナたちが8月のなかばに咲いた。

 旧盆とお彼岸を混同していたぼくは、最初、まったくわからなかった。フェイスブックで指摘を受けてはじめて気づいた。今年はどうなるかと興味津々で見ていたら、去年ほど狂ってはいないものの、やはり、お彼岸より半月ほど早く咲き、すでに枯れてしまった。

 しかし、巾着田でも、この夏の猛暑が祟ったのか、彼岸花はまだ咲いていないそうだ。

 散歩の帰りに、毎日、たくさんのヒガンバナがいつも咲くあたりを、発芽はまだかとヤキモキしながら見にいっている。早く芽を出し、花を咲かせてほしいものだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?