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いくつになってもこの道だけは……

 SNSを見ていて、世の中の移り変わりの激しさに目をみはっている。有名人をかたって投資をうながす詐欺広告があふれていたフェイスブックだったが、ようやく見かけなくなった。

 被害者は多いらしい。あんなものが詐欺と見破れないとなると、欲望の深淵にただただ驚くしかない。ぼくがかつて世話になった週刊誌は「色と欲」を追求するのを標榜していた大衆誌だった。

 人間、ひと皮剥けば、欲望のかたまりである。わかったうえで取り繕って生きている。色欲や金銭欲を絶ったはずの聖職者でさえ、さまざまな醜聞がささやかれることがある。人間として生きているからには「色と欲」がついてまわるのだろう。

 デジタル時代になって、人間の本質である欲望につけこんだ詐欺を画策する輩が激増した。数年前、「デジタル庁」なるお役所が新設され、デジタル大臣が出現した。現職の河野太郎で、3人目、4代目の大臣だという。

 いくらお役所を設置しても、世間はデジタルになじんでいない。たいていの人がスマートフォンを持っている時代ではあるが、だからといってデジタル時代になったとはいえないだろう。

 人間の金銭欲という弱みをついた広告がなくなったと思ったら、デジタル広告は次に「色欲」にシフトした。しかも、ターゲットは年寄りである。たしかに、この道ばかりは、50代まで、男も女もバリバリの現役であろう。60代からは、個人差もあるだろうし、世間体も考慮しなくてはならない。

 さんざん引き立ててくれた恩人が、かなりの高齢にもかかわらず、愛人と旅行して妊娠させたといいふらしていた男がいた。哀れを禁じざるをえなかった。その醜聞をぼくに聞かせた男に対してである。

 恩人がそんな恥ずかしい話をしたのは、彼を信頼していたからだろう。他言するとは情けない。もっとも、デジタル時代では吹聴するのが当然だったら、ぼくが時代遅れでしかないのだろう。

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