待ちわびていた小冊子
新しい『境川流域だより』の冊子が発行されたので、さっそくいただいてきた。ここから境川の最新を得ているが、現役時代に手がけていた電子出版のあり方、あるいは、未来へのヒントがあるからだ。
冊子は、むろん、紙である。大きさはA4判の上質紙で8ページ、カラー印刷だ。手に取ると輪転機にかかったときの温もりが残っている錯覚にとらわれてしまう。現役時代、社内から白眼視されながら電子出版を推進していたが、やはり、紙の出版物はいとしい。
紙に印刷されたものを電子化するだけでは意味がない。住み分け方があるはずだ——むろん、わかりきった考えで、電子出版の初期、その信念を実践した人がいた。しかし、まったく売れなかったという。
いまでこそ、電子書籍は世の中にそれなりの浸透を果たしているが、初期のころは、あたかもかかわったサラリーマンたちの功名争いの場の感が強い。純粋に出版物の電子化と向き合っておられたのは、ごく一部の方だけだった。
出版業界は、どこの会社、あるいはグループが電子の主導権を握るかの戦国時代だった。仁義なき戦いであり、醜い功名争いでもある。自分たちが主導権を握るために、電子出版のための別の組織に潜り込んで邪魔をするなんて荒技が堂々と横行していた。
中小企業の漫画出版社にいたぼくは、年を追って疲弊していく紙の雑誌や単行本のマイナス分を電子出版で補えればと、それだけしか頭になかった。むろん、活字の雑誌や単行本が会社にあれば、一介のサラリーマンとして、それらの電子化にも情熱を持っただろう。
8ページの『境川流域だより』は、春と秋に発行され、無料で配布されている。発行元のウェブサイトをのぞいたとき、そこに電子出版の未来を見た。予期しなかった、しかし、少し考えてみれば当然の膨大な情報がそこには詰まっていたからだ。
あいかわらず、ぼくは教わることの多い人間である。
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