見出し画像

【短編小説】バスに乗ったら30年後の未来に行ったお話~第9話~

【第9話~時をこえた再会~】


こんにちは~♪ ヒロのしんです。
第9話!!公開いたします。


今回は、主人公の二人が元の時代に戻った後の30年後の未来でのお話です。ラストまで気を抜かずに書いていきますので、最後までお付き合い頂ければめちゃくちゃ嬉しいです。(^^♪


【プロローグ~30年前の貴女へ~】
【第1話~彼氏と花火を見に行ってきます~】
【第2話~浴衣じゃないから~】
【第3話~僕の知らない街~】
【第4話~突然の再開~】
【第5話~行くしかない~】
【第6話~30年間の時間旅行の果てに~】
【第7話~家路へと~】
【第8話~茜色の誓い~】
こちら👇️


【第9話~時をこえた再会~】

真夏の太陽が西の空に沈みつつある黄昏時。
歩道橋の上には、二人の人影。

二人は神足新(こうたりしん)と山崎響(やまざきひびき)の乗ったバスが、本当の出発地点●●●●●●● に向かって走り出したのを歩道橋の上から見送っていた。

そこにいたのは、七瀬桂(20代前半のように見える)と、六波羅菜穂(50代くらいか)だった。

パッと見た感じ 母子の様に見えるが、二人はれっきとした同級生。高校3年生時のクラスメイトである。

暫くして、七瀬から話し出した。

「元の時代に無事に戻れたみたいやな。」
『そうね。』

クラスメイトであった二人だが、
二人っきりで話したことは今までなかった。
二人の間にはいつも神足新がいたからだ。
自ずと沈黙が二人を覆う。

そして、しばらくのあと、七瀬が呟く。

「けど、こうさんと目が合った時はめっちゃ焦ったけどな。」
「まさか、こっちの気配に気づくとは思わんかったから。」
「あいつ、ああ見えて結構鋭いとこあるもんな。」

『七瀬くん、親友って言うわりにはあまりこうさんのこと、』
『分かっていないんやね。』

「なんやって!!」

『こうさん、普段はわざと鈍感なふりをしてるだけよ。』
『ほんとは、めっちゃ周りを見てるし。』
『人の感情とかにもめっちゃ敏感。』

「・・・・。」

『めんどくさがりなだけなんよ。』
『めんどう事に巻き込まれたくないから、』
『ああやって、気づかない振りをしてるだけ。』

「・・・・。」

『でも、それ以上なんは彼女の方ね。』
『彼女は昔から、なんて言うか・・・』
『怖かった・・・』

「そっか、俺からしちゃ、こうさんには勿体ないくらいの、」
「美人さんで話しやすいけどな。」

『ほんとに鈍感なのは七瀬君の方かもね。』

二人の会話は単純作業の様に淡々と進んでいく。

「けど・・・。」
「驚いたよ。いきなり菜穂ちゃんの声が聞こえてきて、」
「気づいたら、あの店の前に立っているんやから。」
「しかも、この姿で。20歳そこそこやん。」
「で、ふと店の中を見たら、なじみのあるやつがいたから」
「ダブルでびっくり。」
「そこで、ようやく気付いたんやけどな。」
「菜穂ちゃんが俺に何をしてほしいのかって。」

『あの時は本当にごめん。』
『急だったから・・・。』
『けど、わたしがこの格好で二人の目の前に、』
『現れるわけにはいかなかったし・・・。』

「そりゃそうやろ。」
「50代になった元カノがいきなり目の前に現れても。」

そこで、七瀬は皮肉っぽく笑う。
その言葉を無視して、菜穂は続ける

『ほんと、七瀬君には悪い事したと思っているよ。』
『けど、どうしてもあの二人には元の時代に、』
『戻ってもらわないとダメだったし。』

「それ以外にもあるやろう。」

『そうね・・・』
『結局は全て、忘れることにはなるけれど、』
『わたし達の存在を少しでも知ってほしかったのかな。』

「・・・・。」

二人は黙り込む。

「ところで・・・」
「今更やけど、なんで高校卒業と同時にこうさんを振ったん?」

『わたしとしては、二人が元の時代に、』
『戻れたのなら何も問題はない。』
『わたしの、わたし達の存在を』
『少しでもわかってくれたら。』
『もしかしたら、どこかの時間で・・・。』

「てか、俺の話聞いてる?」

七瀬は少し苛立ったように、言い放った。
菜穂は今までの声色とは打って変わって、震える小声で呟いた。

『わたしだって』
『わたしだって、こうさんの事、嫌いになった訳じゃないから』

「じゃ、なんで」

『そうね、嫉妬かな』

「嫉妬?あいつ、菜穂ちゃん以外、仲良い女子なんて」

『女子じゃないし!!』

この時初めて菜穂は声を荒げた

『七瀬くん達よ!!』
『こうさんの地元の男子みんな!!!』
『こうさんはわたしと一緒に居るよりも、』
『七瀬くんらと一緒に居る方が、』
『楽しそう、嬉しそう、って思ったら・・・。』

「菜穂ちゃん・・・」

『七瀬くん、わたし心の底からこうさんの事が好きだった。』
『それはホントの気持ち。だと思ってた。』
『けど、別れてから、なんて言うかな、』
『わたしのこの気持ちはわたしの本心じゃなくって、』
『実は、家とか血筋とかじゃないかって。』
『そう思うようになって・・・』
『七瀬君もそうじゃない?だって、七瀬くんから、』
『こうさんに話しかけたんでしょ。友達になる、』
『最初のきっかけって』

「・・・・。」

『それって、七瀬君自身じゃなくって、』
『七瀬家が、神足家に呼ばれたって事じゃ・・』

菜穂の言葉をさえぎって、七瀬は激高した。

「じゃない!」
「七瀬だろうが神足だろうが関係ない。」
「俺は、俺が決めたんや!」
「最初のきっかけはそうだったとしても、」
「友達でいたいって思ったのも、友達でい続けたのも、俺の本心。」

菜穂は冷めた笑みを浮かべる。
『七瀨君のその思い自体も、結局は宿命ってやつに操られているのかもしれないね。』

「菜穂ちゃん・・・。変わったな。」
「昔は、高校時代はもっと素直って言うか、無邪気って言うか・・・」
「自分の気持ちに正直に寄り添っていたんじゃないかな。」
「って、俺が言うことでもないか・・・。」

『高校卒業してから30年以上も経ってるのよ。あの頃と同じって言うわけにはいかない。』

そう言いながら、菜穂はもう一度冷めた笑みを浮かべる。

『どっちにしても、一番やっかいなのは彼女ね。』
『もしかしたら、また声をかけるかもしれないから、その時も協力してよね。』

そう言い残して、菜穂は姿を消した。
歩道橋の上から、群青色に染まった西の空を眺めながら七瀬は独り言ちる。

「んじゃ、俺もまた眠るとするか。」
「こうさん、たまにはひびちゃんを連れて来いよ。」
いっつも一人、やのに缶ビールは2缶。●●●●●●●●●●●●●●●●●

何かを思い出したかのように、七瀨は一人笑みをこぼす。

「んで、ビールを飲みながら、謝ったり、愚痴ったり。」
「そんな、姿を見るのはもう飽き飽きやで。」


最終話、そしてエピローグへと続く

いいなと思ったら応援しよう!