「Jimin's Production Diary」の感想
ジミンさんの「Jimin's Production Diary」についての感想。
アーティストが楽曲を作成する過程は人によって様々だと思う。
何が普通なのか知らないが、ジミンさんのソロアルバム「FACE」はジミンさんの物語が紡がれており、だから、ジミンさんにしか創られない歌詞の世界であり、ジミンさんでしか奏でられない音であり、ジミンさんならではの歌唱法である。
それがどのような形作られていったのか、そういうことを事細かく記録したドキュメンタリー映像。
登場人物は、Pdoggさん、GHSTLOOP(キム・ミンス)さん、EVAN(チョ・ジュヒョン)さんとジミンさんの4名がほとんど。
この4名が文字通り団子になってアルバムを創った。
主軸は、この物語の主人公のジミンさんで、ジミンさん発信のジミンさん特有の色がどのように織り込まれていったのか、ほんの一部だが、よくわかる流れとなっている。
プロの歌手が創作過程をここまで包み隠さずに明らかにすることも珍しいのではないかと思う(自分が他を知らないだけかもしれないが)。
ジミンさんは本当にジミンさんのままで、Pdoggさんら3名も本当に良い方々で、ジミンさんがジミンさんらしくいられる空気がそのことを物語っていたし、初のソロアルバム作成において人に恵まれてよかったねと言いたい。
1.Face off
1曲目の「Face off」で歌っている内容に繋がるが、あのジミンさんにそういうことが起こったのだと、ARMYとして初めて知る事実。胸が痛い。
(ジミンパパもアルバムを聴いて泣いたのはそのせいだろうと想像する)
苦悩を与えた輩に向かって「 あなたたちが僕を失っただけ」と言い切れるまでに、どれだけ時間を要したのだろう。
でも、結果的にはよかったのだと思う、そのおかげで「Face」が生まれたのだから。
2.Like Crazy
ナムさんから歌詞についてレクチャー受ける4人組。
静かに傾聴している姿からリーダー(ナムさん)に対するリスペクトが感じられる。
特に体育すわりでじっと聞き入るジミンさん、真摯な眼差しが過ぎる。
コメンタリーでナムさんのアドバイスに助けられたとジミンさんとPdoggさんが語っていた。
「Like Crazy」は、そのときの「ジミンさんの物語」であったわけで、それがタイトル曲になった。
歌詞を見る限り、現実から目を背けてふわふわした世界へのめりこもうとする自分に対する不安を歌っている。それがシンセポップスという都会的なおしゃれな音楽に包まれていること自体、歌詞の世界とリンクする。
「Like Crazy」のMVを改めて見返すと歌詞の世界を正確に描いているのが分かる。
何気ない日常をただ積み重ねているように見えても、自分は何かしら堕ちていっているかもしれないとき、でも、それに気づかない(本当は見たくない)がゆえに、このままでいいんだと思い込む(思い込もうとする)。そんな感じ。
そういうことをゾクッとした描写で見せている。
多くの人が当たり前に楽な方へ楽な方へと流され、そのうち、そのことに違和感を感じなくなることは、悪いことではない。
日々楽しければいい、いやなことに蓋をして惰性に流されている日々はそんな悪いことではない。
でも、どこかで自分と対峙していかなければ、自分は落ちていく。
そんな現状に抗う気持ちを歌っているんだよね。「Like Clazy」の歌詞は深い!
3.Alone
「Alone」は「Like Crazy」と表裏一体の関係。
曲作りは順調そう・・。
歌詞作りで難航するジミンさん
呟くように低音でうたう「Alone」はお気に入り。
「あの時」の自分を振り返るジミンさんの話しのなかに歌詞の内容がすべてある。ほぼ100%ジミンさんが作った歌詞なのだと確認できる
なんというか、自分のことを歌詞に吐き出すというのはメタ的な自己認知を必要とする。
ありのままに歪めずに自己を認識するということは誰にとってもある程度苦しみを伴うものだと思う。いい自分だけでなく愚かな自分も認めなければならないから。
でも、それを避けずに自分を俯瞰して捉えていけたら、抱えている苦しみが客観視でき、そこから抜け出せるようなそんな作用があるんだろう。
ジミンさんのアルバム作りはアルバムタイトルどおり自己との「Face(対峙する)」に終始している。
それが感じられるドキュメンタリーとなっていた。
「Alone」の歌詞には、時間、時が経ったことを意味する表現が多い。
「いつからだったか」、「今の君」、「毎回平気なふり」、「同じような一日」、「過ぎていく」、「昼も夜も」、「壊れてしまったもの」など。
時間は過ぎていくのに、同じところに足踏み状態にいる自身から抜け出せない、ある意味の牢獄ともいえる。
誰でも陥りやすい人生の暗い時期をジミンさんが経験した体感で歌ってくれているから貴重だと思う。
4.Letter
ファンソングを隠しトラックとして用意してくれた。
ここでも曲作りは順調で楽しそうなジミンさん
打って変わって歌詞作りに頭抱えるジミンさん
「君と僕の間で交わされた感情たち」を自分が持っていくと言っている。
優しい表現だ(涙)。
5.Set Me Free Pt.2
前向きな歌ということもあり映像の中は明るい雰囲気。
この曲はまさに囚われた日々の牢獄からの脱出がテーマであったが、「Set Me Free Pt.2」のMVのセットは円形の監獄を模したものであった。
このMVはいろいろ興味深い設定(円形の監獄、上半身のリルケの詩など)を置いており、由来とかその裏話も聞きたかったが、本ドキュメンタリーでは楽曲の創作過程(曲の外枠→曲作り、歌詞作り)のみとなっている。
でも、よく考えたら、ジミンさんはこの作業に加え、ダンスの振りも、MVの内容、衣装など、ありとあらゆることを確認・準備しながら、しかもソロなので自分が決めていかなければならない中、公開日を迎えたわけだからほんとにプロだと思った(当たり前か)。
6.「Like Crazy」がBillboard HOT100 #1
こうしてジミンさんが苦労して(自分と対峙して)創ったアルバム「Face」のタイトル曲「Like Crazy」はビルボードHOT100において初登場1位という歴史的快挙を成し遂げる。
(Hot 100でアジア人のソロ歌手として初めて首位を獲得したのは、1963年の坂本九の「上を向いて歩こう/ SUKIYAKI」以来、なんと約60年ぶり!)
しかも、フィーチャリングなし、海外プロデュサーなし、昔からの仲間スタッフだけで手作りの曲がHOT100の1位になるなんて、チームJIMINも、HYBEも予想も、期待もしていなかったことだろう。
ARMY(ここでは特にジミンペン)の底力を感じたに違いないと思っている(といっても自分は大したことしてないが・・)。
そして、何よりも、ジミンさんが丁寧に作ったものは人に伝わる。
人の真剣な思いというか、その伝播力は、マーケティングの予想を超える。
アーティスト冥利に尽きる展開だったと思う。
ジミンさんの「Like Crazy」は、驚くことに7か月以上経った今でもビルボードの主要チャートにチャートインしている。
(下の図で線が抜けているところは確認できなかった時期)
現在、「Like Crazy」はBillboard music award 2023の「Top Selling Song」のファイナリストとなっているし。
7.ジミンさんによるアルバムの解説要約
「[Jimin's Production Diary] Commentary」の最後にジミンさん自身が「Fase」の解説を要約して伝えている箇所がある。
それを見て、ジミンさんにとって「Face」は1つの通過点であったこと、すでに過去になりつつあるのだと感じた。
ジミンさんは、早くも次の課題に向かっており、やはり、彼は「成長し続ける人」なんだと。
以下、車中で淡々と話すジミンさん。
くどいようだが、単純化したフローチャートをかいてみた(そんな簡単話ではないが)。
ジミンさんはこのターンを約1~2年の期間内で行っており、そこが賢い。
人によっては人生かけて1ターンもできないこともある。
数十年かけてやっと1ターンを乗り越える人もいる。さまざま。
(自分は1ターンに10年かかった時期がある、パボ・・・。)
短期間で気づいて乗り越えて次に向かうジミンさんはすごい。
降りかかった課題の大きさや深さによるのかもしれないが、ジミンさんは気付くのが早い。
8.まとめ
ジミンさんについて、きりがないのでここで終わる。
ジミンさんという人間について興味が尽きない。
その一端が垣間見えるこのようなドキュメンタリーは大歓迎。
ジミンさんのダンスを見ていると、ジミンさんの生き方が想像できるが、それを自分の中で検証していくような視点でドキュメンタリーを鑑賞している。今のところ、ほぼ期待を裏切らない。