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「Jimin's Production Diary」の感想

ジミンさんの「Jimin's Production Diary」についての感想。

「Jimin's Production Diary」とは
初公式ソロアルバム『FACE』の制作過程とその中で感じたことや悩みなどをそのまま記録した。アーティストJIMINが初ソロアルバムをリリースするまでを収めたドキュメンタリー。

「weverse Live」より

アーティストが楽曲を作成する過程は人によって様々だと思う。
何が普通なのか知らないが、ジミンさんのソロアルバム「FACE」はジミンさんの物語が紡がれており、だから、ジミンさんにしか創られない歌詞の世界であり、ジミンさんでしか奏でられない音であり、ジミンさんならではの歌唱法である。
それがどのような形作られていったのか、そういうことを事細かく記録したドキュメンタリー映像。
登場人物は、Pdoggさん、GHSTLOOP(キム・ミンス)さん、EVAN(チョ・ジュヒョン)さんとジミンさんの4名がほとんど。
この4名が文字通り団子になってアルバムを創った。
主軸は、この物語の主人公のジミンさんで、ジミンさん発信のジミンさん特有の色がどのように織り込まれていったのか、ほんの一部だが、よくわかる流れとなっている。

プロの歌手が創作過程をここまで包み隠さずに明らかにすることも珍しいのではないかと思う(自分が他を知らないだけかもしれないが)。
ジミンさんは本当にジミンさんのままで、Pdoggさんら3名も本当に良い方々で、ジミンさんがジミンさんらしくいられる空気がそのことを物語っていたし、初のソロアルバム作成において人に恵まれてよかったねと言いたい。



1.Face off

Pdoggさんとジミンさんが楽しそう

GHSTLOOP:1番が少し裏切られた気持ち
Jimin   :そういう、そういうことを感じた反抗心のような感じです
GHSTLOOP:裏切られたことによる反抗心
Pdogg        :でも、そういうきっかけとか事件があった?
                      それともJIMINさんが一人でそういうふうに聞いたの?
Jimin          :その考えですか?最初の曲ですか。きっかけはありました
Pdogg       :きっかけがあった?
Jimin         :僕が間違ってたんだ。元々人を信じてはいけないって言うのに
Pdogg       :うん、いいね
Jimin         :でも、いいよ、僕は何ともない 自分の位置はそのままで
                     あなたたちが僕を失っただけだし
                     あなたたちがいなくても僕は大丈夫

『Jimin's Production Diary』より

1曲目の「Face off」で歌っている内容に繋がるが、あのジミンさんにそういうことが起こったのだと、ARMYとして初めて知る事実。胸が痛い。
(ジミンパパもアルバムを聴いて泣いたのはそのせいだろうと想像する)
苦悩を与えた輩に向かって「 あなたたちが僕を失っただけ」と言い切れるまでに、どれだけ時間を要したのだろう。
でも、結果的にはよかったのだと思う、そのおかげで「Face」が生まれたのだから。

2.Like Crazy

音に乗るジミンさんがかわいい

ナムさんから歌詞についてレクチャー受ける4人組。
静かに傾聴している姿からリーダー(ナムさん)に対するリスペクトが感じられる。

ナムさんの話に聞き入るチームJIMIN

特に体育すわりでじっと聞き入るジミンさん、真摯な眼差しが過ぎる。

ナムさん:
僕が明確に何をしているのかを知ってないといけない
だから具体的で状況の描写が出なくても
僕が自分だけはこの曲の意図を知って
この曲が自分の手の中にあるべきだと思う

僕が思うに歌詞を書き過ぎずに
JIMINさんの物語を先に作った方がいいと思う
1番はなんでこれを書いたか
どういう歌か 何を伝えたいのか どういう状況かを説明する
そういうシナリオがあった方がいいと思う

この歌を聞いた時に 自分が何を言いたくて
聞いた人がどういう感じになってほしいのか
文章で書いてみると自分も知らずに
JIMINさんの中にあった言葉が出ると思う
そしたら そこからスタートすればいい
とりあえず そうやって整理してみて
その後に僕に送ってくれたら 僕も整理してみる

『Jimin's Production Diary』より

コメンタリーでナムさんのアドバイスに助けられたとジミンさんとPdoggさんが語っていた。
「Like Crazy」は、そのときの「ジミンさんの物語」であったわけで、それがタイトル曲になった。
歌詞を見る限り、現実から目を背けてふわふわした世界へのめりこもうとする自分に対する不安を歌っている。それがシンセポップスという都会的なおしゃれな音楽に包まれていること自体、歌詞の世界とリンクする。
「Like Crazy」のMVを改めて見返すと歌詞の世界を正確に描いているのが分かる。
何気ない日常をただ積み重ねているように見えても、自分は何かしら堕ちていっているかもしれないとき、でも、それに気づかない(本当は見たくない)がゆえに、このままでいいんだと思い込む(思い込もうとする)。そんな感じ。
そういうことをゾクッとした描写で見せている。

泥はCGなのかもしれないが、よくできている・・・

多くの人が当たり前に楽な方へ楽な方へと流され、そのうち、そのことに違和感を感じなくなることは、悪いことではない。
日々楽しければいい、いやなことに蓋をして惰性に流されている日々はそんな悪いことではない。
でも、どこかで自分と対峙していかなければ、自分は落ちていく。
そんな現状に抗う気持ちを歌っているんだよね。「Like Clazy」の歌詞は深い!

3.Alone

「Alone」は「Like Crazy」と表裏一体の関係。

曲作りは順調そう・・。

曲づくりで盛り上がるチームJIMIN

歌詞作りで難航するジミンさん

呻吟するジミンさん

呟くように低音でうたう「Alone」はお気に入り。
「あの時」の自分を振り返るジミンさんの話しのなかに歌詞の内容がすべてある。ほぼ100%ジミンさんが作った歌詞なのだと確認できる

ジミンさん:
すごく…この瞬間は良くて
ポジティブに考えよう 「すごく楽しい いい すごく いい」
「お酒でも飲もう」って感じじゃん
これが過ぎると なんか数か月…半年以上をそういうふうに過ごしてたら
そ…そうだね
酔っぱらって覚えてないし
昨日何したかもわかんないし
今が何月何日なのかもわかんない
そういう日常を送るから
僕大丈夫なのかな? 完全に間違ってたのかな?
あと他の人たちを見たらみんな頑張って生きてるし
  :
(そして ずっとあの時…
あの時の状況について書くから
すごく…感情労働な気がする)
  :
過ぎてから急に理解が追いついてきた
僕が何を言っても 言い訳しても 
そうじゃないふりをしても
結局僕の中で壊れたのは仕方ないというのが
さっき歌をかけて歌いながらやってみたらいいと思ったんです

『Jimin's Production Diary』より

なんというか、自分のことを歌詞に吐き出すというのはメタ的な自己認知を必要とする。
ありのままに歪めずに自己を認識するということは誰にとってもある程度苦しみを伴うものだと思う。いい自分だけでなく愚かな自分も認めなければならないから。
でも、それを避けずに自分を俯瞰して捉えていけたら、抱えている苦しみが客観視でき、そこから抜け出せるようなそんな作用があるんだろう。
ジミンさんのアルバム作りはアルバムタイトルどおり自己との「Face(対峙する)」に終始している。
それが感じられるドキュメンタリーとなっていた。

「Alone」の歌詞には、時間、時が経ったことを意味する表現が多い。
「いつからだったか」、「今の君」、「毎回平気なふり」、「同じような一日」、「過ぎていく」、「昼も夜も」、「壊れてしまったもの」など。
時間は過ぎていくのに、同じところに足踏み状態にいる自身から抜け出せない、ある意味の牢獄ともいえる。
誰でも陥りやすい人生の暗い時期をジミンさんが経験した体感で歌ってくれているから貴重だと思う。

4.Letter

ファンソングを隠しトラックとして用意してくれた。
ここでも曲作りは順調で楽しそうなジミンさん

曲に合わせて踊る指先までピーンとしたジミンさん

打って変わって歌詞作りに頭抱えるジミンさん

自習室にいる生徒と家庭教師と言われている(笑)
のってきたジミンさん

ジミンさん:
永遠…永遠にとか そういうの
なんか伝えたい訳じゃない
のかな
覚えているというなら
今感じていた感情を忘れません
これだけは僕が持っていきます

という話をしたいので
  :
君と僕の間で交わされた
私たちの君と僕の間で交わされた感情たちだから
そういうの

『Jimin's Production Diary』より

君と僕の間で交わされた感情たち」を自分が持っていくと言っている。
優しい表現だ(涙)。

5.Set Me Free Pt.2

前向きな歌ということもあり映像の中は明るい雰囲気。

米国で合唱メンバーのレコーディングに立ち会う

この曲はまさに囚われた日々の牢獄からの脱出がテーマであったが、「Set Me Free Pt.2」のMVのセットは円形の監獄を模したものであった。

このMVはいろいろ興味深い設定(円形の監獄、上半身のリルケの詩など)を置いており、由来とかその裏話も聞きたかったが、本ドキュメンタリーでは楽曲の創作過程(曲の外枠→曲作り、歌詞作り)のみとなっている。

でも、よく考えたら、ジミンさんはこの作業に加え、ダンスの振りも、MVの内容、衣装など、ありとあらゆることを確認・準備しながら、しかもソロなので自分が決めていかなければならない中、公開日を迎えたわけだからほんとにプロだと思った(当たり前か)。

6.「Like Crazy」がBillboard HOT100 #1

こうしてジミンさんが苦労して(自分と対峙して)創ったアルバム「Face」のタイトル曲「Like Crazy」はビルボードHOT100において初登場1位という歴史的快挙を成し遂げる。
(Hot 100でアジア人のソロ歌手として初めて首位を獲得したのは、1963年の坂本九の「上を向いて歩こう/ SUKIYAKI」以来、なんと約60年ぶり!)
しかも、フィーチャリングなし、海外プロデュサーなし、昔からの仲間スタッフだけで手作りの曲がHOT100の1位になるなんて、チームJIMINも、HYBEも予想も、期待もしていなかったことだろう。
ARMY(ここでは特にジミンペン)の底力を感じたに違いないと思っている(といっても自分は大したことしてないが・・)。
そして、何よりも、ジミンさんが丁寧に作ったものは人に伝わる。
人の真剣な思いというか、その伝播力は、マーケティングの予想を超える。
アーティスト冥利に尽きる展開だったと思う。

アルバムをひっさげてプロモーションのバージョンでのジミンさん
コメンタリー撮影のために集合したチームジミンに「HOT100 #1」の記念ケーキが届く 
チームジミンで喜び合う
やり遂げた感いっぱいの、少し涙ぐむ様子が見られたジミンさん

ジミンさんの「Like Crazy」は、驚くことに7か月以上経った今でもビルボードの主要チャートにチャートインしている。
(下の図で線が抜けているところは確認できなかった時期)

8-Mar-2023 ~ 4-Nov-2023のチャート状況

現在、「Like Crazy」はBillboard music award 2023の「Top Selling Song」のファイナリストとなっているし。

「Billboard music award」より


7.ジミンさんによるアルバムの解説要約

「[Jimin's Production Diary] Commentary」とは
あの時は言えなかったけど、今なら言える。 ドキュメンタリーに収められなかったあの日の裏話。

「weverse Live」より

「[Jimin's Production Diary] Commentary」の最後にジミンさん自身が「Fase」の解説を要約して伝えている箇所がある。
それを見て、ジミンさんにとって「Face」は1つの通過点であったこと、すでに過去になりつつあるのだと感じた。
ジミンさんは、早くも次の課題に向かっており、やはり、彼は「成長し続ける人」なんだと。
以下、車中で淡々と話すジミンさん。

アルバムのストーリーは、歌詞をよくご覧になりましたら、
みなさんもよくご存じだと思いますが、
人間関係に懐疑的になって 急に要らないと大騒ぎをして
「Face off」という曲を始めます。

そして、
お酒も少し飲んでみて
『あっ! こういうふうに生きるのが本当に楽しいんじゃない?』と
変なことを思い始めて
『Like Crazy 』という曲を始めます

すごく…
生意気な考えでしたね
それでこういうふうに遊ぶのがすごく良くて
僕だけじゃなくてみんなが「こう生きてるんだよ!」ってなって
その後は
人間関係に懐疑的になって楽しく遊ぶばかりかと思いきや
JIMINは自分の状態にまた懐疑的になるんです。
それで「Alone」という歌を始めます

そして…
メンバーに会って
Pdoggさんに会って
「これは違う」としっかりして
「乗り越えてみるよ! 僕も!」ってなって
「Set Me Free Pt.2」という歌を始めます

そうやってこのアルバムのストーリーは終ります

それで 現在乗り越えてますか?  [首を傾げる]
それすらも生意気だったんです
問題が1つ終われば違う問題が始まって
また それが終わると…
はい 1つずつ問題を解決しながら頑張って生きているJIMIN
今日もファイト! 
ファイト!!!

『[Jimin's Production Diary] Commentary』より

くどいようだが、単純化したフローチャートをかいてみた(そんな簡単話ではないが)。

裏切られたことをきっかけに
人に対して懐疑的になってヤケを起こす(Face off)
    ↓
人生楽しけりゃいいじゃん(Like Crazy)※生意気な考えだったと後述
    ↓
ほんとにそれでいいのかとまた懐疑的になる(Alone)
     ↓
違う、乗り越えよう(Set Me Free Pt.2)
    ↓
乗り越えた気になっていた自分について
それすら生意気な考えだったと
    ↓
新たな課題解決に向けて取り組み中のジミンさんがいる(ファイティーン)

ジミンさんはこのターンを約1~2年の期間内で行っており、そこが賢い。
人によっては人生かけて1ターンもできないこともある。
数十年かけてやっと1ターンを乗り越える人もいる。さまざま。
(自分は1ターンに10年かかった時期がある、パボ・・・。)
短期間で気づいて乗り越えて次に向かうジミンさんはすごい。
降りかかった課題の大きさや深さによるのかもしれないが、ジミンさんは気付くのが早い。


8.まとめ

ジミンさんについて、きりがないのでここで終わる。
ジミンさんという人間について興味が尽きない。
その一端が垣間見えるこのようなドキュメンタリーは大歓迎。
ジミンさんのダンスを見ていると、ジミンさんの生き方が想像できるが、それを自分の中で検証していくような視点でドキュメンタリーを鑑賞している。今のところ、ほぼ期待を裏切らない。

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