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【胃がんサバイバー日記】上を向いて歩こう!

⭐︎"トスン"という音と共に、振動を感知したデバイスのスイッチが入る。時刻はまもなく朝の7時、暦では春だが、空は薄曇りでほんのり明るい。前日からの放射冷却の影響でとても寒い。⭐︎⭐︎


その日は夜勤だった、順調に仕事をこなし、少し時間にゆとりがあった。3月初旬だが、夜中はまだまだ寒い。

今日は定時で帰れる。テンションが上がる!「仕事も暇だし定時帰宅、今日はツイテル!」なんて思いながら、トイレに向かう途中、外にとまった、誰かの車をみる。

全ての車の窓ガラスが凍ってる

せっかく早く帰れるのだから、スムーズ帰りたいと思った。トイレから戻り水筒を持って、給茶器でぬるま湯を作る。これでフロントガラスを速攻溶かしてすぐ帰ろう!そう企んだ。

胃がんサバイバーになってそろそろ一年、一通りの治療は終わり経過観察中。手術をした体との付き合い方も、多少はわかってきたつもりだが、意志と体は別。コントロールできないこともある。

こまめな食事や間食などで、低血糖を防ぎながら、これ又こまめにやってくる便意との攻防。どちらも抜け、漏れは防がなければならない。

仕事が終わり、緩み切った気分で車へ向かう。
「さて、帰りにコンビニ寄って、少し何かお腹に入れようかな」

会社から帰宅するのに20分程度。家まで残りわずかの距離にコンビニはある。

「確かスイーツのクーポンきてたな」
ケータイを取り出し、アプリ起動。ケータイを見ながら車の前へ。背中からリュックを下ろし、ボンネットの上に置く。⭐︎

⭐︎⭐︎リュックから水筒を取り出し意気揚々と、フロントガラスへいい塩梅に調整した"ぬるま湯"をかけながらケータイを操作、クーポンをみつけた。フロントガラスの氷も溶けた!よし!

ふと顔を上げた途端溶けゆく氷とは裏腹に表情が凍りついた。赤いランプが点滅している。

使い切った水筒を急いでしまい、リュックを背負う。

※   ※※一人車へ乗り込み、永遠に思える時間を過ごしていた。早く溶けろ!早く溶けろ!と心の中で叫んでいた。そんな時に限って緊張からか、便意が...

会社の門を出てしまっているので、再度入ると"ログチェック"に引っかかっり始末書が待っているので戻れない。もちろん駐車場にはトイレはない。

ひと月ほど前に車内でこぼしてしまった灯油の匂いが鼻につく。そこに混じって「ぷー」とでた、臭い。ちなみに他の人のことはわからないが、手術によって胃を摘出してからとてもおならが臭くなった。

便秘とか食べてるものがとか関係なく臭い。胃前は「便のような匂いだな」と感じる匂いだったのが、今では「フンの匂い」がする。
例えるなら全盛期の"ふかわりょうさん"に「お前んち、獣飼ってる?」と言われそうな感じだ。自分自身に腹が立つレベル。

フロントガラスを溶かそうと、デフロスタースイッチを使っているが、なかなか溶けない。
くるな!くるな!溶けろ!溶けろ!と願うのみ。やがて下から外が見え始め10分ほどかけて安全に運転できる視界が確保できた!

「間に合った!助かった!」コンビニへと車を走らせた。

今日も夜勤で定時!さぁ、上を向いて歩こう!


※目の前に現れたのは、ドライブレコーダー
そんなものは俺の車にはついていない、赤いランプが点滅し俺を録画している。

後でそのドライブレコーダーの映像を見られるとしたら、振動で録画を開始し白いフロントガラスを映し、そのうち急に凍りついたフロントガラスが溶け始め、「誰?、何してるの?」が写っているだろう。アーメン

そう、2台並んでいたのだ。同じ色の同じ車が、手前は他人の車、奥が俺の車。ケータイ見ながら自分の車だと思って他人の車のフロントガラスにぬるま湯をかけ氷を全て溶かし、反抗の一部始終を撮られていた。"妖怪氷溶かし爆誕"。

自分の車に入りぬるま湯を失った俺は凍り切ったガラスが溶けるのを待つ事となった。隣の運転手さんきませんように!と願った。悪戯ではないんです!間違えただけなんです!と声にならない声で※※

おわり

#真顔で文字を書いて笑わせる1グランプリ
#タイトルで引かないでもらえると嬉しい
#胃がんサバイバー
#経過観察中
#獣の香りフリマで売りましょうか
#全盛期のふかわりょうさん似の髪型になってきた
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#リュックをボンネットに置かなければ動き出すことはなかった
#ある意味善意
#結局ツイテタのか
#もちろん間に合ったよ
#昨日の帰り間違えて同じ車種の隣の他人の車にお湯かけちゃったを1900文字で書く
#嘘はない


とても楽しい企画に参加させて頂きました。
面白い話ばかりで、日々更新が楽しみです♪
開催して頂いたお二人、有り難う御座います!

頂いたサポートは、治療費や栄養補給に 当てさせていただきます。