内なる感情を爆発させたMarcus Covington2025年春夏コレクション
楽天ファッションウィーク3日目。
実力派ブランドたちによる新作コレクションがひっきりなしに発表される中、ある一つのアパレルブランドが初めて東京コレクションデビューを果たした。
デザイナーの市川・マーカス知利が手掛けるブランド:Marcus Covington(マーカス・コビントン)。
日本の服飾学校を卒業後、フランス・パリにあるオートクチュールのアトリエにて研鑽を積み、帰国後は様々なアーティストやアイドルの衣装製作を手がけてきた市川デザイナー。今年4月に同ブランドをローンチし、「粋な目立ちたがり屋」をブランドコンセプトにコレクションを発表する。
セカンドシーズンとなる今季のテーマは「SMASH!!!!」。自身を愛情かけて育ててくれた祖母の死に対する悲しみをクリエイションのエネルギーに変換し、まるで内なる感情を爆発させるような強く勢いのあるルックを披露した。
会場には緊迫感のあるBGMと暗闇の中に光るランウェイが用意され、その中を勢い良く登場したそのモデルたち。ルックはメタリックな光沢がポイントのアイテムや、ブルーとイエロー、グリーンとイエローなどを基調としたアイテムで構成され、ランウェイ会場の雰囲気と相まって非常に強い存在感を放っていた。
そんなどれも存在感のある洋服ばかりだが、一着一着のサイズ感やシルエット・細かなディテールなどは細かな点まで計算され尽くしており、奇抜さの中にも繊細さや几帳面さを感じるようなバランスの良さを感じたのが印象的だった。
(↑クリックすると通常のスマホサイズで動画を視聴できます。)
また、光沢感のあるウェアの他にも、近未来感のある形をしたアイウェアやモデルの姫カットのようなヘアメイクなども観客から強いインパクトを与えており、それまでアーティストなどの衣装を作ってきた人にしか出来ない強い個性を感じた。
しかし、そんな未来的な雰囲気を出しつつもあくまでもリアルクローズに留めている点が今回のコレクションのミソであり、ショーツの裾に施したダメージ加工や、洋服の至る所にドローストリングを追加してそれぞれ絶妙な具合でしぼり具合を調整している点にはなんとも言えない着古し感、親しみやすさのような感覚も覚えた。
これは余談だが、自分の尊敬する洋服のデザイナーの言葉として「大物ベテランデザイナーを蹴落とすのはいつだって若いエネルギーを持った新進気鋭のデザイナーだ」という言葉がある。
ベテランデザイナーにはない力強さ、他のブランドではあまり見たことのないクリエイション、そんな目新しさが常にファッションの歴史を作り上げてきて、今回のMarcus Covingtonのコレクションは、そんな新しいファッションの波が来ることを予感させてくれそうな強いエネルギーを感じた瞬間だった。