みんなで洋服を着る楽しさを。52tenbo+ (コニテンプラ) 2025年春夏コレクション
元大関・小錦八十吉とファッションデザイナーのtenboが共同で代表を務める、プラスサイズの人を対象にしたアパレルブランド、52tenbo+ (コニテンプラ)。
楽天ファッションウィークの2日目に鮮烈なデビューを果たし、プラスサイズの方や疾患を抱えた方など、あらゆる背景を持ったをモデルを起用した「自分らしさ」の重要性を表現したコレクションを発表した。
ブランドのコンセプトは「世の中の全ての人へ」。
いきなり余談だが、「ダイバーシティ」「多様性」そんな言葉が広く浸透してきた今日の世の中だが、ファッションの世界における「多様性」はまだまだ発展途上だと筆者は感じる。
男性が女性の服を、女性が男性の服を、などといった浅い考えではなく、心身に障害を抱える人・そんな人たちに寄り添って共に生きる人・これまで全く別のフィールドで活躍してきた人・そんな人たちに洋服の楽しさを伝えることこそ、我々が考えるべき「多様性」なのではないか。
52tenbo+の提案する今回のコレクションは、そんな「全ての人」をモデルとして華のある洋服を提案し、ファッション界が目指すべきこれからの人と洋服のあり方を提示しているようにも感じた。
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デザインとしては、上半身から下半身に沿って徐々に広がっていくようなシルエットをベースに、ランウェイ上ではどのモデルの服も歩くと服が風になびく様子が印象的だった。また、ルック全体を通して花をプリントしたモチーフが多く、色やサイズなど、デザインが異なる多くの花の洋服が会場を沸かせた。
「和」を感じたサプライズモデル
また、今回のコレクションには多くのスポーツ選手や別の業界で活躍してきた人をモデルとして起用するサプライズがあった。
その中でも一人だけ強い存在感を放っているのが現役力士である翔猿正也。本業はバリバリの力士でありながらも、ランウェイ上で見せたその堂々としたウォーキングには、会場から大きな拍手が送られた。
ちなみにこのルック、何着もの古くなった着物を帯でまとめ、一つの着物として着用している。複雑な色合いとアシンメトリーなデザインが特徴的だが、元々一着一着が洋服として機能していただけあって、これだけ重ねても全く違和感なく受け入れることができるのがポイントだ。
日本には古くから「もったいない精神」という、古くなったものを再び別の用途で活用するいわゆるサステナブルの考えが存在する。今回のように洋服を再び洋服として活用すると言うアイデアは、モデルが力士ということもありなんとも日本的だなと感じた。
リハーサルから感じた「一体感」
また、もう一つ記憶に残っている点はこの52tenbo+の代表を務める小錦八十吉の存在だ。今回ありがたいことに同ブランドのリハーサルを拝見させていただいたが、本番直前に小錦がモデルたちに言った「みんな楽しんでおいで!」という一言が特に印象に残っている。
本来ランウェイショーにおける「モデル」という人間は、着用している洋服をいかに美しく魅せるかという重要な仕事を与えられているため、着用者が感情を表に出すことは御法度なケースが多い。(いわゆる「スーパーモデル」だけは別だが。)
しかし、おそらく小錦の「みんな楽しんでおいで!」という一言は「モデル」ではなく、モデルを務めるひとりひとりの「人」に言ったのだろう。
もちろん美しい洋服を着ることも重要だが、それ以上に重要なことはその洋服に袖を通して人が楽しく歩くということ。そんな基本的で我々がつい忘れてしまうことを、今回のランウェイショーでは再確認した気分になった。
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