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[旅行記]小豆島ではフレンチを

小豆島でのお昼どき、さて何を食べようかと。

もともとはオリーブそうめんが気になっていたのだけど、どうも無難といえば無難すぎて。他に選択肢はあるかな、と思って調べてみる。いくつかの候補のあとに、少し気になるお店が。フレンチ? どうやらかなり長いことやっているお店らしいのだけど。

ちょっと気になる。これは行ってみようか。

市役所がある町の中心から少し歩いたところにあるらしい。行ってみると、周りは普通に住宅地。食事処なんてあるのかな? と思ったけど、大きめの看板が出ていてここだと分かる。

シェフ かわぐち

入ってみると、昔の喫茶店と洋食屋の中間のような雰囲気。違うのは、テーブルにはクロスとともにカトラリーが整然と並んでいるところ。フレンチの魂みたいなものを感じる。

ランチのセットが1000円から色々取り揃えられている。いくつかの気になるメニューがあって迷ったのだけど、説明を聞いて惹かれた鯛の香草焼きをお願いする。


まずはサラダ。お、おしゃれ……。

中身はキャベツにミニトマトなどのどこにでもある構成なのだけど、それがこうしてガラスのカップに入っているだけでおしゃれ具合が全然違うものだなー、と。

しばらくして、スープ。
「カップも熱くなっていますのでお気をつけ下さい」という言葉通り、パイ生地がしっかり焼きあがるくらいに熱々になったもの。これまたおしゃれだ。

崩して中のスープをいただくと、クリーミーさとともにスパイスがいくつか利いているのが分かる。特に多めのコショウがかなりピリッとしている。細かく切った野菜に、小さなミートボールも入っていて、とても手の込んだ品。

そしてメインの鯛の香草焼きがやってきて……、

このビジュアル、そしてボリューム。
思わずエエッと声が出た。

置かれた皿からは豊かな香草の香り。これはたまらなく食欲をそそられる。
ガルニチュールのとりどりの野菜を見ても、どれも食べるのが楽しみに思えてくる。

香草をよけて鯛の身にナイフをいれると、あるべき感触がない。
まさか、骨がすべて取り除かれている……? 嘘でしょ?

後で聞くと、骨は(完全にではないけど)取り払って、腹部にはムースを仕込んで焼き上げているらしい。うわぁ……。

柔らかい鯛の身と、バターの味がからまって美味しい。ガルニの野菜もどれも美味しいのだけど、特にかぼちゃに驚く。適度に煮たような食感なのだけど、リンゴのようなぶどうのようなフルーツの風味が香ってきた。洋酒っぽい? コニャックかカルヴァドスあたりでフランベしているのかな。

もう終始驚かされっぱなし。

パンもつくし、食後にデザートとコーヒーまで。これで本当に1500円?

御婦人にお話を聞くと、どうやらシェフは1990年代まで大阪のホテルに勤めていたそう。なるほど、しっかり洋食の系譜を抑えた方でしたか。

本当に手が遅くて……とおっしゃっていたが、これだけの仕事なら仕方がない、というかもう待つしかない。実際、食べ終わるまで1時間半ほどかかったので、かなりゆっくり。でも、スープが出てきたところで只者ではない感がひしひしと伝わってきたので、これは正式なコース料理なんだと気持ちを切り替え、どこまでも待ちますモードになった。

野菜は自家栽培、魚も地元で揚げられたものだとか。島に根付いたフレンチなのだなあ、と。生で食べるだけが素材の楽しみ方ではないし、こんなに豊かな食体験がリーズナブルにできるのも、地のものだからこそ、なんだろうな。

もう大満足。ここに来れて良かった。
時間がある人限定になるけれど、かなりおすすめ。


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