都内豆大福めぐり
先日のおはぎの影響か、和菓子になんとなく興味が出ているからか、前々から気になっていたお店をいろいろ巡ってみようかと思い立つ。
決めた。今日は豆大福を食べ比べてみよう。
まず向かったのは、魚籃坂の近くにある「松島屋」。
こちらのお店、ときどきPodcastを聴いていたりと度々ここでも書いている平野紗季子さんが紹介していたので気になっていた。都内の豆大福の中でもかなりの人気店だとか。午前中には売り切れる、という話だったので、開店直後を狙うしかない、と。
到着したときには前に5人ほどの列が出来ていたけれど、ほとんど待つこともなく無事にゲット。改めてお店の佇まいを見てみると、年季を感じさせるショーケースや味のある木肌の売り場台に風情を感じる一方で、赤と白の庇はどことなく洋風でポップな色使いなのが不思議と面白い。
豆大福以外にも、草大福やきび大福が。草大福がちょっと気になる……。そして、豆大福もその場で食べたいという想いをぐっとこらえて、次のお店へ向かう。
お次は表参道にある「瑞穂」。
人出が賑やかなショーウインドウが並ぶ大通りから細い路地に入っていくと、まるで別世界のような落ち着いた雰囲気の店があった。昔からあるいかにも老舗な佇まい。売っているのは豆大福と最中のみという直球勝負。迷わず豆大福を注文する。
「袋は開いていますのでご注意ください」
「はい、ありがとうg……っとぉ!!」
危うく取り落としそうになる。というのも、想像以上に重さがあって、しかも袋がかなりすべすべするタイプだったので。危ない危ない。
そして3軒目。今度は湯島にある「つる瀬」。
湯島天神の目と鼻の先ということで、天神さまにちなんだ「ふく梅」や、上野といえば(?)のあんみつなども取り揃えている。ここの豆大福もかなりの人気ということで、食べてみたかった。
上生菓子や、大福ではない豆餅もかなり気になるのだけれど、それはまた次の機会に。
というわけで、気になっていた3つのお店、それぞれ豆大福をいただいてみる。帰るまで待ちきれなかったので、近くの公園で失礼して。
どれも同じに見えるけれど、3種類並べてみると明らかに瑞穂がひとまわりかふたまわりくらい大きい。つる瀬がいちばん小ぶりで、松島屋が心持ち大きいかな、というくらい。
それにしても、こうしてみると豆大福って見た目ほんとに地味だなあ、と。しかも包丁でもないときれいには切れないから、中を見るのが難しい。映えはしない、けどそれも良し。
さて実食。その味を比べてみると、
松島屋……あんこはこしあん、豆がしっかり硬め、塩味がやや強めに効いてる、甘すぎない、というか甘いけどしょっぱい感じ
瑞穂……あんこはこしあんで甘め、豆がしっかり硬め、豆に塩味がほんのり効いてて良い、ただし豆の皮がやや残る
つる瀬……あんこはつぶあん、塩気は一番弱い、豆はやや硬めだけどこの中では一番やわらかい、甘さと塩味がどちらも控えめでいちばん起伏が穏やか
という感想。
いやしかし、違いはあるといえばあるのだけど、そこまで大きくは味が変わらないというか。比べてみると違いは分かるものの、単品で出されたらどれがどれかはわからなくなりそう。
でもやっぱり違いはあるもので、つる瀬<瑞穂<松島屋の順番で、味にメリハリがある感じがした。松島屋は、甘さもしょっぱさもかなり効いててパッチリした味が好きな人向け。つる瀬はその逆でしみじみ感を味わいたい人向けかな。
瑞穂はその中間で、安定した美味しさ。そして見た目的にも、実際に持ってみた感触としても、明らかに他の2つと比べてボリュームがある。値段は少し高いけれど、その分しっかりと食べごたえがあるので、そこを求めている人には良さそう。ただ、あんこの分量が多いので、おはぎのときみたいにあんこをちょっと取り除きたくなる感覚が、ここでもなんとなくわかって面白かった。
個人的な好みでは、瑞穂か松島屋か、どちらかは選び難い。餅とのバランスでは松島屋、だけど味わい的には瑞穂の方が好みかな。
とにもかくにも、こうして比べてみて違いを感じられると楽しい。それぞれの豆大福が、それぞれに伝統というか昔からの作り方があるのだろうと思うと、奥が深いなああ、と思う。
しかし、大福3つはさすがに口の中がだだ甘。お茶を飲みつつではあったけれど、やっぱりしょっぱいものが欲しくなってきた。思えば、先日のおはぎのときにはおいなりさんがあったんだった。あの組み合わせは、今思うとかなりベストマッチだったんだな。
和菓子を食べるときは、お茶と漬物があると良いな。
帰路で再び松島屋に立ち寄ったら、完売していた。時間はちょうど12時。
午前中でないと売り切れるという噂は本当だった。