退職にあたり投資銀行からスタートアップに転職してよかったことを振り返ってみる

FOLIOという資産運用系スタートアップで経営企画部長をしている石坂(Twitter @hiro_ishizaka)です。私は2014年に新卒でモルガン・スタンレーに入社し、投資銀行本部にてIPOを含む資金調達及びM&A関連業務に従事したのち、5年後の2019年にFOLIOに転職しました。

この度、2022年2月末で約3年勤務したFOLIOを退職することになりました。

退職にあたり、投資銀行からスタートアップに転職した3年間でよかったこと・変化したことを中心に振り返ってみたいと思います。
投資銀行・コンサル等からスタートアップに飛び込む方の参考になれば幸いです。

退職の背景

会社を立ち上げることになったからです。

FOLIOの入社面接時から「2-3年で退職して起業します」と宣言しており、2年11カ月のギリギリでの目標達成となりました。

FOLIOを辞めるのは起業する時だけと言い続けてきたので、ウソにならなかったことに一安心しています。

次のチャレンジの話は置いておいて、この3年で変化のあったポイント・よかったことを振り返ってみます。

マインド

自責的な思考が強くなった

「自分が責任者であり、会社のアウトプットを左右する存在である」という意識が強くなったことが最大の変化ポイントです。

当然ながら投資銀行時代から自分の力で提案すること・アウトプットに責任を持つことを意識していなかったわけではないですが、自分より圧倒的にキャリアを積んだ上司や専門家がチームにいる環境の中で、どこかで安心していたことに改めて気づきました。

リソースが不足しているスタートアップでは、自分よりその分野に詳しい人がいないことが当たり前であり、特に経営企画・資金調達まわりではミスが会社の死に直結します。「弁護士・会計士等の専門家の言質がとれたからOK」ではなく、彼らのミスの可能性も含めて責任をとることの重要性を認識し直しました。

スタートアップ転職のリスクへの考え方が変わった

自分のキャリアへのリスクをあまり感じなくなりました。

FOLIO転職時には、スタートアップに転職した友人たちに「転職ってリスク感じない?」と聞きまわったり、「新卒で外資系投資銀行に入社」というそこそこ見栄えのいいキャリアを傷つけないためにはどうすべきか?みたいなことを頭の片隅では考えている自分がいました。

一方で、現在は経済的な心配も、きれいなキャリアを維持したい欲求も薄らいだのを感じています。

1.具体的なスキルが向上した:投資銀行時代は「投資銀行で役立つスキル」が徐々に積み重ねられている感覚があり他業界に出た場合に本当に役に立つのか自信がない状態でした。スタートアップの実務を経験したことに加えて業界が見えてきたことで、「他でも使えそう」と思える力が少しついた気がしています。

2.人と比べなくなった:30を超え、高校→大学→就職と経歴とブランドしか比べるものがない時代から、「事業」のような自分が携わったものにこだわりが移行した感覚があります。何より自分で頭と手を使って事業を創ることの楽しさを知りました。

3.鈍感になった:スタートアップにいると「これほんとにヤバい...」と思う瞬間が何度も訪れます。「何とかなるし、最悪死にはしない」的思考が身につきました。

一方で、これから自身の会社の採用を頑張っていく身としてはスタートアップにリスクを感じない感覚は世間とズレていることは忘れないようにしないといけないと思っています。

スキル・ナレッジ

スタートアップ独自のファイナンスの感覚が身についた

「投資銀行出身の方に資金調達を任せたいです」という話しをよく耳にしますが、正直スタートアップのファイナンスは投資銀行で扱うものと違い過ぎて、そのまま使えるものはあまり多くありません。(特にM&A中心で案件をこなしていた方は戸惑いが多そう)

FOLIOではSBIグループからの資金調達を始め非常に幅広い議論・検討を通じ、一通りの株主間契約の実務、優先株の取り扱いと論点、ストック・オプション周りの論点、投資家の目線やDDでの着目ポイント等の土地勘を得られたのは大きなプラスになりました。

FOLIOを経ずに起業した場合を考えると寒気がする話

組織開発への理解の面

投資銀行では強い経済的インセンティブで均質なメンバーが動く一方で、スタートアップではモチベーションも属性も様々です。

組織が急成長する中でのひずみや、いわゆる「100人の壁」の存在も痛感しました。

「メンバーのミッション・ビジョンへの共感が大事」と多くの起業家が言っているのをまっっっったく信じていなかった私ですが、今は共感するところが大きいです。

プロダクト開発への理解の面

まだ全然理解が足りていないですが、多くのプロジェクトでの検討や自分でプロダクトを作る中で、何が大変で何が簡単なのかが少しだけ見えてきました気がします。ユーザーの声を正しく理解すること、負債を貯めないこと、仕様・設計を考え切ること、タイムラインを無理してもいいものができないこと、等々を何も経験せずに起業してプロダクトを作っていたことを考えると恐ろしいです。

実績

資金調達・子会社化は大きな経験になった

FOLIOは2021年8月にSBIグループからの資金調達と連結子会社化を発表しましたが、この案件に深く関われたことは非常に大きな経験となりました。

この形に至るまでに消えていった数十のスキームの検討と数えきれない資本政策シミュレーション。。。事業を前に進めるために一刻も早く決め切らなければいけないプレッシャーはアドバイザーの立場で関わっていた頃とは異質の体験でした。

最終的には、SBIグループの力強いサポートにより新たなチャンスを頂けたのは感謝しかありません。

色々なプロジェクト経験と失敗

FOLIO在籍の3年間で、十数個の事業提携・新プロダクト開発のプロジェクトに主体的に関与し、その中で現在まともに形になっているのは「FOLIO ROBO PRO」の1つだけです。

打率が非常に低く悲しい限りですが、リソースが限られるスタートアップとして、それだけ選択と集中を行えているということでもあります。

「FOLIO ROBO PRO」も当時社内では反対ムードが強かった中で、構想→初期インタビュー→モック作成→定量調査・インタビュー→MVPでのリリース→マーケティングと改善施策実行、まで関与し、短期間でしたが、プロダクト・マネージャーを務めたことは大きな経験となりました。

私生活

子育てがしやすかった

FOLIOは非常に子育てがしやすい会社でした。

投資銀行時代、分娩室の前でも仕事をしているぐらい限界を感じていた私にとって、子育て世代が多く共働きも多いFOLIOは非常に働きやすい環境でした。

特にコロナ前からリモートワークを推進しており、現在もフルリモートを基本とできる体制が整備されていることは大きな強みでした。

そんなFOLIOで最も助けられたのが「パパ―!」の絵文字文化です。申し訳ない気持ちを抱えながらも、どうしても子供の体調で退社しなければならない時にこの絵文字を付けて貰うだけで心が救われます。

後悔とこれからやること

「スタートアップに行くからには ”自分で” 会社を成長させなければならない」

投資銀行の退職にあたり上司の方からかけていただいた言葉です。

FOLIOはまだまだ成長途上であり、やっと光が見えてきたタイミングで会社を去るのは非常に残念でありやり残したことはここには書ききれないほどあります。個人としては思い描いた実績が残せたとも言い難いです。

幸い非常に優秀な後任の方に入社いただくことが出来たため、思いはすべて引継ぎさせていただきつつ、FOLIOで得たものを糧に、次の挑戦にていい事業を作ることに邁進していきたいと思います。

なお、FOLIO経営企画は積極採用中です

事業の拡大にともないFOLIOの経営企画はまだまだ積極的に募集中です。創業以来CFO職も置かず進めてまいりましたが、ここからビジネス系の経営幹部含めて積極採用です。ポジションはまだ大きく空いているのでぜひ下記からご連絡いただけますと幸いです。
私のTwitter(@hiro_ishizaka)にお声掛けいただいてもおつなぎすることはできます。


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