美味しいご飯とくだらない話と、あと音楽があれば死にはしない
この日の居酒屋は満席だった。そんな中でも会話が出来るくらいにバイトは慣れた。
出張中に仲のいい先輩が亡くなってしまったと言う社長は、予定より5日ほど遅れて帰ってきた。
「出張から帰ってくるの遅かったですね」
「いやぁ、それが地元の先輩が亡くなってしまってん。まだ42歳やで?」
「そんなに若く?癌か何かですか?」
「それが、自分で逝ってしまったらしくて。めっちゃ仕事できる良い先輩やったんやけどな〜。あ、そのドリンクあっちに持って行って」
ドリンクを持って行った席では、二十代前半くらいの女子5人組がMBTIとやらで大盛り上がり、ひたすら大爆笑していた。
「失礼します〜生ビールとレモンサワーですね」
「ありがとうございます〜!お兄さん追加いいですか?」
「はいどうぞ〜」
「え!あんたIなん!?Eじゃないの!」
気持ちのいいくらい楽しそうに呑んでくれるこの人たちからは、溢れ出る生を感じる。
今年の夏、僕は美味しいものとくだらない話をできる友達、あと音楽に生かされてる事を知った。
振り返ってみたら、毎日のように楽しかつまた。
明け方まで語り明かした日の朝日が綺麗だった。
深夜に食べるカップ麺やコンビニの前で食べるアイスはやっぱり美味しかった。
フェスで聞いた生の音達はやっぱり心地よくて、幸せだった。フェスの酒はいつもの3倍美味い事も知った。
どれも生きるために必要だ。
情報が溢れかえった世界で揺るぎない物を探して生きている僕らには、美味しいご飯とくだらない話と、あと音楽が必要だ。