個別の指導計画データベースシステム 論文の補足 2013/6/9
伝えたいことを伝えきれないもどかしさはあるものの,初めて公の場に「個別の支援計画データベースシステム」を出すことができた。
論文には書いていないことがあるので,ここで補足しておきたい。
データベースで一元管理される児童生徒の情報だが,この活用は,個別の教育支援計画や個別の指導計画といった,いわゆる書類を作成する為のものではない。
大きなねらいは,児童生徒の情報を一元的に管理し運用することにより,継続的かつ系統的な指導や支援を組み立てられるようにすることである。
職員数が多く,入れ替わりも激しいため,継続的,系統的な指導,支援がなかなかうまくできていなかった,というのが学校の大きな問題点だったのだ。
これを解決しないことには,先へ進めることができない。
ソリューションとして,このシステムを提案したのである。
過去の情報を参照できることで,これまでの指導や支援を把握して,現状に合った指導や支援を考えられるようになったというのは,当たり前のようであって,実際にできるようになったことはちょっとした変革なのだ。
真のねらいはその先にある。
誰が担当になっても,一定クオリティーの指導や支援が組み立てられ,遂行できるようになることである。
これができるようになるための最低条件は,情報が蓄積され共有されるようになっていることだと考えている。
私の経験上,持ち上がらない限り,継続して得られる情報はごくごく表面上のことにとどまる。(もちろん,えられる情報は最大限得て,頭に入れておくが)
結局,その児童生徒に会ってからどうしたらよいかを考えることになってしまうのだ。それまでどうしていたかが共有されないため,試行錯誤する時間が長くなってしまい,それまでの指導や支援が御破算になってしまうこともある。なんと無駄なことなのだろうか。(すべてが無駄なわけでもないが)
継続させるためにはどうしたらよいか,私なりに考えだした結果は,システム化することであった。
これを校務の効率化と掛け合わせ,データベースシステムとして具現化してみたのである。
こうした取り組みは,私以外にもいくつか行われていることを聞いている。
では,どこに特色を出すか,というか結果的に特色となったことだが,入力と印刷の結果を同じにすること,という点が努力した点である。
合わせて,私以外でもシステムがいじれるようにしておく,ということも特色と言える。
もう一つのねらいが,集約した指導や支援の情報を分析して,法則性を見出すことである。
情報をならべ,視点を定めていくことによって,見出せる法則性や規則性があるはずである。
これまでは,個々の教師の経験や勘が,なんとなく法則性や規則性を感じ取っていたことだが,ここにメスを入れたかったのである。
「誰も」が一定クオリティーの指導や支援を行えるようにするためには,この分析こそがかなめだと考えている。
運用3年目となり,一人の児童生徒を見ても比べるべき情報が蓄積されているし,学年単位,学部単位,障害種,担任別といった観点で並べてみるとかなりの情報になるはずだ。
分析の手法を導入して,見出せる情報を明らかにしていきたい。
さて,このシステム,勤務校にとどめておくつもりはない。
近隣市町村で統一したシステムで運用することができるようになったどうなるだろうか。
小中学校の支援が必要な子どもたちを,その市町村全体で共通理解し,学校が変わったとしても,一定クオリティーの教育や支援が受けられるようにできるだろう。
また,指導や支援の情報を共有化し,分析することによって,さまざまな子どもたちに対して,ベターな解を得られるようになるのである。
※ベストな指導や支援は,担当する教師の技量によって変わってくることだと思っている。
もちろん,セキュリティーと個人情報の問題はある。
技術的には解決できるが,ルール上と倫理上どうするかといったも問題はクリアしていかなければならない。
だが,電子カルテのシステムでは系列病院や特定地域でできていることである。教育の業界では,やることがタブー視されているだけのことだ。
これをやらずしてインクルーシブ教育はできない,と思っている。