40歳から始めるIT
RPA
「RPAについて調べてみて」。
当時勤めていた会社のボスから指示があった。
RPAってなんだ?
初めて聞く単語にとまどいつつ、ボスの期待には応えなければ、という義務感から「分かりました」と迷わず返事をした。
とは言え、本当に何も分からない。
分からない時は調べよう。
早速、聞いたばかりのRPAとやらを検索してみる。
Robotic Process Automation、仮想知的労働者?
なんじゃそりゃ。
さらに調べると、どうもエクセルのマクロをパソコン内全体に広げたようなものらしい。ふーん。
これは使えたら面白いな。
近々東京ビッグサイトでRPAを含めたDXの展示会があるそうな。よし、行こう。
出張が好きだ。何故だろう。移動が好きなせいかも知れない。
勤務時間中に、会社の金で普段乗らない電車に乗って移動するのはなんだか悪甘い楽しみだ。
一人ならなお宜しい。この解放感。
ビッグサイトに着くと、それはすごい人出であった。
まあ、需要があるからビッグサイトなんて大きな会場を用意してあるのだろう。
NTTデータを始め、錚々たるSierがブースを連ねている。
あちこちで名刺を交換し、RPAがどういうものか、どんなDX製品があるのか見て回る。
こういう技術お披露目会は非常に楽しい。子供の頃のお祭りで屋台を回る時以上に興奮する。エンジニアの性だろう。
カバン一杯になったパンフレットをボスに報告する。
どうもUipathというRPAのソフトが優れているらしい、このUipathとAI-OCRという文字起こしができるソフトを取り扱っているベンダーを回ってみたいと報告すると、ボスも大いに興味を示してくれ、再度の出張許可をくれた。
私はいちエンジニアのはずなのだが、なんだかITコンサルタントのようだ。
ともあれ、大好きな出張の許可を貰い、浮かれた気分で再度社外に出ていった。
ベンダーを数社回ってみる。どこも東京ばかりだ。
こういう場合、自社にベンダーを呼んでプレゼンして貰うものだが、あえて自分から訪ねて行った。
理由は2つ。
客側から訪ねていくと、相手も恐縮して社外秘の展示など、中々見られないデータを見せてくれることが多い。足を使うと、自社の為になるのだ。
もう一つは私の出張好き。
結果をボスに報告し、Uipathを導入しようとIT部門に相談したところ、こういったソフトはITが承認しない限り導入できないとのことだった。
予算もこちらで出すと言ったが、結局認められなかった。
身内に敵がいる。
男には7人の敵がいるというが、身内に邪魔されるのは面倒なことこの上ない。
なんだかどんよりしていると、海外にある本社から、Uipathを導入します、という通達が。
なんだよ!
ああ、社内政治に翻弄されるサラリーマン。
世間では良くある話だけども、数ヶ月の自分の大いなる努力が徒労に終わってしまった。
しかし、ここで終わらないのが私という人間である。
ならばこのUipath、社内の誰よりも早く己の技術にしてくれよう。
このアメリカ産のRPAを使いこなすのだ。
この時の私は、自分の仕事を邪魔されて意固地になっているだけであったが、後にこのRPAが私の人生を (少し)変えていくのであった。
当時の私はパッケージングエンジニア。
自社製品の箱詰めの方法を決める仕事である。
数百とある部番ごとにどんな箱を用意して、1つの箱にいくつ製品を詰め込んで、詰め方はこうで・・・と膨大な仕事を一人でこなし、さらに客先と交渉を行っていた。
その業務の合間にRPAの勉強を始めてみた。絶対に自宅に持ち込んで、というサービス残業のような真似はしなかった。
特に意味はないが、妙なこだわりであった。
今は他のRPAも使うようになったので、UipathというRPAがどういうものか分かるのだが、UipathはRPAの中でも海外製のせいか、エラーの意味が分かり難い。
使いこなせれば出来ることはおそらくRPAの中では一番広いが、初心者が一人で勉強するにはなかなか難しいソフトだと思う。
変数?引数?しょっちゅう出るエラーの意味!
ソフトと喧嘩しながらハードウェアの業務をしているのは私ぐらいのものだろう。
そしてとうとう、最初のRPAを使用した業務自動化ロボットを組み上げた。
まずボスに見せてみた。
「おお、良いね」
良かった。反応は悪くない。
「これを全社的にPRしよう」
ん?急に話が大きくなった。
「今度本社や他の事業所からうちの工場を見に来るから、これで実演しよう」
なんと!プレゼンどころか、実演!?
この会社の偉いさんたちに対して行ったRPA実演はまずまずの成功に終わり、後のアンケートでは興味深い案件第一位を獲得。
私は (この当時はこんな言葉があるとは知らなかったが)社内RPAエンジニア第一号として知られることになった。
そして今ではその会社を退職し、ITコンサルタントという名のRPAエンジニアとして働いている。
テスラやホンダに限らず、ハードウェアのメーカーではリモートワークなどの会社に来ない働き方を否定する動きが強いが、ソフトの会社はその傾向はあまりない。
HSPの私にはリモートワークは非常に有難い。
他人の電話の声を聴かされることもないし、自分の電話の中身を人に聞かれることもない。
自宅なので、RPA相手にマジギレしていても他人を嫌な気分にもさせない。
他人との接点を減らしたい、会社に行くのが苦痛という方はソフトを勉強してみるのも一つの手段となるでしょう。
RPAみたいなノーコードのソフトは比較的敷居も低くてオススメです。
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