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【トランプVSハリス】米大統領選討論会で彼らが最も多く使った言葉は?

あと2週間まで迫った米大統領選。全大統領であるドナルド・トランプ氏と現副大統領のカメラ・ハリス氏が、史上まれにみる肉薄のデッドヒートを繰り広げる中、昨月の9月には両候補者初の討論会が行われた。

討論会の発言内容は、下記にまとめられている。
<英語>

<日本語>

それでは両候補者が討論会で最も多く使った言葉を見ていこう

今回は、日本語訳、英語原文の両方で、gと2週間まで迫った米大統領選。全大統領であるドナルド・トランプ氏と現副大統領のカメラ・ハリス氏が肉薄のデッドヒートを繰り広げる中、昨月の9月には両候補者初の討論会が行われた。

それでは両候補者が討論会で最も多く使った言葉を見ていこう。

今回は、日本語訳、英語原文の両方で、自然言語処理を用いて両候補者が多く討論会で使用した言葉をpythonのspacyパッケージを用いて解析した。まずは英語原文での解析結果から見ていきたい。

understandで聴衆に理想を語り論理的に呼びかけるハリス氏

解析にあたり、抽出する品詞は、動詞、形容詞、名詞(固有名詞含む)に限定した。まず図1がハリス副大統領が討論会で多く発言した言葉を昇順にまとめたグラフである。最も多かった言葉は、president、その後にhave、people,
know、donaldといった言葉が続いた。prersidentはトランプ大統領を指す際にformer presidentの呼称を使用しているため、最も多く使用した言葉となったとみられる。討論会では、お互いを批判する場面が多いため、presidentやdonaldといった言葉が最も使用した言葉になったといえる。また、ハリスの口癖として特徴的なのが「understand」の多様である。視聴者に同意を呼びかける際に、「understand」を文頭に置き、聴衆の興味を引き付け、トランプ氏の政策を批判するのが討論会での決まり文句のようになっており、その討論会での印象ががデータにもそのまま現れる結果となった。

図1 ハリス大統領が多く発言した言葉

Lookと簡単なワードチョイスでアメリカの再興を感情で訴えかけるトランプ氏

次に、トランプ前大統領が多く発言した言葉を見ていきたい。全体を通してトランプ前大統領の発言量が多いため、最も多く発言した言葉の回数にほぼ2倍のさがついている。(ハリス氏が最も多く発言した言葉 president の回数は57回)ハリス氏と比べて、haveやgo、doといった簡単な動詞がトップ3を占め、続く言葉も名詞に比べて動詞が多いのがトランプ氏の発言内容の特徴とも言える。以前からいえるトランプ氏の演説の特徴は、ハリス氏に比べ、演説というより会話に近いような口語的な発言内容が多く、それに伴い発言の一文が短い傾向がみられる。簡単な動詞が上位に並んだのはそれを顕著に反映した結果といえる。また、ハリス氏の「understand」に対応するトランプ氏の口癖としていえるのが、「look」である。ハリス氏を批判する際に「lool」を多用し、観客に呼びかけるのがトランプ氏の発言スタイルの一つの特徴といえる。また、「Make America Great Again」をスローガンに掲げる共和党の候補らしく、「country」(67回  主に、our countryとして発言されている)という自国を中心とした発言が多いことも特徴の一つといえる。

図2 トランプ氏が多く発言した言葉

今回の大統領選は、各候補者自身が各党の特徴を顕著に反映しているともいえる。トランプ氏は「白人、男性」、ハリス氏は「女性、黒人およびアジア系のバックグラウンド」と各党の主要な有権者層の象徴とも言える。この両候補者自身が体現する各党のカラーが、両候補者の発言内容にも現れているように思えた。例えば、「want」 と「need」という似た意味合いを持つ言葉でも、ハリス氏が「want」(発言回数 20回)に加えて、より固く、かしこまった表現である「need」(発言回数 13回)も多用しているのに対し、トランプ氏はより強い要求を占めす「want」(発言回数 27回)を多用している点で、「アメリカの強さ」を体現する共和党のトランプ氏と「多様性や協調」を掲げる民主党のハリス氏、それぞれのカラーがデータからも読み取れるように感じた。

【日本語訳解析】各党の政策と有権者層を意識したワードチョイスが顕著に

一方で、英文をそのまま言語解析したのみだと、抽象的な動詞が多く、両候補者の発言内容の特徴がつかめない部分もあったため、改めて日本語訳に下記をストップワード(一般的で役に立たない等の理由で言語処理上対象外とする単語)を設定し、再度両候補者の最も多く発言した言葉を解析した。

ストップワードに設定したのは下記の用語である。
"言う","いう","知る","持つ","こと","つく","起こる","起きる","関する","感嘆符","よる","思う","当てる","話す"

中絶をはじめとする「女性の権利」を意識したハリス氏

ストップワードを除去したことで、各候補者および各党の重点政策を体現する言葉が出現するようになった。図3はハリス氏が最も発言した言葉(日本語、ストップワード除去後)今回の大統領選の主要な争点である中絶の権利の保障に関連した「女性」(12回)や「権利」(9回」)、「守る」(8回)といった言葉に多く触れられているほか、民主党オバマ前大統領が導入したオバマケア(8回)など、民主党に関連する言葉にも触れられていることがわかる。

図3 ハリス氏が最も発言した言葉(日本語、ストップワード除去後)

経済と移民政策に焦点を置いた発言が目立つトランプ氏

一方で、トランプ氏が多く発言している言葉は、共和党が主要政策として掲げるアメリカ経済の再建や移民の流入による治安悪化の懸念にかかわるものが多い。「経済」(12回、ハリス氏10回)や不法移民によるものを揶揄した「犯罪」(11回)、「国境」(10回)、主要な支持層である白人中産階級へのアピールを意識した発言が多い。

図4 ハリス氏が最も発言した言葉(日本語、ストップワード除去後)

各候補のワードチョイスはカギを握る各党の若年支持者層の最大の関心事項でもある

WSJによるこちらの動画では、若年者層の男女間での今回の政治的関心事項に関してまとめられている。この動画から明らかにされたのが、今回の大統領選では若年層の女性=民主党、男性=共和党支持が顕著にみられることである。そして、民主党が重要施策の一つとして掲げる「中絶の権利の保障」は若年者層の女性の最大の関心事項であり、一方男性にとっては「経済」と「移民問題」が最大の関心事項であることがわかる。ハリス氏とトランプ氏が討論会で発言した言葉たちは、彼らの最大の関心事項とオーバーラップするものであり、若年層をはじめとする自らの支持者層へ改めて自らの姿勢を訴えかける姿勢が窺える。動画でも触れられている通り、近年男女間のライフタイルや価値観およびそれを反映するように各党間の政策に、大きな差が生じていることがわかる。Pew Reserch Centerの調査では、両政党の有権者の対立が深刻化していることが大きく指摘されている。

選挙戦も終盤に差し掛かり、両候補者は激戦区であるSwing Statesを中心に最後の有権者への呼びかけを行っている。開票まであと2週間。どちらの候補が選ばれても、分断を抱えるアメリカ社会そして、世界にとって課題は山積みであろう。


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