精霊の舎-37(連続短編小説)
マギは、柔らかな草の上で、
夢を見ていた。
どこまでも続く丘を、
四つ葉のクローバーを
探して歩きまわる夢。
1つ目のクローバーを見つけた時、
マギはそれを見て、
フィカを思い出した。
と、同時に、葉はみるみるうちに、
しぼんでしまった。
しかし、マギは、何も感じてはいなかった。
次に見つけたクローバーを手にした時、
懐かしいカイの姿が浮かんだ。
葉は、さっきとうって変わって、
生き生きとマギの手の中で
輝き出した。
でも、マギは、もう1つ
四つ葉のクローバーを
探さなければいけないと知っていた。
そして、それを大きなアカシアの木の下で
見つけた時、
突然、世界が炸裂した。
マギは、一人佇んで、
その光景を見ていた。
大きな川に篝火を焚いた舟が、
星の数ほど行き交っている。
川辺には、一段と大きな篝火が、
川の流れに沿って並び、
暗い夜の中で、目を覆いたくなる
くらい煌々と燃え盛っている。
誰もいない川辺に、息苦しいほど
多くの人の熱気を感じる。
まるで夢の中の光景のように、
つかみどころがないのに、
どこかで知っているような、
懐かしいい感じが胸に湧き上がってくる。
川と舟。
火と水。
遠くで自分を呼ぶ声がして、
マギは、誰もいない、
しかし異様な熱気とはじける火の粉、
そして水の涼しさを肌で感じながら、
川辺をさまよった。
松明の燃える煤けたにおい。
足下を流れる水の潮のにおい。
「マギ・・・!」
突然、その声がはっきり聞こえ、
マギは驚いて目を覚ました。
続