精霊の舎-51(連続短編小説)
しかし、ホンナには、
バーにいる人々の魂が
架空でないこと、
つまりいずれのパラレル・ワールドで
あるにしろ、
人々の魂がまぎれもない本物で
あることがわかった。
そして、アークの魂は、
かすかにだがガイヤの形がある。
ホンナは、マギの手を取ると、
アークのそばへ近づいて行った。
「ガイヤ」
全然こちらが見えていない様子のアークは、
しかし、ホンナにそう呼ばれて、
かすかに反応した。
手にしていたグラスを
カウンターに置き、
ちょっと不思議そうに
首をかしげたアークに、
マギが、「カイ」と声をかけると、
またしても、あの祭りの時同様、
辺りの喧騒がすっと消え、
バーの中での時間が
止まったように思えた。
今、この世界にいるのは、
ホンナ、マギ、カイ、の
三人だけである。
アークはしばらく、
何が起こったのか把握できず、
ぼんやりとしていたが、
徐々に、意識をはっきりとさせていった。
「・・・やっぱり、ガイヤ本人なんだね?」
ホンナの声に、ガイヤは
少年っぽくおどけてみせる。
「もう見つかっちまったか。
せっかく新しい世界に潜り込んだのに」
続