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精霊の舎-47(連続短編小説)

「フィカ・・・!!」

マギは大声で、
かつての恋人の名を呼んだ。

それでは、彼は本当に
夢を叶えたのだろうか。

本当に画家となって、
マギの物語に絵を描いたのだろうか。

フィカの描く人魚は、
どことなくマギに似ているように
思われた。

しかし、物語はここで終わりでは
なかった。

人魚の娘が、
マギ自身に変わり、
カイをモデルにしたはずの青年が
ガイヤではなく、ホンナに変わり・・・

そして、天空を稲妻と共に舞う龍神が、
橋の上に立つ青年ホンナに
吸い込まれていった。

「実らぬ激しい恋も、
永遠を知る愛も
すべてあなたの中にあった
というわけね」

夢から覚めたように、
マギは柔らかい雲の中で身を起こす。

そばでは、ホンナがいつもと変わらない
温かなまなざしで、マギを見つめている。

不思議と、今はカイのことに
心奪われていないマギは、首をかしげる。

「・・・とにかく、帰ろうよ、君の家に」

ホンナにそう言われて、
マギは深くうなずく。

カイやガイヤよりも、
今、マギの必要なのは
あの家と、そしてホンナの温かい想いだった。

「ええ、帰りましょう・・・。
私たちの家へ」

               続


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