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精霊の舎-25(連続短編小説)

「君は私が直近の人生で
人間としてうまれなかったことを
恨んでる?」

エルサが帰った後、
ホンナは書斎のソファに
ころがったまま、そう尋ねた。

「・・・男の人としてってこと?」

ホンナはかすかにうなずく。

マギは軽く笑った。

「私が結婚しなかったのは、
何もホンナがいなかったせいじゃない。
だって、私たちの関係は、
別に夫婦に限ったわけじゃないでしょう。
どちらかというと、
精神的なつながりが強かった」

ホンナはまた、かすかにうなずく。

その様子が何となく気になって、
マギはホンナに近づく。

「・・・何を考えているの、ホンナ?」

ホンナは、ふっと考えを
振り切ったように表情を変えると、
マギを見上げた。

「考えるのは君の仕事だよ」

マギはしばらく黙ってしまった。

それから静かに尋ねる。

「・・・私が結婚しなかった理由に、
何か大切な意味があるのね?」

「君はどう思う?」

「あなたは全部知っていて、
そして、いつもそうやって私に聞くのね。
いやな人だわ。
私の口から、どうしても、
その名前を言わせたいのね」

ホンナは目を細めた。

「・・・言ってごらん。
君の心にひっかかっている、その名前」

               続 


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