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精霊の舎-24(連続短編小説)

エルサがそういい終わった時、
突然ホンナが
リビングルームに現れて
二人は飛び上がって驚いた。

「なんで、君までそんなに驚くの、
マギ」

エルサはともかく、
マギは、ホンナの登場に
慣れていてもいいはずである。

「だって、ひどいじゃない、
私たちの話の途中に・・・!」

「ああ、それは悪かった。
けど、どちらにしても、君のことは
精霊の私には筒抜けだから」

「・・・イヤな存在だわ、まったく」

マギがあきれたところで、
ホンナはエルサに向かいあった。

「こんにちは、エルサ。
突然、ごめんよ。
でも、これだけは言いたくて」

人のいいエルサは、
ちっとも悪びれず、
ホンナのために紅茶を注いでくれる。

今日のお茶は、マギ特製の
甘いマルベリー茶だった。

礼を言いつつ、ホンナは続けた。

「ねぇ、エルサ、人を助ける者、って
精霊よりずっと素晴らしい存在なんだ」

ホンナの言葉に、エルサは思わず
頬を赤らめる。

「君の魂は本当にすばらしい。
強くてたくましく、そして、
常に人を助けたいと願っている」

「メリンもそういうタイプでしょ?」

マギの横槍に、ホンナはうなる。

「・・・メリンも、助けたいと
思っている。
でも、彼女自身も誰かの助けなしには
生きていけない。
つまり人間の域の、助ける者、なんだ。
でも・・・」

「エルサは一人でも生きていける上に
人を助ける、と」

マギの言葉に、エルサは大笑いした。

「ひどいわねぇ!
確かに一人で生きてきたけど、
何も好き好んで・・・」

「エルサの場合は、
運命がその魂を磨こうと、
そういう人生を設定してるのさ」

ホンナは精霊らしくなく、
サラリとそう言いのけた。

「あらまぁ、
よそのグループの魂には
そんなこと教えちゃうのね。
エルサの精霊にしかられるわよ」

「大丈夫、エルサの運命については、
私だって、想像の域を出ないから」

ホンナとマギの言い合いを、
エルサは楽し気に見守って言った。

「ホンナが前の人生で、
人間として生まれていたら、
マギは一生独身ではなかったでしょうね」

この前、メリンにもそう言われたのを
思い出し、マギは、ふふん、と
鼻を鳴らした。

「さぁ、それは、どうかしらね」

               続

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