精霊の舎-28(連続短編小説)
カイに出会って6年後、
マギは創造者の魂として
はっきり目覚めた。
しかし、カイはあくまでマギの
情熱の源であるに過ぎず、
直接的な関係というものが
まるでなかった。
ホンナは思考の中で、
目を凝らす。
なぜ、二人は結ばれなかったのだろう。
かつての人生で、
幾度となくそうであったように
恋に落ちる事はないのだろうか。
ああ、と、ホンナは目を細める。
マギの糸とカイの糸がもつれている。
本来なら、この糸をきちんと
操るものがいるのに
放り出されたまま複雑に絡み合い、
あらぬ方向へとひっぱられている
運命の赤い糸。
へたをすると、
切れてしまいそうで
気が気ではない。
― この糸は、誰によって操られて
いるんだろう?―
ホンナは試しに、
少し前のマギの人生に戻ってみる。
マギが青年で、カイが少女の人生。
そこに一人の老人がいて、
二人の糸を操っているのがわかった。
ホンナは一瞬、息が止まった。
二人をつないでいるのは、
何と、人間だったホンナ自身なのだ。
その時、ホンナの思考が
パーンと音を立てて、炸裂した。
思わず目を覆って、
しばらく、その目の眩むような
衝撃に耐えていたホンナが
やっと目を開くと、
そこには、あの、親しい精霊の姿があった。
続