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精霊の舎-2(連続短編小説)

もし、むこうでそれを知っていれば、
自分の人生もそれほど孤独でも
なかっただろうと思った。

そして、どうして、その存在を
もっと早く明らかにしてくれなかったのだ、と
ホンナに詰め寄ると、
人間のほうがなかなか
精霊の存在に気付こうとしないからだ、
と切り返された。

純真な子供には、
時どき見えるけれど、
やはり、その子供も大人になると、
マギと同じく、夢だ、幻想だ、と
言って片付けてしまう。
しかし、自分たちの存在は、
人間に見えないほうが
都合がよいのだ、とも言う。

もし、そうでないのなら、
最初から、互いの存在が
わかるように作られているはずだから、と。

ここにくるまで、マギは、そういった話に
ついていけなかった。
しかし、今なら十分理解できる。

この仕組みを作った誰か
(神とでもいうのか)が、
そういうふうにすべてを
作ったのだから仕方がないのだ。

それにしても、人間は、
太古の昔、もう少し身近に
精霊を感じていたような気がする。

でも、もうそんなことはよいのだ、と
思いながら、マギは、長い黒髪を
湯の中で洗う。

この世界にいるのだから、
もう自分にはすべて
わかっているのだし・・・。
でも、やはり、何かに
書き留めておいたほうがよいだろうか。

マギの魂は、その職業として、
物を書くことを与えられていた。
仕事、というわけではなく、
語り部としての役割といったものだろうか。

とにかく、マギは、
入浴や花づくりといった楽しみの他に、
物を書き記すという楽しくも
苦しい役割を担っていた。
苦しいというのは、
何かを見たり聞いたり感じたりしたマギが
何かを書かなければいけないからではなく、
書かずにはいられない魂の叫びを
感じてしまうからである。

マギの感性は、通常の魂より鋭く、
何か感動するものにぶつかると、
激しく彼女を突き動かした。

その衝動を正しく活かせる
人生もあれば、何ら形にならず、
苦々しく過ごした人生もあった。

しかし、ここにくれば、
何にもとらわれず、
ただ思うことと感じることを
書き記すことができた。

それは、この世界の、
この宇宙の法則を
ひも解く鍵を推理するようなもので、
何千通り、何万通りも考えらえた。

まるで、人間の人生が
一人一人違うように、
架空の物語にも、宇宙の法則にも、
一つ一つ違った仮説やストーリーが
存在するのだ。

マギの書き物は、すべて
フィクションだったけれど、
永遠に書き続ければ、
何か見つかると信じていた。

そのために書くということを、
どうして人間は
理解できないのだろう。

マギはバスタブから上がり、
ため息をついた。

それが当然なのかもしれないと
思ったのだ。

人間には限られた時間しかない上に
生きていくために働かなくては
いけないのだから。

             続

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