精霊の舎-44(連続短編小説)
それから人の世では、
もう数えきれないくらいの
年月が過ぎた。
これは夢なのだろうか、と
マギは思う。
あの祭りの夜、川に身を投げて
以来、自分は本当にずっとこの
川にいたのだろうか。
しかも、こんな姿になって。
そうは思えなかった。
マギは夢の中で、
ある時代時代を
ワープしているのだと思った。
そして、これは比較的前世に近い
過去生のような気がする。
もちろん、過去に人間以外の姿で
生まれ変わっていたとすればの話だが。
マギは、あれからもう千回以上も
続いている祭りに、
その年も姿を現した。
川面で水と戯れる自分の姿はまさに
異形であったが、
この川で、龍神を待つには、
この姿でいるよりほかになかった。
その年もまた、次の年も、
これまでずっと続けてきた年と
同じように、マギは龍神の心を
つかめないままでいた。
そして、ある時、そんな彼女を
見守っている一人の青年の姿に
気づいた。
続