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精霊の舎-20(連続短編小説)

紅茶もすっかり冷めてしまった。

夢のマギの人生の結論を、
むろん、この時点で、
出せるわけはなく、
ホンナはこう切り出した。

「君が自分の人生を
続けるためには、
この夢から覚めなくちゃいけない。
もう一度、そこに戻る勇気は
あるかい?」

夢のマギは首をふった。

「・・・気分転換するために、
あの人生を後にしたわけじゃない。
もう、いやなの、あそこに戻るのは・・・。
でも、だからって、
この世界にいるわけにもいかない。
あなたのマギが、
もう存在しているんですもんね、
精霊さん」

そう言って、夢のマギは、
はっとした。

「・・・どうして?
ねぇ、どうして、私の人生には、
あなたがいないの?
呼んでも叫んでも、
私に応えてくれる人がいない。
精霊さん、あなたは誰?
私の人生の中で、どこにいる人?
何をしている人?」

ホンナは、再び口をつぐんだ。

それを察して、マギが答える。

「あなたの人生の中で、
人間のホンナは存在しないわ。
泣いても叫んでも、
あなたの肉体を抱きしめてはくれない。
でも、心の中をのぞいてごらんなさい。
夢のマギには、きっと
夢の精霊ホンナがついていてくる
はずだから。
私がこんなこと言うべきでは
ないのでしょうけれど、
あなたが元の世界に戻らなく
なるくらいなら、
教えてあげてもいいと思うの。
忘れないで。
あなたは創造者、マギ。
ホンナは、あなたの心の中にある。
忘れないで」

マギのゆっくりとした
声に合わせて、
夢のマギは、
次第に眠りについていった。

そして、彼女の姿は、
この世界から元いた世界へと
移って行き、最後に冷めた紅茶の
カップだけがそこに残されていた。

              続


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