【再レビュー】骨太な走りでさらに夢の広がる車に ダイハツ タント 試乗レビュー
今回は、ダイハツのタントに乗車することができたので、レビューしていこうと思う。過去に一度レビューしており、去年は自分の個人的カーオブザイヤーにもなったような車ではあるが、この間久しぶりに乗ってみると、また違うものが見えてきたのでまた再レビューしていこうと思う。
内装はまだまだ煮詰めるべきポイントも
内装は少しつめの甘さがある。特に収納面は若干弱いのかなという印象。
助手席には大きな物入れがあり、ティッシュや財布、スマホなどなど、割となんでも置くことができる。運転席側にも蓋つきの収納と、中にUSBポートがひとつあるが、このUSBポートのせいで収納の高さが限られており、財布でギリギリと言う感じだ。センター部分の収納が少なく、ライバルと比べた時に若干利便性で劣る。個人的にはインパネの部分に小物入れや、テーブルがついていればと感じてしまう。ガツガツ使うと言うよりは高級路線に行ったのかと予想するが、ルークスが質感と使いやすさを両立していることを考えると、走りと言うよりは利便性や使いやすさを重視しているダイハツには収納面においてもっと頑張ってほしかったと思うのが正直なところだ。
ただ全体的な見栄えや質感はよく、普段使いでストレスに思うこともない。あるとすれば、ハザードスイッチだけ質感がオモチャなことくらい。
また、ダイハツのブレーキホールドには便利な機能がついており、ブレーキホールドがかかった状態でもう一度ブレーキを踏むと解除される。例えば渋滞中にちょっと進む時に、アクセルを踏むと進み過ぎてしまうが、クリープだけなら速度調整がしやすい。あわよくば国産車もブレーキホールドはスイッチではなく、追突事故も二次被害を防ぐ意味でもブレーキを踏む混むかかるタイプにしてくれればと感じるが、まだまだ先の話なのかもしれない。
基本的にストレスに感じるものはないので十分ではあるが、バツグンにいいかといわれるとそうでもないというのが正直なところである。
メーターは、すべての人に対して見やすくセッティングされている。クルマのメインの情報はほぼすべてがメーターに集約されるようにできており、かなりわかりやすい作りになっている。
エアコンの情報もここに出てくる。プリウスや80型のノアならメーターから調整できるが、そこまではできないようだ。ただ、常時表示されており、パッとメーターに目を移しただけですぐわかる。速度やシフトポジションも表示が大きく、高齢の方にも優しい仕様となっている。
タントといえばやはりこれだろう。ミラクルオープンドア。実はこの車でダンボールに入っている6個入りの2Lの水を買ったのだが、積み込みがかなり楽だった。
先代までは助手席を畳めばテーブルになったが、この代からシートバックにつくタイプになったので、テーブルに置けるものは少なくなってしまったが、相変わらず夢が広がる車だなという印象は変わらない。ウェイクのようなアウトドア派な車でもこれができればとは感じるが、あの車は新型は出るのだろうか。
運転席のスーパースライドシートも便利だ。一人乗りでも人待ちの時にそのままのシートでゆったり足を延ばせるし、後ろの席においた荷物を取るのも楽になる。
かなり運転席のシートが後ろまで来ているのがわかるだろうか。もちろんPレンジ連動で運転中にやることはできないが、ずっとタントで大事にされてきたミラクルオープンドア然り、この辺りの機能はタントならではで、これ目当てにタントを選ぶ人、タント以外を不便に感じる人もいるのではないかと感じる。
走りは骨太
走りは一言でいうとかなり骨太である。ここからは、特によく乗っている現行型のルークスとの比較がメインになるかと思う。
かなり乗用車ライク
まず驚きというかまず思うことは、かなり乗用車ライクだなということである。スーパーハイトワゴンといえば、かなり背が高く、ガラスもとんでもなく大きく、軽自動車ながらクルマをかなり大きく見せているような印象があったし、特にデイズルークスはボンネットも低く、ガラスがかなり大きい。
そんな中でタントは、スーパーハイトワゴンにしてはかなりガラスの天地方向が狭いと感じる。このため、乗用車と同じような感覚で運転できるほか、心理的なクルマの重心位置を下げて、相対的にクルマの運動性能(の期待値)もあげられているような印象がある。ボンネットも高く水平で、見切りも意識していることがわかる。
以前タフトに乗った際やキャンバスに乗った際、着座位置を下げていても信号が見づらい場面があったが、タントでは少なくなっており、着座位置も若干改善されたようだ。運動性能的に理論上最も不利なスーパーハイトワゴンの中で言ってもかなりハイトワゴンやコンパクトカーに近い感覚で運転できるのではないだろうか。現行型のルークスだと着座位置やガラスの大きさから、まだ少しクルマを大きく感じることがある。
シャシーはガッチリ
シャシーはかなりガッチリしている。特に前方向がガッチリしており、かなり安心感がある。スーパーハイトワゴンではあるがフロアのプルプルも少なく、前のサスはしっかり仕事しているので、乗り心地も15インチながらそれなりに担保されている。
具体的には多少のコツコツは感じるが、一発でスッと収めてくれる感じ。14インチならコツコツ自体はもっと角が丸くなったものになるだろうが、自分ならロードインフォメーションとの両立という意味で15インチを積極的に選ぶだろうと感じる。15インチでも運動性能だけではなく充分な乗り心地を担保できるくらいにはシャシーの剛性が上がったということで、スーパーハイトワゴンもここまで成長したのかと驚いた。もちろん運動性能も高く、ステアリングからもタイヤの状態はよくわかるので、「安全な車」になったなあという感じ。エコタイヤではなくもっとグリップ力の高いタイヤでも使いこなせるだけの性能は秘めているようだ。
ただ後ろの剛性は若干足りない。ミラクルオープンドアの影響もあるのか、車両重量を軽くするためか、後ろの剛性はかなり足りていないように感じる。70km/hくらいの巡航でも、橋の繋ぎ目を越えるとリアは跳ねる。普通に一般道を走っているだけでも角のある衝撃ではリアがブルブルしているのがわかってしまう。
カーブの多い道を走っていても、剛性の高い前は積極的に仕事をしている反面、後ろはただついてくるだけで、前側の接地感こそ高いが、後ろ側の接地感は薄い。四輪でしっかり曲がっていく感じはなく、その辺りはやはり普通車というかTNGAには一歩及ばないのだなというのを感じてしまう。
ルークスではフロアの剛性こそそこまで高くはないが全体的に帳尻というかバランスが取れており、車全体で衝撃をいなしている感じがあった。ハンドリング面でも、カーブに対してシャシーの剛性ではなく、足回りの剛性やショックを活かして曲がっている感じがあり、安心感はかなり高い。
どちらが安心かではなく、このあたりは好みの問題なのかなと感じる。
加速感に感動はない
今回試乗したのはカスタムRSで、要はターボ付きということになる。なので加速感には期待をしていたが、必要充分という感じで、熟成されてきたKFエンジンといえど、加速感に何か感動があるというわけではない。
まずエンジンはいつものダイハツのエンジンで、低回転はそこそこ静かに、高回転は耳につく掃除機みたいなエンジン音が聞こえてくる。しかし、そのエンジン音はかなり抑えられており、ルーミーなどと比べてもかなり静かだ。ルーミーではエンジンルームと室内空間に何の隔壁もなかったようなかんじで、商用車みたいとまではさすがに言わないがなかなかうるさいエンジン音だったが、タントでは一枚壁が設けられたような感触。ライズで感じたようなパワーのドッカンな感じもなく、設計に余裕があるのを感じる。パワーの出方はジェントルで、NAモデルと変わらず違和感なく乗れるだろう。
CVTはアクセルを踏むと潔く回転数を上げるので、車内は必然的にうるさくはなるが、排気量の少ないエンジンで加速力を得るにはやはりこの方法が一番低コストで、簡単にできるのだろう。マイルドハイブリッドという選択肢もあるが、バッテリーの配置など、シートアレンジや利便性、重量増を考えるとCVTの改善はベストだと感じる。
ダイハツのDCVTに関しては自分もよくわかっていないが、簡単に説明するとCVTが2つあって、低速用と高速用に分かれているというものである。要は、小排気量にありがちな低速域の加速力の弱さを補い、かといってそれ用にローギアードにしてしまうと高速域の快適性が損なわれるので、低速用と高速用に二つのCVTを用意するというようなもの。2速ATの超進化版と捉えてもらうとわかりやすいかもしれない。
なのでエンジン自体に力の波はないが、強い加速力を必要とする際に、ATのキックダウンのような加速感の波がある。軽自動車なら、強い加速の時はエンジンフィールがどうとか、音や快適性がーというよりは、まずはストレスのない加速を優先したほうが、総合的によく走る車だと感じる人が多いと考えるので、個人的にこのセッティングは悪くないと感じる。ただ、どのグレードにもパドルシフトがないというのは少し寂しい。デリカミニやスペーシア、NBOXにはあるのでタントにもぜひ設定してほしい。軽自動車の実用車で回して楽しいエンジンは強いていうならNBOXくらいなので、エンジンフィールを楽しむというよりはエンジンブレーキをダイレクトにかけるためにもパドルシフトがあればなあと感じてしまう(Bレンジだとエンジンブレーキが弱い)。
ただ、低速域でのギクシャク感は気になる。0〜25km/hはまるでidcdかのごとくガクガクしてしまう。渋滞の時はなかなかストレスかもしれない。この速度域だと加速も一気にギュンっと出てしまう感じがあり、10km/hくらいからの加速はまるで滑り出すかのように、意図せず強い加速をしてしまうことが何度かあった。純ガソリンエンジン+CVTとなると、タントかNBOXだが、やはりホンダのCVTにはこのあたりのギクシャク感はなく、本当にスムーズに加速してくれる。やはりここはホンダの方が一枚上手だと感じる。
ブレーキも良く、カックンブレーキにはならない。アイドリングストップ時の再始動と、ブレーキホールドの相性で少しギクシャクするのは気になるが、軽自動車でありながらブレーキタッチはマツダのように踏めば踏むほど効くタイプで、個人的には好きなタイプ。
まとめ
タントの魅力はなんだろう。それはやはり室内の圧倒的な使い勝手ではないだろうか。もちろん走りだっていいが、やはりトヨタグループらしいのが、先述の走りの良さは、ありがたみが薄れてしまうものである。というのも、まとめてしまえば、タントの走りというのは、普通に加速し、強い加速は潔くストレスなく、ブレーキも普通に効くし、タッチも悪くない、曲がる時も素直に曲がるし、乗り心地も文句なく、満足いくレベル。全てが85点くらいで、ここが特にストレスだとか、ここが特にいいとか、そういう特筆すべきものは特になかった。このような走りはすごくトヨタグループらしいのだが、特筆すべきものがないということは、日常に普通に溶け込んでいってしまうということである。
となると、やはり圧倒的なシートアレンジや実用性というのが特徴になってくるだろう。例えば、運転席のスーパースライドシートやミラクルオープンドアなど、一人乗りでも役にたつ機能が色々あったり、メーターの表示やUIのわかりやすさは、やはり実用性を大事にしてきたダイハツならではだと感じる。
ただ、話しを戻すと、このような実用性は当たり前に感じている走りあってこその物で、ありがたみこそ薄いが、タントの走りの実力は確かに大きな武器になりうるものである。