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ホンダの良さが光る一台 ホンダWR-V 簡易試乗レビュー
今回は、いつもの試乗のようにがっつりではないが、新型車であるWR-Vに試乗することができたので、簡易レビューという名目でレビューしていこうと思う。
WR-Vといえばホンダの中のエントリーSUVというような位置付けで、質感や高級感のようなものはもちろん上のクラスの車のほうが良いが、SUVらしく気を遣わずにどこでも行けるクルマというような印象があった。
今回の試乗を通してもその印象に変化はなかったが、その理由について短時間試乗ではあったが少しだけ分析していこうと思う。
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内装は無骨でシンプル
内装は無骨だなというのが第一印象。ステアリングやレバー周りでひと世代前のものも見受けられるが、これで充分という人も全然いるかと思う。
まず一番に、このクルマ、最近はやりの電動パーキングではない。手引きのサイドブレーキで、引いた感じもヤリスのようなしっかり感もなく、どちらかというと安っぽい。この飾らない感じがイイととるのか安っぽい、頼りないととるのかは人それぞれだろう。(個人的には後者で、Z+だけでも電動だといいなとも感じてしまった。)
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ステアリングはヴェゼルのような最新のものではないが、デザインはなかなかカッコイイ。ホームボタンや戻るボタン、クルーズコントロールのボタンの配置も若干首をかしげたくなる気もするが、慣れの範疇で、トヨタのようにとっちらかった感じもない。
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エアコンも操作しやすく直感的である。例えば風量の表示がある側のレバーを上げ下げすれば風量が変わり、温度の表示があるほうのレバーを上げ下げすると温度が変わる。取説なんて見なくても、「これだろうな」と思ったレバーを操作すればいいのだ。外気導入と内気循環のボタンも左側に独立してそれぞれついているので、この時期は特にありがたい。
エントリーSUVといえど質感は高い。まあそこまで安いクルマでもないのだが、日本人の好みには合っている。センターのアームレストやシフトレバー、ステアリングには革がつかわれている。ただステアリングは若干ザラザラ感があり、すべすべもちッととはいかない。ただすべすべ系のステアリングは劣化しやすいというデメリットがあるので、SUVでガツガツ使うと考えたらかえってこのステアリングのほうが良いのかもしれない。
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手の触れる部分には傷つきやすい素材が使われていないのもいい。ただ質感を出すために、シフトレバー周りや助手席の部分など、手の触れない部分には積極的に使われており、質感を出そうとした努力を感じる。実際にシンプルながら質感は高いといえるだろう。それでいて質感一辺倒ではなく、しっかり収納も兼ね備えている。
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センターの部分が特に使いやすく、財布や携帯を置く場所もしっかり確保されている。アシとしてクルマを使うとなると、財布と携帯だけもって買い物に行くようなシチュエーションで、財布や携帯を置く場所がないと困る。ドリンクホルダーも横並びで、誰がどこを使うのかで喧嘩にならないのもいい。
USBはAタイプしかないのが残念だが、Aタイプでもあると無いとでは雲泥の差だ。
総合的に堅実で質実剛健といったような印象で、飾られた感じはないが、本来クルマってこれで十分以上だよね、と感じさせてくれるような内装だろう。
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走りにある確かなホンダ魂
このクルマに対する意見を見ていると、インド生産だから…とか安いクルマだから…というようなコメントが散見される。確かにそれは事実なのだが、そのように低くなった期待値をしっかりと覆してくるほどに、走りの質感は高い。今回は、ライズとの比較も交えながら、WR‐Vに潜むホンダ魂を見ていこうかとおもう。
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エンジンは普通
エンジンは直噴をやめ、走りというよりは燃費に振っているような印象もある。どちらかというとキャラの立たないエンジンという印象が強い。
エンジン自体は1.5Lの4気筒で、3気筒エンジンが主流となっているこのクラスのクルマにおいてはもはや珍しいともいえるかもしれない。
以前2代目のシエンタに乗った際、エンジンの力が不足しているというようなことを書いたような書いてないような記憶がある。実際シエンタも1.5Lの4気筒エンジンだが、2000回転から3000回転あたりの力が全くと言っていいほどなく、法定速度が60km/hを超えてくるような道路だと、かなりうなるエンジンだった。
それと比べるとWR-Vのエンジンはクセがなく、乗りやすい。特段速くもなく遅くもなく、普通という印象にとどまっている。低回転から力がみなぎるわけでもないが不足もなく、中回転も不足もなく、ホンダのエンジンとは言えど高回転で透き通るような気持ちよさもない。必要十分な加速力をそなえており、扱いやすいエンジンだと感じる。音も特別刺激はなく、2000回転くらいまではそこまで聞こえず、2500回転あたりから、加速感に伴ってエンジンも多少うなる感じ。敢えてなのか高回転では湿り気のあるようなもたっとした音だ。最近のホンダ車の特徴として、ゆったりドライブを楽しむようなものが多いので、WR-Vにもそれがしっかり表れている。
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見切りはあまりよくない
正直見切りはあまりよくない。ボンネットは水平で、ぱっと見見やすいように感じるが、先端の感覚が謎に見づらく、最初は少々怖い。
ただヤリスクロスと同じような感覚で普段の運転はできるので、狭い道だけは気をつける必要があるという程度。ホンダの普通車はこのような車が多く、特にフィットは見晴らしこそいいが、見切りはよくない。特にフィットは前方が垂れ下がるようなワンモーションなデザインになっているので、前端がどこにあるのか分かりにくい。左前も掴みづらく、見晴らしと見切りは違うのだということをわからされる。
よくよく考えたらヴェゼルとサイズは変わらず、コンパクトSUVに見えるがしっかり3ナンバーサイズだ。となれば多少運転しづらいと感じるのは当然なのかもしれない。
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走りはバランスが取れている
ハイブリッドグレードにありがちなこと。バッテリーという重量物が新たに積まれているおかげで、ガソリンモデルと比べると走りのバランスが悪くなって要ることがよくある。元からハイブリッド専用車のプリウスなどでは起きづらい現象ではあるが、重量バランスというのはそれくらい走りにおいて重要になってくるのである。
日本だと安くするためにガソリンモデルしかないWRVだが、やはり他に漏れることのないホンダらしい走りと、ハイブリッドではできないようなバランスのいい走りをしている。
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まず、ボディはホンダらしいガッチリ感が出ている。ホンダの走りといえば、基礎をガッチリさせ、車において大切な、走る、曲がる、止まるの基本性能をしっかりさせている。それはフロアだけではなく全体的にバランスをとって程よくガッチリさせたボディ、トルク特性が素直で、低回転はトルク重視に走りやすく、かといって高回転でも力を発揮させるエンジン。車としての走りの基本の部分をしっかり押さえているな、というのがホンダの車の印象だ。それはもちろんNboxのようなエントリー車種からフリード、フィット、そしてこのWRVに至るまで同じ印象を受けている。
それでいて、WRVという車、ガソリン車で無駄を省いた結果、「本来車ってこういうものだよね」というような作りがなされている。というか、車として的を得たつくりとなっている。ホンダの車というのがそもそもそういう作りを意識しているなと感じるのだが、WRVという車、かなり乗り心地のバランスが取れている。前と後ろで突き上げの度合いが変わらず、前と後ろで同じような揺れかたをしてくれる。
フィットでは後ろの剛性の低さが走りでの足枷になっており、前ばかりが仕事をしており、後ろはただついてくるだけというような感じが強かった。WRVでは、前が曲がるという力や、路面から突き上げという力を受ける。その受けた力を、車全体にうまく伝えて、前だけではなく、後ろでも仕事させて、車全体で持って乗り心地を出しているような感触。
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まとめ
フィットやヴェゼル、WRV、フリードとホンダはこのクラスの車を4車種もつくっている。その中で、代表格はフィット、高級派はヴェゼル、お手頃なWRV、人がたくさん乗るのはフリードとしっかりキャラ分けされているのだが、その中でヴェゼルに乗っていない現段階で言うと、WRVが一番ホンダのBセグメントの中でも一番できがいいのではと感じてしまった。インド生産だとかそういう話でこの車をぶった斬るのは少々安直すぎると感じるほどに、実は出来のいい走りのいいホンダ車となっていた。これでZ +グレードだけでも電動パーキングやオートホールドが付いていれば、本当に素晴らしい車になるのだろうなと感じてしまうが、それはWRVの本質からずれてしまうのがなんとも…
今回は簡易レビューという形で新型車に少しだけ乗ることができたのでレビューしてきた。あまり内容の濃いものにはならなかったが、WRVの車としての本質の良さが伝われば何よりである。
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