家族で愛着湧くゆったりファミリーカー 日産 C27セレナ e-POWER 試乗レビュー
今回は、C27セレナのe-POWERを借りることができたので、レビューしていこうと思う。
C27セレナは少し前にガソリンモデルを借りてレビューしたが、広さを感じさせてくれる内装と優しい乗り味で、だれでも運転しやすく、かなり親しみやすいクルマだった。
そちらのe-POWER、つまりはハイブリッドのモデルということで、かなり期待できる。e-POWERといえば、EVのような乗り味やスムーズさ、加速の良さが魅力となっている。
内装は角がない
内装は前回のガソリンモデルとほとんど変化ない。変わったといえばスタートボタンの色と電子シフトくらいで、新型と比べると特にだが先進性はあまりないように見受けられる。
新型といえば大きなセンターディスプレイと、凹凸のないエアコンパネルやボタンシフトがかなり印象的で、ほとんどが面のみで構成されたシンプルな内装になっている。
しかし旧型となったC27セレナでは、かなり丸を多用した、悪くいえば少しごちゃっとした内装となっている。
その分の親しみやすさやおおらかさの演出にはなっており、実際馴染みやすさや使いやすさは旧型の圧倒である。
メーターはかなり横に長く、センターメーターだが、座面を低くするとステアリングに隠れて全く見えない。座面を低くするとメーターが見えないのはプリウスに次いで2台目だが、こちらはミニバンで、この設計にもちゃんと理由がある。というのも、着座位置を上げるとメーターも見やすくなり、尚且つ視界が格段によくなるのだ。
セレナといえばAピラーのところのガラスがかなり下まで来ており、もはや違和感のレベルまで三角窓が大きくなっているのがひとつの魅力だが、そこも着座位置を上げるとかなり効果を発揮する。つまりこの車はある程度着座位置を上げて運転する車なのである。
話が逸れたが、メーターはかなり見やすく、表示できる項目もかなり多い。ただ地図表示などは当たり前だができないので、そうなるとやはり新型の先進性には一目置くものがある。十分ではあるがそれ以上ではないといった感じか。ただ横にかなり長いので、ゆったりさの演出には一役買っている。
もうひとつ大きな特徴はこの電子シフトだろう。これでも十分先進的で、なおかつリーフのようなおはじき形でもなく、相応に操作しやすい。
このセレナのもうひとつの特徴は、収納の多さ、わかりやすさだろう。スタートボタンのところにも収納、助手席には上中下と3つも収納が存在する。新型も数は同じだが、やはりこの辺りのわかりやすさは先代型に一歩譲る。
おそらくこの使いやすさや親しみやすさの差は、ボタン配置も関係していそう。例えばハザードスイッチ。新型ではなぜか押しやすい中央にドーンと存在するのはオーディオのスイッチで、ハザードは隅の方に追いやられてしまっている。旧型では中央に配置されており、他のカメラボタンやマナーモードのスイッチなどとボタンの面積が一緒なので使いやすいとはいえないが、新型よりは圧倒的に使いやすい。シフトレバーも慣れればブラインドで操作できる旧型に対し、新型は前から目を逸らし、シフトボタンの方を見ないと、どのボタンをさわればどこに入るのかが若干分かりづらい。
走りはゆったりおおらか
走りはガソリンと同じくゆったりおおらかだ。そこでガソリンより優っている点、劣っている点は確かにあった。
e-POWERは革新的
やはりミニバンという性質上、性能面でも経済面でも、e-POWERというのは革新的だろう。ミニバンでハイブリッドといえばトヨタのTHS-Ⅱやホンダのe:HEVもある。クラスは違うがホンダのidcdもある。
idcdはミニバンとしてあるまじき渋滞時のギクシャク感や、ガソリン車ライクゆえの滑らかさのなさが問題点としてあった。長距離を走るなら特にガソリンモデルを推したいというのが両方のっての結論となった。
THS-Ⅱも安定感こそあるが、やはりエンジンが駆動に介入するという点で、滑らかさという点でe-POWERには一歩譲る。
それだけe-POWERというパワトレが、自動車のハイブリッド界隈にとって革新的なものだったということがわかる。トヨタがエンジンとモーターをギアで制御し、小排気量エンジンの粗雑さを極力抑えるために複雑な制御で確立させてきたハイブリッドとしての滑らかな走りや燃費性能を、「エンジンは発電に徹してモーターで走らせる」というとんでもなく単純な方法で打ち破りにきたということである。
実際に先述の通り、トヨタのハイブリッドと違ってエンジンが走行に介入しないので、走り心地はモーターそのもので、車格や排気量を忘れさせるようなものであることは確かである。違うのは音だけ。エンジンが発電のためにかかると、一気にうるさくなってしまう。前の方から常にべーーーという無意識な、3気筒丸出しのエンジン音が常に聞こえてくる。しかも街乗り領域でも、エンジンがかかっている割合はなかなかに多く、モーターのみで走れる領域は思ったより少ない。この辺りは新型になって改善されているので、この型独自の課題点だろう。
また、やはり登り坂を長く登るような場面では、新型に一歩譲る。今回は新旧乗り比べもしたのだが、やはりよっこらしょ感が否めず、新型ならエンジンが低回転で回る程度の充電で済むような登坂路でも、どうしても回転数がどんどん上がってしまう。それでも早めに回転数を上げることで、電欠は避けるようになっているようで、先代型でも思っていたより問題はないなという感じ。
ワンペダルドライブは停止まで行けてしまう。これは、新型と比べた時の先代型の大きな大きなアドバンテージだろう。実際、ほとんど街中でも山道でも高速でもブレーキを踏む事はなかった。個人的にはサクラや新しいセレナ、ノートなどでクリープするタイプのワンペダルドライブの方に先にのり、タイムズ等で借りて慣れていたので、停止までブレーキを踏まないのは違和感かと感じたが、全くそんな事はなく、スムーズに止めることができる。新型と違い先代型のセレナはそもそも回生協調ブレーキではないため、ワンペダルドライブでないと大きく効率を欠いてしまうのだが、実際使っていてストレスに感じるものではなかった。
ステアリングは「軽い」
ステアリングはかなり軽い。それは新型もなのだが、どっちにしろ運転のしやすさを求めてかかなりステアリングは軽い。
ステアリングが軽いこと自体は運転がしやすいので悪くはないのだが、あまりにもスカスカすぎる。何も感じ取れない。それに回す量もそこそこ多いので、ただ曲がるために機械的にハンドルを切っている感が否めない。てこの原理で、回す量を増やした方が、ステアリングが軽くなるのはわかるのだが、結局いっぱい回さなければいけないということで、仕事量は変わらない。むしろ、小回りしなければいけないような状況で、ステアリングをいっぱい回しながら曲がるというのはなかなか厳しい。
乗り心地は「いなし」
ミニバンという性質上、ステアリングのユルさは急動作を避けるセッティングともいえる。実際、上の画像は新型のものだが、セレナは、先代でも「車酔いしにくい車」だと感じた。後ろの席は特に快適で、シャシーが弱いことが、逆に「いなし」になっているような感触がある。非常に日産車らしく、ガソリンでもそうなのだが安楽な乗り心地で、それにe-POWERの走りの滑らかさが加わる。重量が軽いので、ガソリンモデルの方が、従来の車らしく、バランスが取れていて扱いやすいのだが、やはりe-POWERの滑らかさという強みがあまりにも強すぎる。
まとめ
e-POWERというパワトレは、セレナという車の商品力をかなり上げたのだなとわからされる。ガソリンモデルにはない「滑らかでEVのような乗り味」という新しい武器を、一回2、3分のエネルギー補給で長く生かすことができる。
余談だが、この型のセレナ、航続距離は1000kmにもなることがあるらしい。タンクの容量は55Lで、新型より3L多いだけだが、航続距離の精度が新型になって上がったのか、それとも新型がよりマージンをもつようになったのかはわからないが、それだけ長い距離を短いエネルギー補給で走れるというのは魅力になり得る。ガソリンモデルだとどうしても航続距離は落ちてしまうし、BEVだとどうしてもハイブリッド車の航続距離には勝てない。かといってBEVが劣っているのかというとまた違って、BEVにセレナのe-POWERのようなエンジン音の違和感は存在しない。
それに親しみやすい家族に優しい内装と走りが加わるということで、ミニバンというジャンルにおいては鬼に金棒というわけである。ただ、やさしさに加えてe-POWER専用のエンジンと、先進性、酔いにくく乗り心地のいい足回りを持たせてきた新型も、またいい仕事をしたといえる。
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