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「別れる」を「離れる」と勘違いしている人の誤算

恋人と別れたい、と話すのを聞いていると、男女関係なく「別れる」ことを「一時的に離れる」のように考えている人が一定数いる。

「今は無理だから別れたい。で、”そのうち機会があればまた”付き合いたい」
みたいな感じ。そんな言い方をするから首をひねる。

「また落ち着いたら向き合いたいとは思うんだけど」
「今はこれ以上考えたくなくて。とりあえず別れたいんですよね」
「今は別れるのがいいのかなって」

……。

”とりあえず”とか”今は”とか、それ、全部あなたの事情だよね?
相手の気持ちは聞いたの? 話し合ったの?
別れるって関係が終わるんだけど、本当にそれでいいの?
後悔しないの?

口にしないがそんなことを考えながら、

「よりを戻す可能性があると思っている相手と、いま別れるの?」

そう尋ねる。

たいていは言葉に詰まるか困惑した顔をするか、人によっては白けた表情で私を見返す。
「わからないのかなぁ」とでも言いたげな様子を見ると、こういう人にとって「別れる」っていうのはどこまでも自分の都合なのだなと思う。

他人との関係を軽く考える人は、誰と付き合ってもたいていこんな別れ方をしてその後復縁はできない。
さっき書いた、小馬鹿にしたような顔で私を見た女性も、それからしばらくして元彼に言い寄ったがあっさり振られ、それから執着してつきまとい、最終的に”新しい彼女”の登場で幕引きとなった。

現実はこんなものだ。

当たり前だろう、「今は無理。でも未来はわからない」みたいな感覚で別れを切り出した人間を、相手が信用するはずがない。

どうしてそんな自分を想像できないのか、(当人は反対するだろうが)気分次第で別れを決めることの意味を、考えたほうがいいだろうなぁと思う。

男性でもいるんだよ、「今は仕事が忙しいから」とか理由をつけて別れるけど事情を覗くと決してそんな事実はなく、要は別れる理由を仕事にして、実際は疲れたとかひとりになりたいみたいな気持ちでそのときは終わり、その後”またその気になって”、元カノに「久しぶりに会おうよ」とLINEを送る。

女性のほうは、「忙しくても構わない」「私は別れたくない」「きちんと話し合いたい」と言ったにも関わらずすべてを拒否して去っていった男のことなど、とうの昔に忘れていて今は別の男性といい雰囲気で、元彼からのLINEなど鬱陶しいとしか思わず、

「ねー香さん見て、○○からこんなLINEきたよ~」

と”報告”してくる。

もう一回言うが、現実はこんなものだ。

「別れる」は、関係を断つことでしょ。
恋愛関係をやめるってことでしょ。
その覚悟を持たずに安易に別れ話を持ち出す人間が、その後”また”同じ相手と幸せな恋愛ができるなど、ただの勘違いに過ぎないのだ。

見ていて不思議なのが、こういう人って元恋人につれない態度を取られたら怒るんだよね、「返事くらいくれたっていいのに」「会うくらい構わないだろうに」みたいに、何故か

「昔と同じように”気安い”関係が続いている」

と思い込んでいるところ。

相手はまだ自分に気があるだろう。
未練が残っているのじゃないかな、あんなにこっちのことが好きだったし。
そんなにすぐ忘れられないよね。
こっちから声をかけてあげたら喜んで迎えてくれるよね。

透けて見えるのがこんな甘え、いや甘えじゃない、”なめた考え”で、相手は自分の都合よく存在するべき、と無意識に見ているんだよね。

適当にしていい相手だから、気分次第で別れようと言える。
根本はこれなんだろうなと思う。

いわゆるケンカ別れをしてはまたくっつく、を繰り返すカップルも同じだけど、相手を自分より下に見る(当人に言うと100%否定される)から、その場の感情だけで縁を切ることができるんだよ。

本当に好きなら、「別れる」なんて本当に愛情がなくなったときじゃないと出てこないよ。

関係が終わるのが自分にとってどんな意味があるのか、自分はどうなるのか、その覚悟を持っていれば、”そのうちまたその気になれば付き合う”みたいな考えで別れを切り出すことはない。

長年うまくいっているカップルを見ていると、この”覚悟”の意味がわかる。

「別れる」は「離れる」ではない、「終わる」ことなのだ。
その後また恋愛関係になるなんて曖昧で身勝手な願望など、入り込む隙間はない。
”その後”はない。
別れた瞬間から、”ふたりの未来”は消えるのだ。
それがわかっているから、今のつながりを大切にする。
「別れが来ないように」。その瞬間を迎えないように。
だから関係は安定する。
ふたりが等しく「続けていく」ことを前提にしているので、優しさや思いやりは当たり前にあるし、お互いの気持を尊重した付き合い方ができる。

駆け引きや試し行為などしない。
それは相手に別れを考えさせることで、「終わる」可能性があるからだ。
ひどい依存や束縛もしない。
ふたりの間には正しい境界線があり、リラックスした空気が流れている。

こういうカップルから話を聞いていると、相手を褒める場面が多いことに気がつく。
「こういうことをしてくれる」
「いつもこれを気遣ってくれる」
「ありがとう」
ちゃんと見ているのだ、相手の姿を。
それを人前で口にできる素直さは、相手を好きな自分に何の違和感も持っていないとわかる。
冗談でも一方的に「別れよう」なんて言わないだろうね。

交際を、自分の世界でしか見ていない人が簡単に別れを考える。
付き合っているのは”自分の都合”であり、不具合があればまた”自分の都合”で終わらせようとする。
そこに相手はいない。
「別れようと言われたら受け入れるのが筋じゃない?」
とかびっくりするようなセリフを吐く男性を見たことがあるが、付き合う女性への依存がひどく毎回短命で交際は終わっていて、愛情の押しつけがひどいと感じた人だった。
押し付けるから、自分が引きたくなったときもそれを強制し、元カノにボロクソに言われる終わりばかり迎える。
他人との関係を、恋愛を、”甘く見ている”と思われても仕方ない。
その軽さが、幸せを遠ざけるのだ。


いくつになっても、人とのつながりを大事にできない人はいる。
孤立する自分に気がついて焦っても、自分の世界しか見ていないから安易に相手を傷つけて嫌われることを繰り返す。
「別れる」を「今は離れる」程度に考える人には、他罰的という特徴がある。
自分の選択に無責任で、元恋人の気持ちなど考えない。意に添わない姿を見ると「裏切られた」とか言い出す。
それは全部自分の問題であって、相手の選択はコントロールできないのだ。

関係を甘く見る。
恋愛を軽く考える。

その結果、「誰ともうまくいかない自分」だけが残る現実を、想像してみるといいのかもね。


お付き合いは、「続けていく前提」を持ってこそ安らげるんじゃないの、という話。

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