ノアの箱舟とリスク
ノアの箱舟(方舟)
「ノアの箱舟」の話は、旧約聖書の創世記6章から9章に記載されており、非常に有名です。敬虔なノアが神から指示された通り箱舟を建造し、家族と動物たちを乗せ、神が起こすとされた大洪水から生き延びることに成功したという内容です。
この逸話によれば、最終的にはノア本人、彼の妻、3人の息子とそれぞれの嫁、そして全ての動物がつがいで船に乗り込みました。箱舟は、現在のメートル法で言うと「長さ:133.5m、幅:22.2m、高さ:13.3m」の巨大なものであり、「長:幅:高=30:5:3」の比率が使用されたとのこと。この比率は安定性が確保されるためとされています。この箱舟はいとすぎの木で造られ、防水のために隙間にタール(木のやに)が塗られたと伝えられています。
雨は40日と40夜降り続き、大洪水となり150日に及ぶ壊滅的なもので、多くの人々や町が滅びたとされています。しかし、ノアと彼の家族は箱舟によって生き延び、洪水が収まった後には神に感謝の気持ちを捧げるための祭壇を建て、感謝をささげました。神は再びこのような洪水を起こさないとの約束として、虹を天にかけられたとされています。
この物語は神と罪と信仰に焦点を置いていますが、それとは別に、人間や家族、生きる意義について深く考えさせられる内容です。
リスク管理の観点から見ると、以下の点に注目できます:
船は沈没の恐れがある
箱舟が大きくて安定していることが重要です。これは、縦横高さは神から授けられた知恵によるものです。この比率は安定性があり、また松の木と松脂の使用により、浸水を防ぐ工夫がなされました。
現代は船以外に多くの乗り物があります。リスクを考え、危険に晒されても回避できる乗り物にすることが求められます。
食べ物が不足する恐れがある
箱舟の中で長期間生き延びるためには、適切な食料の確保が必要です。人間だけでなく、動物たちについても、適切な食糧確保の計画が立てられたと考えられます。
私たちは災害時に食べ物が不足することを今までの大地震から学んでいます。多くの人は人間のことしか考えませんが(さらに言うと、危険に際して人は家族のことしか考えませんが)、動物(今でいえば人の口に入る動物)のことも考えなければなりません。
話が小さくなりますが、大地震発生時の動物園のことが頭に浮かびました。獰猛な動物が如何に逃げないようにするか、餌はどうするのかなど対策が必要です。人の命は買えないが、動物はまた買えばよいでよいでしょうか。
孤独で精神的に不安定になる恐れがある
人間は孤独になることで精神的な健康に影響を受けることがあります。ノアとその家族は一緒にいたことで、相互の支え合いと協力が可能になり、生き延びる力を高めたと言えると思います。また、動物の世話で暇な時間がなかったとも考えられます。
→災害時の助け合いは家族はもちろんのこと、近隣の人、困っている人を助け励まし合うことの必要性があることが分ります。さらに、耐え忍ぶ間に考える時間をなくし、忙しく生きる過ごし方を示唆しています。
これらのリスク管理の要素は、私たちが日常生活やビジネスにおいても学び取るべき重要な教訓です。ノアの箱舟の物語は、我々に生きるために何が必要か、危機を乗り越えるための知恵と協力の大切さを教えてくれています。聖書はハザード(危険事象)が発生したあとのことも考え、如何に事前に対処すればよいかを説いているとも読み取れます。