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はじめての機能安全(その3)


3. 機能安全に関連する規格と規制

安全に関係する規格や規制には、以下のようなものがあります。機能安全規格でないものも含まれますが、製品の安全性、信頼性へ規格と規制としての観点から紹介します。

IEC 61508

機能安全に関する国際規格で、人命と財産と環境の安全に関わる多くの産業分野で使用されている機能安全の基本的な規格です。この規格は、製品の電気・電子システムに係るプロセス、ハードウェア、ソフトウェア、サービスなどの開発や運用における機能安全の基本原則を提供しています。具体的には、機能安全に関連する要件分析、ハザード分析、リスク評価、安全性設計、実装、検証、保守などのプロセスを定義し、これらを遵守することで機能安全を確保することができます。

ISO 26262

自動車産業向けの機能安全規格であり、IEC 61508をベースにしており、自動車やトラック・バス、オートバイの機能安全性に特化した要件を提供しています。この規格は、車両の電気・電子システムの設計、製造、保守、廃棄における機能安全性に関する要件を定義し、自動車産業における製品の機能安全性を向上することを目的としています。具体的には、要求事項の定義、ハザード分析、安全機能の設計、実装、検証、評価、保守、改善などのプロセスに関するガイドラインを提供します。また、ISO 26262は、製品ライフサイクル全体にわたって、機能安全に関するプロセスの管理と具体的な文書化を要求することにより、自動車の機能安全の確保を目指しています。

IEC 62061

産業用機械に関する機能安全規格であり、IEC 61508をベースにしています。この規格は、産業用機械に特化した機能安全要件を提供し、設計、製造、保守、廃棄における機能安全性に関する要件を定義しています。目的は、産業用機械の機能安全性を確保することです。この規格には、要求事項の定義、ハザード分析、安全性機能の設計、実装、検証、評価、保守、改善などのプロセスに関するガイドラインが含まれています。また、IEC 62061は、製品ライフサイクル全体にわたって、機能安全性に関するプロセスの管理と文書化を要求することにより、産業用機械の機能安全性の確保を目指しています。

ISO 13849

機能安全に関する国際規格の1つであり、安全制御システムの設計・評価に関する要求事項を定めています。この規格の目的は、製品の設計や開発、評価、保守において、リスクアセスメントを基に安全性を確保することです。要求事項としては、製品の安全性を定量化するためのPL(Performance Level)の設定や、安全制御機能の設計に必要な要求事項が含まれます。製品の安全性を確保するためのプロセスとして、システムの構成・要件定義、設計、開発、評価、検証、保守などが含まれます。また、リスクアセスメントや設計の際に参考にするための標準も規定されています。この規格は、機械やロボット、自動車、エレベーター、工作機械、医療機器などの安全制御システムに適用されます。PLの設定によって、設計される安全制御システムの安全性が決定され、それに応じた安全制御機能の設計が必要となります。

EN 50128

鉄道システムに関する欧州規格であり、IEC 61508をベースにしています。この規格は、鉄道システムのライフサイクル全体にわたって、機能安全性の確保を要求し、要求事項の定義、ハザード分析、安全機能の設計、実装、検証、評価、保守、改善などのプロセスに関するガイドラインを提供します。さらに、EN 50128は、鉄道システム内の各機能やサブシステムの機能安全性に対する要件も定義しており、システム全体での機能安全の確保を目指しています。また、鉄道システムの開発に関わる全てのステークホルダーに対して、責任と役割を明確にすることも目的の一つです。この規格により、鉄道システムの開発者、製造業者、運用者、保守業者などが、それぞれの役割と責任を理解し、協力して鉄道システムの機能安全性を確保することが期待されます。

IEC 61513

原子力施設の計装および制御システムに関する一般的な要件を定める国際標準規格であり、原子力施設の計装および制御システムに関する設計、開発、評価、運用、メンテナンス、修理、改善、および廃棄に関する要件を確立しています。この規格は、原子力施設の安全性を高めるために、計装および制御システムの信頼性を確保し、故障や事故のリスクを最小限に抑えることを目的としています。IEC 61513には、計装および制御システムに関する重要な要件が規定されており、これには信頼性、保守性、セキュリティ、および機能安全に関する要件が含まれます。また、異常事象への対応や、システムの障害を検知し診断するための要件も規定されています。IEC 61513は、原子炉の制御棒制御システム、原子炉温度制御システム、燃料管理システム、放射性物質の輸送管理システム、放射線監視システム、および放射性物質の検出システムなど、原子力施設内の様々な計装および制御システムに適用されます。

FAA Order 8110.49

航空機のコンピュータで使用されるソフトウェアを承認するための規制で、米国連邦航空局(FAA)が発行しています。この規制は、航空機の安全性と信頼性の確保を目的としています。そして、設計データが適切に文書化、承認、および実装されることを要求しています。 要件には、データの提出、レビュー、承認、および設計変更の承認を含む設計コンプライアンスの評価プロセスが含まれます。この規制は、航空機、エンジン、プロペラ、ナビゲーションシステム、およびその他の航空関連製品を含む、ソフトウェアを搭載する製品すべてに適用されます。

FDA 21 CFR 820

アメリカ食品医薬品局(FDA)が発行する規制で、医療機器の設計、製造、販売、使用における安全性の要件を定めています。この規制は、医療機器が安全で有効な動作をすることを確保することを目的としています。また、この規制には、医療機器の安全性を評価するための方法や、品質管理システムの運用要件が含まれています。医療機器は、患者の健康と生命に関わるため、FDA 21 CFR 820に準拠することが必要です。この規制に準拠することが必要な医療機器には、人口心臓弁や人工関節などがあります。米国に医療機器を輸出する企業はこの規制を遵守する必要があります。

まとめ

これらの規格や規制は、それぞれの産業分野において安全の確保を目的としています。これらの要件を満たすことによって、製品やシステムの信頼性と安全性を向上させることができます。企業や開発者は、これらの規格や規制を遵守することで、製品やサービスの品質向上と市場競争力の強化を図ることができます。
規制と規格が関係する場合、通常は規制が優先されます。つまり、規制に定められた要件が規格に対して優先されます。ただし、規制自体が規格を参照している場合は、規格が規制に影響を与えることがあります。

機能安全規格に於いて鍵となる手法は、規格で要求されているハザード分析(リスク分析)とリスクの評価であることが分かります。このマガジンでもハザード分析については詳細に扱う予定です。

参考文献

  • IEC 61508:Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems (2010)

  •  ISO 26262:Road vehicles - Functional safety (2018)

  • IEC 62061:Safety of machinery - Functional safety of safety-related electrical, electronic and programmable electronic control systems (2005)

  • ISO 13849:Safety of machinery - Safety-related parts of control systems - General principles for design (2015)

  • EN 50128:Railway applications - Communication, signalling and processing systems - Software for railway control and protection systems (2011)

  • IEC 61513:Nuclear power plants - Instrumentation and control important to safety - General requirements for systems (2011)

  • FAA Order 8110.49: Software Approval Guidelines (Change 2)

  • FDA 21 CFR 820:Quality System Regulation for Medical Devices (2019)

コラム:ChatGPTとの対話3

問1:産業別に機能安全規格が制定された理由と、問2:電気電子制御システムに関する機能安全規格が複数あり将来1つに統合されるかどうかを聞いてみました。

問1

問2

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