日本の太平洋沖で起きる地震は西進するらしい
はじめに
南海トラフ巨大地震が注目を集めていますが、それに先立つ地震の可能性を指摘する学者がいます。本記事では、その方の予測について紹介します。
歴史が語る大地震の連鎖
太平洋プレートとフィリピン海プレートに関連する巨大地震の歴史を分析すると、過去9回のうち5回、地震が東から西へと発生する傾向が見られるそうです。
日本地質学会の公式サイトによると、平安時代の「日本三代実録」に記録された地震・津波・噴火の分析から、この「地震西進系列」が確認されています。
日本地質学会 - 平安時代の「日本三代実録」の地震・津波・噴火記録:地震西進系列の白眉 (geosociety.jp)
また、原子力規制委員会が公開している「日本地震周期表」によれば、マグニチュード7.5以上の巨大地震が東北日本から関東甲信越・西南日本を経て琉球・台湾へと、110~180年かけて西進する傾向があり、この地震系列が約120年周期で繰り返すとされています。
日本地震周期表
000288489.pdf (nra.go.jp)
ただし、この発表にある周期は厳密なものではなく、おおよその傾向を示すものです。
興味深いことに、この地震周期表では、東日本大震災後、関東・伊豆諸島での大地震(相模トラフで)が起きておらず、次に中部・南海トラフ地域で地震が発生する可能性が示唆されています。
一学者(日本地質学会の元会長殿)の仮説ではありますが、過去の巨大地震の震源が東から西へ移動しているという観察は注目に値します。
まとめ
上記の研究に基づけば、確率的には関東・伊豆諸島での大地震(ないかもしれません)、そしてその後に南海トラフ地震が発生すると予測できそうです。
最近の神奈川西部を震源とする地震が、関東・伊豆諸島に関して予測された地震ではないことを願うばかりです。
これから関東の太平洋沿岸から九州太平洋沿岸の地域では、いつ大地震が起きてもおかしくない状況です。日頃からの防災対策が不可欠だと思います。
追記
地震雲について
この学者の地震雲についての見解も興味深いです。ご興味ある方は読んでみてください。地震雲という「雲」はないということです。
日本地質学会 - 地震雲についての雑感 (geosociety.jp)
ただ、この雑感の気になる記述として、
「実際いくつかの地震の前に,それらの震源の近くで,地下からのラドン(気体の放射性元素)の放出が観測されている(例えば阪神大震災の前;安岡ほか, 1996[2]; 脇田, 1996[1]; 佐伯ほか, 1995[3]).ラドンは岩石中のトリウムやウランの放射壊変により発生するもので,平常時でも地下室の空気中には比較的多く含まれ,断層,地すべり,地割れなどが発生すると地表へ放出される」
放射性物質が原因で水蒸気が飽和して雲が生成される可能性があるが、これは地震に直結していないとしています。因果関係が明確でないため、科学者はこれを地震雲の原因としていないのです。
追記参考資料
[1]脇田 宏 (1996) ラドン観測と地震予知.保健物理,31, 215-222.
[2]安岡由美・志野木正樹 (1996) ガスモニタが捕らえた兵庫県南部地震の前兆.アイソトープニュース, 1996(4), 74-76.
[3]佐伯雄司・五十嵐丈二・佐野有司・高畑直人・済川 要・田阪茂樹・佐々木嘉三・高橋 誠 (1995) 1995年兵庫県南部地震前の西宮における地下水中ラドン濃度の変動.月刊地球,号外13, 194-198.