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ジャグリングの映像作品インタビュー「みきとT」さん#1

先日のブログで紹介させていただいたジャグリングの映像作品について、制作者の「みきとT」さんにインタビューさせていただきました。

今回の映像作品はtoyさんとみきやんさんの2名の合作となります。おふたりは現在、京都大道芸倶楽部ジャグリングドーナツに所属されている4回生になります。

今回は制作者のおふたりに作品に込めた想いや制作過程を語って頂きました。もし、映像を見たことがない方がいらっしゃればこちらをご覧ください。

e-Juggling Competition の反響に驚き

ー e-Juggling Competitionのエキシビジョン部門優勝おめでとうございました。今はどんなお気持ちでしょうか。

toyこんなに反響があるとは思わなかったので嬉しいです。大会や舞台の時に対面では褒められることは何度かありました。オンラインの大会方式だと、同じタイミングで一気にコメントが来るというのが新鮮で、驚きました。

みきやん:私はずっと緊張していました。まずはエントリーしている他の方の人の名前を見た時からずっと不安で緊張していました。

自分がパフォーマンスしているわけではないですが、私にとってはルーチンを人前に出すというのは初体験でした。動画を送り終えたのに、審査中にもずっとドキドキしていました

そして、ありがたいことに1位をいただきました。その時はあまりに嬉しくて泣いてしまいました。泣きながらすぐに toy君に電話かけました。
評価いただいたみなさんに感謝しています。


ーみきとTの名前の由来を教えていただけますか?
toy:
最初はソロでの応募を考えていたので別の名前でした。その後、2人で作ることになったので名前を考え始めました。

そこで思い浮かんだのが「みきとP」さんというクリエイターの名前です。これを由来にみきやんが「みき」で私が「T」、ふたりで「みきとT」になりました。

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ーおふたりの役割分担など教えていただけますか
toy
:私はパフォーマンスを行いました。その他にはアイデア作り、ストーリー作り、カット割り考える、アニメーション作成ですね。アニメーション作成には7割近くの時間をかけました。

みきやん:私は動画編集を担当しました。特に、音に合わせて映像を切り貼りしたり、色調補正や季節が変わっていくデザインを作ったりました。


好きなアーティストの影響を受けて

ー作品の特徴はイラストと映像効果ですよね。
 どうやってこのアイデアが生まれたのでしょうか?

toy:1年ちょっと前からジャグリングとアニメーションを組み合わせたいと思っていました。

そう思ったのは、僕の好きなアーティストのヨルシカさんに強い影響を受けています。今回の映像の曲もヨルシカさんのものをを使わせていただいています。

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ヨルシカさんの作品の中に、現実世界の中でアニメーションが動いているものがありました。2.5次元作品と呼ばれるものです。

彼女の作品にはストーリーがあります。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、1つの長い物語を何曲にも分けて作品として公開しています。右脳と左脳で楽しめるような作品で、考察を加える楽しさがあります。

ストーリーのある作品
私は昔から元々ストーリー性がある作品を作っていました。

例えば、初めて作ったルーチンは雨のルーチンでした。傘に見立てたポイを持っていて、雨が降るところからルーチンがスタートするような作品です。ジャグリングドーナツライブでは助手として頑張っている人の楽し気なルーチンでした。

でも、今まではただの "ストーリー性" のある作品でした。今回作りたかったのは "ストーリー"。 "詩的" ではなくて "詩" を作りたい、そんな想いでした。映画を見たような気持ちになってもらいたいです。

ー深いですね。ふたりで作品を作るのは難しかったですか
みきやん:難しかったです。今回の制作期間はコロナの影響もあって、全てオンラインでやり取りをしていました。なので、お互いの意思疎通で苦労しました。

具体的には、toy君の中にあるイメージを私の方で映像作品にしていきましたが、彼の思っているタイミングと私の好みのタイミングが微妙に違いました。そのあたりのやり取りが難しかったです。

toy:制作をしている人間として、つい細かいことまで言っちゃいました。擬音表現で伝えてもイメージする映像は違いますし、抽象的な事柄を伝えるのが大変だでした。うまく伝わらないときは、絵をカメラ越しに映しながら伝えるようにしていました。
あと、映像提出の直前まで通話しながら修正していましたね。

みきやん:そうなんです、書き出しが終わらず焦りました。PCが悲鳴をあげていて、私も限界に近かったです(笑)。


ー映像編集って大変ですよね
みきやん:そうですね…(笑)。toyくんのイラストがフィーチャーされがちですが、私も結構苦労しました。

特に映像の雰囲気を良くするために、全体の色調にこだわりました。この曲は夏の曲なので、さわやかなイメージにしたかったんです。

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モニターの色が書き出してしまうと変わってしまうことにも困りました。細かな微調整が必要になるんです。

ーその他にも苦労したことはありましたか?
みきやん:はい、例えばどの映像素材を使うかについていろいろ悩みました。背景に人が何人か通っていくようなものもありました。

作品を邪魔しない人は趣があったので、選ばれた素材の中からいくつか選択して映像に残しました。「子供が映っているのも良い」とお褒めのコメントをもらった時は嬉しかったですね。

逆に困ったのは、冬のエフェクトをかけているタイミングで半袖の人が通過したり、カメラの前を歩いているおじさん。この辺りはもちろん編集で消しました。


ー toyさんのイラスト綺麗でしたよね。普段から描かれているんですか
toy:
はい、パラパラ漫画などを描いていたのでなんとなくイラスト描きの感じは分かっていました。映像作品とも相性が良かったかもしれませんね。

例えば葉がひらひらと落ちていくときは重力の影響は受けますが、等速運動にはならないですよね。なので位置をあえてずらしていくというようなことはわりと簡単にできました。

ただ、私はもともと人を描くのが苦手でした。風景とかはよく描いていましたが、デッサンがあまり得意ではありません。そんな中、660枚近いイラストを全て自分の手で仕上げたのは初めてのことで大変でした


ーイラストはどうやって描かれたのですか
toy
撮影した動画を上からなぞるようにして描きました。ロトスコープと呼ばれる手法で、静止画にした動画の中の人の形や道具の形をなぞっていきます。

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さらに苦労したのは、イラストのタイミングと技のタイミングを合わせることです。通常であればペアで技をやって相手の人の動きをトレースすればタイミングが合います。しかし、今回はステイホームの必要があったので、自分でふたり分の技をやる、つまり2度撮影する必要がありました。

その2回撮影したふたりの技のタイミングが合うように、人や道具の位置を一コマずつ調整することが大変でした。


ジャグリングの技の流れを作るにあたってどのようなことを考えましたか?
toy:
難しい技を入れることと、軌道がきれいになる技を入れることです。

難しい技を入れたかったのは、今回のルーチンはいろんな層に楽しんでほしいという想いがあったからです。

イラストをすごいと感じる人
ロケーションがきれいだと思う人
歌詞を聞いてストーリーを考える人
ヨルシカを愛している人
ジャグリングの技術を楽しみたい人

映像を見て「イラストがいいね!」と思ってもらうだけだと僕のポイ心が許せず、難易度をどこかで稼ぎたいと思っていました。そのために新しい技も入れるようにしました。

あとは、編集されることを見据えて、何回やっても同じ軌道になる技を入れるようにしました。映像を編集でカットしてしまうと別撮りの映像と繋がらなくなってしまいます。なので、編集の必要性の高いところはポイを100周回して100周同じ軌道になる技だけを入れています。


ー少し逆再生のシーンもありましたね
toy
:逆再生の技は選択には小さなこだわりがあって、絶対に逆再生でしかできない技だけを逆再生にしています。ちょうちょ結びとかが分かりやすいと思います。逆再生ではないとポイはこんな動きをしないですよね。

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逆再生できる技の例を挙げさせてもらうと、例えば、3ボールのカスケードとかは逆再生をするとリバースカスケードになります。また、クリスタルボールを頭上から掌に落とすという動きも、逆再生の技をするのは難しいと思いますが、バランス力がめっちゃ高い人ならできてしまいます。そういう技は逆再生と相性が悪いと感じているので入れないようにしました。


ーさいごに、ポイとイラストは相性が良いように感じました。イラストと道具ごとの相性はどのように考えていますか。
toy:
ポイは1人でできるのでイラストとの相性は良いと思います。クラブのパッシングは2人じゃないとできないですもんね。

他の道具の場合、道具の軌道がずれるとアニメーションを毎フレーム描く必要がでてきてしまいます。その点、ポイは毎回同じところを通るので、繰り返し同じイラストを使うことができます

ただ、ハチリンの方が相性が良いと思います。ハチリンのような剛体は、紐よりも速度を直接調整しやすいのでロトスコープするときになぞりやすいように思います。不確定要素なく止まれるというのは剛体の強みですよね。


ーお話を聞かせていただき、ありがとうございました。続きは後半のインタビューで書かせていただきますね。
toy・みきやん:ありがとうございました!


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