「ハイブランドで試着するのが怖いです」
これ、結構お寄せいただくことが多いご相談です。
「怖い」というのは、”ハイブランドのショップに入って買わないで試着だけするなんて申し訳ない”とか”買わされてしまうのでは”、または”スタッフの人が不快に思うのでは”ということを総合しての表現だと理解しています。
結論から言いますと、「むしろ駅ビルブランドの方が怖いのに、よく行ってるんじゃない?」です。
確かに駅ビルブランドは生活圏の近くにあって値段もリーズナブル、お客さんも多くて入りやすいことは間違いない。よく試着も勧められますよね。
でも、試着室から出てくる前から「お似合いですぅ〜!」(見てねぇだろ)なんて言われたり「これ今すっごい売れてて私も持ってるんですけどぉ」(逆に欲しくなくなるわ)なんて声掛けされたりした経験はないでしょうか?いやあるはず。買わないと帰れなそうな雰囲気を出すこともあります。
別にスタッフさんを責めてるわけじゃありません。ちょっとイジってはいるけど。その日の売り上げがすべてだからしょうがないなとは思うし値段も買いやすいから迷わないで買ってよ!という気持ちも分かる。もちろんコミュ力も高くて知識もある素晴らしいスタッフの人もいますよ。
でも、やはり「売り優先・マニュアル接客」な人が多いのも事実だし、会社もそれを徹底させてる。華やかなファッションの世界に憧れて販売員になったけど全然思ってたんと違う…なんてことも多いみたいですけど、”試着をしたら買わないといけないような雰囲気になって、仕方なく買ってきた”なんて話もよく聞きます。圧に弱い日本人のポイントを突いた見事な立ち回り!なんて褒めてる場合じゃないですが、僕からしたらそっちの方がよっぽど怖い。
翻って、ハイブランドのスタッフさんは経験と知識をしっかり蓄えている方が多いし、なにより「高い物を売ること」「買う人の心理」をよく心得ています。
何十万というジャケットをサクッと買える人にはそういう方向けの接客、勇気を出して買おうという人には背中を押したり寄り添う接客が出来る。決して買わないからといって邪険にするようなことはしないし、むしろ次回は私を指名してくださいと名刺をくれて見送ってくれたりもする。
というのは、売ったらおしまい、買わない人はお客さんじゃない、ではなくて、関係を構築することを大切にしているからです。高額な物ほど信頼で売れるから。今後お客さまになるかも知れませんし、ブランドの看板も背負ってますから。
よく「家が売れれば何でも売れる」なんて言いますよね。家くらい決断とお金が必要なものを売れる手腕があれば何にでも応用できる、という意味ですが、それは洋服にもあると思っていて。
やはりハイブランドを売れる人は単にスキルが優れているだけでなく、人の機微に通じているし世の中のことを知っている。そういうブランドの販売員の人は毎朝新聞は全紙、週刊誌も網羅してどんなお客さまとの会話にも備えるそうです。だから、むしろ安心して店員さんに委ねてもいいと思う。
ちなみに僕も数十万単位の洋服を売っていた時、お客さまの嗜好や心理の機微を読み取る訓練を自然としていて、それが今の仕事にも活きているなと思います。
さて冒頭で「買わないのに…」という遠慮で入れない人が多いという例を挙げましたが、これは簡単な解決法があります。
「良いのがあったら買うよ」という気持ちでお金を持っていくこと。
逆説的ですが、買えるお金を持ってれば自分次第で「お客さま」になれるわけですから、遠慮する必要はなくなるでしょう?こちらがオープンマインドで居ればスタッフさんも実力を発揮できて、楽しいファッション体験になること間違いなしです。
本当に気に入ったら買えばいいし、ちょっと検討しますでもいい。良いものや良い接客を体感してみて、それから考えるという経験が大事だと思います。
高級レストランやホテルを体感するためには実費が必要ですが、ファッションは「試着」というステップがあるので実費は掛かりません。そんないい制度があるのに怖がったり面倒くさがったりする人が居ることは、本当に勿体ないと感じてしまいますね。
ファストファッションにもハイブランドにも、それぞれ役割があります。組み合わせの妙もある。その時の自分に合ったファッションを選ぶ時、すべてから横断的に選べたらベストなものが見つかると思いませんか?
良いものを着てみて、これは買えないけど他で似たデザインで買えそうなのがあった!という風に、色々と比較した上でチョイス出来ることが1番なんです。ちょっとの勇気を持って、堂々と入店してみてください。よりファッションが楽しくなるはずです。
ちなみに、今日は新たにオープンしたハイブランドのショップに行ってきましたが、スタッフさんに「今日は平日の昼間ですがお仕事は大丈夫なんですか?昼休みで抜けていらしたんですか?」と声掛けされました。久々に補導されてる気分になりましたが、きっとそういうお客さまが多かったのでしょう。フリーランスはつらいよ。
今回のnoteはこちらのマガジンに収録していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
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