ドキュメント『ヤマフル』 試験的醸造再開 その全仕事(4)
四・その器具 2003.04.30 by 猛牛
■修復され、戦線復帰した「兜釜式蒸留器」。
正調粕取焼酎の蒸留に多く使われたのが、これからご紹介する「兜釜式蒸留器」である。
北部九州では、多くの蔵元さんの倉庫の隅に、積み上げられ埃を被っているのをよく目にする。もうその胴体に蒸気を通すことなど決して無いんやろうな・・・と思いながら眺めていたものだ。
しかし、鳴滝酒造さんの蒸留器は、再度ご奉公の日を迎えることができた。古舘さんは蔵に残っていた器具を修復、または部分的に新造して蒸留に備えたのである。
(※以降、太文部分は古舘氏のコメントを引用)
■蒸留に使われる器具たち
■まぜ板
この板の上で、熟成したもろみと籾殻を混ぜる。
「器具に関して、社長や古い社員さんに聞いてみたところ『捨てとらんけん、どっかあるやろ』との事。
早速探し回ったところ、いろんな所に散らばって、とりあえずあった。まぜ台は隙間を埋めて社員で補修した」
■蒸留器土台
兜釜式蒸留機の原理は簡単に言うと、豚まんやシューマイを蒸す竹製のセイロと同じ原理である。セイロに入れたもろみへ下から蒸気を送り込み、アルコール分を採る。
この土台はそのセイロを重ねる最下部。中央の穴から蒸気が上へと昇る。
「土台は木製で腐っていたので、それを見本として鉄工所さんで新たに作成してもらいました」
■蒸篭(せいろ)
この中に、もろみを入れて重ねる。
「せいろと兜釜は熱湯で磨き上げた。冷却器は、数日間お湯と蒸気を通し続けて、過去の汚れを洗い流した」
■蒸篭(せいろ)のアップ↑
アルミ製というセイロの拡大写真。 なかなか見ることが出来ない蒸篭の細かいディテールが解る貴重な画像である。
■兜釜上部
もろみから立ち昇った蒸気を受け、それを冷やし、留液として冷却器へと送り込む「兜釜」。 この上部に水を張り、アルコール分を含んだ蒸気を冷やす。
■兜釜の全景
右手前に見える突起が、冷却水を供給するホースを繋ぐ口。 内側のくぼみに水が溜まり、溢れた分は外枠とくぼみの間にこぼれて外に排出される構造のようである。
■兜釜の内部
蒸篭から昇った蒸気が、兜釜の内部に付着して冷やされ、液体へと戻る。 留液は角度が付いた内壁を伝って流れ落ち、中央部に-○という風に見える樋で受けて、外部に繋がれた冷却器へと落としていく。
■冷却器
内部は蛇管が入って、くるくる回って落ちる内に、冷却水で冷やされる。手前の上に飛び出た口が、兜釜から流れ落ちる留液、右手の穴と突起が冷却水、それぞれの取り入れ口。
■組み立てられた、その勇姿!
実際にこれらの器具を組み立てると、下記の如き姿態と相成る。
蒸篭は全部で4段。長い間、倉庫でひっそりと息を潜めていた兜釜式蒸留器の勇姿だ。古舘氏の情熱によって、ついに甦ったのである!
(5)へ続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?