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正調粕取焼酎 『ヤマフル』蒸留に挑む(2)

本稿は2005年4月にサイト『九州焼酎探検隊』で公開したコンテンツの再構成版です。
左:古舘正典社長 右:カネさん

2005.04.11  by 猛牛


■待ちに待った瞬間・・・蒸留、始まる!

蒸籠のセットが終わって、ついにボイラーから蒸気が基部に送り込まれ始めた。当然ではあるが、蒸籠の下の段から徐々に熱くなってくる。もろみと混ざった籾殻の間を蒸気が駆け抜けていく。

木桶などで行われていた昔は、酒粕を蒸籠と蒸籠のつなぎ目に塗り込んで、アルコールを含んだ蒸気の漏れを防いだという。

現代では蒸籠の間に樹脂製のパッキンを敷いて、漏れを防ぐ。見ても、確かに漏れている部分は見あたらない。

冷却部分 中央部に蛇管が隠れている

蒸籠を抜けてきた蒸気が、上画像の冷却器を通って液体へと戻る。内部に張られているのは冷たい水。蒸籠の上部からパイプ伝いに蒸気がこの中にある蛇管に入って冷やされ、正調粕取焼酎へと姿を変える。


■おおおおおっ! ついに出てきた初留。

蒸気を通して待つこと10分少々。冷却器から待望の初留がタレてきたのだっ!

今回は古舘社長のご好意で、初留~中留~末留の各段階の『ヤマフル』を一滴舐めさせていただく。アルコール度数の差は10度前後で計4段階だ。

冷却されて出てきた初留

各段階でコップに取り、度数計で確認する。

カネさんは昨年の蒸留の際にも舐めさせていただいたとのことで、中留の35度前後が個人的に商品版に近く、好みの味だという。

わては、もう圧倒的に初留の高度数がイイと思った。ドカーン!と来る心地良い刺激と甘みの広がりがタマランのだぁ。商品版にも言えるが、やはり『ヤマフル』は正調粕取の“貴婦人”という味をしている。

容器に貯められた原酒は、高圧の蒸気で飛ばされた籾殻などが入っているため、すぐにその場で網ですくい取られていた。

『ヤマフル』は根気の要る手作業で油などを取り除くが、それがすでに開始されていた。

容器に顔を突っ込むと・・・タマラン、タマランのです。生まれたてならではの、独得の香気が鼻をくすぐる。

採られた原酒はそばにあったタンクに集められる。色が白濁している。これから手作業の濾過の工程を経て貯蔵となり、出荷の時を迎える。

とにかく、得も言われぬ香りがタンクから発散されている。このままでは油などが酸化して要らぬ臭いが付くため、商品版で体験するのは無理。残念だが、実際の蒸留現場に立ち合っていただくしかない。


■正調粕取、国境を超える?!

蒸留の最中、古舘社長が今回の蒸留中に起こったあるエピソードを話してくれた。

古舘社長「唐津市内に住んでいるある友人が見学に来たいというので待っていたら、同じ唐津に住むアメリカ人の方と一緒に見えたんですよ。
あちらではこのような蒸留法は無いので、不思議そうな感じで・・・。で、一緒にもろみと籾殻を混ぜるなど、作業も手伝ってもらいました。
とても楽しんでくれましてね。まあ、正調粕取を英語で説明するのも難しいんですが、グラッパやマールみたいなもんだというと、納得してくれました。・・・それで少し味見してもらったんですが、『美味い!』と」

おお!なかなかその方、解ってんじゃん!・・・とカネさんとニンマリ。味は好みの問題なので如何ともし難いが、妙な先入観が無ければ、もっと正調粕取が楽しんでもらえることだろうなぁ。グラッパみたいと喜んでくれる若い女性たちのように・・・。

蒸気送り込みから50分くらい。いよいよ末留カットのタイミングがやってきた。だいたい15度くらいだったろうか。舐めてみると、『ヤマフル』風味の水なのだ。でも15度はあるから清酒のレベルだが、強烈な初留からすると相対的に“水”のように思える。

古舘社長「末留をどこで止めるかのタイミングが本当に難しいんです。早すぎても歩留まりが悪くなりますし、遅すぎると味に影響しますし」

ストップの号令が掛かると、また次の蒸留に向けてもろみの準備が始まる。今年の蒸留最終日となった当日は、計7釜の工程が組まれていた。

というわけで、蒸された粕を取り出さねばならなひ。


(3)へ続く。


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