ドキュメント『ヤマフル』 試験的醸造再開 その全仕事(3)
参・そのもろみ 2003.04.30 by 猛牛
■3月8日から4月9日までの、もろみの貌を見る。
発酵開始は3月8日の午後1時30分。それ以降32日間のもろみの変化についての記録が、古舘氏のデジカメによって残された。わて自身も初めて見る正調粕取焼酎のもろみの姿である。変化の状貌を画像と古舘氏のコメントで追ってみよう。
(※以降、太字部分は古舘氏のコメントを引用)
■もろみの変化
■1日目
「ひたすら祈るのみ・・・」
■4日目
「もろみの溶解が進み、かいがタンク底面まで到達するも、もろみ自身の流動性はない。表面温度が低くても、内部はかなりの高温になっている場合が多いので、かい入れ、ガス抜きをこまめに行い、全体の温度の均整化を図る。
可能であれば、内部温度が20℃を上回らないのが理想か?正確な成分分析は難しく、発酵の状態は、ひたすら香りと状貌で判断。発酵力の最も強い時期であるので、表面上に泡が盛んに出て、もろみが歌う声に魅了される」
■8日目
「発酵の状態にやや落ち着きが見られる頃。状貌にも大きな変化が現れにくくなるので、内部品温にて発酵の状態を判断。もろみエキスの抽出が可能になるので、アルコール及び酸、・アミノ酸度にて状態の把握を行う。
適度なガス抜きが必要。もろみ温度が徐々に落ちていく時期なので外気温度によるが、もろみの上面やタンク周辺部の品温管理のため、はかま・胴巻きの装着を検討すべき時期か?」
■12日目
「炭酸ガス臭が弱まり、状貌にも変化は見られない。発酵自体は継続しているが、外気温度に連動してもろみの品温が上下する時期にさしかかるので、以降、胴巻き・はかまのこまめな脱着が必要」
■15日目
「もろみのアルコール発酵がほぼ終了に近づく。もろみの品温が、もろに外気温の影響を受けるので、胴巻き・はかまの装着が必要。もろみ品温が10℃以下に下がらぬよう、品温経過を見ながら、ガス抜きを行う」
■20日目
「発酵ほぼ終了。香り、漬込み粕の香りに近づく。これ以降のアルコール分上昇は期待できないが、もろみの品質保全のため、発酵自体は微弱でも継続させる必要があるため、かい入れやガス抜きを適宜行う。
粕に力があり発酵が早い場合で、きれいなタイプの粕取焼酎を志す場合には、アミノ酸度の数値に注目し、蒸留を検討し始めるべき時期か」
■24日~28日~32日目
「もろみ表面が乾いてひび割れができる。アルコール分の上昇は期待できないが、かい入れ・ガス抜きにて、蒸留までもろみの発酵を微弱でも継続させる。
発酵力が弱まり、もろみにとっては危険な時期。下記事項に留意し、アミノ酸度の数値を見ながら蒸留時期の決定を行う。
●もろみ品温を10℃以下に下げない
●酸度の急激な上昇はないか?
●アルコールの戻りはないか?
●もろみの急激な着色はないか?」
古舘氏より送付いただいた原画の画像サイズは記録用に極めて大きなものだったため、さすがにネット上ではそのままご覧いただけないのが残念だ。
小さい画像なので解りにくいが、この時期、もろみ表面が段々とひび割れていく様がよく見える。
■32日
仕込み開始から32日目で、もろみはゴールへと滑り込んだ。いよいよ4月9日の蒸留の時を迎える。その時の最終もろみの状態は・・・、
と記録されている。
(4)へ続く
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