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正調粕取焼酎 『ヤマフル』蒸留に挑む(4)

本稿は2005年4月にサイト『九州焼酎探検隊』で公開したコンテンツの再構成版です。
画像は2022年3月、鳴滝酒造で行われたイベントに参加したカネさん

2005.04.13 by 桃中軒牛右衛門


■カネさん、全国鑑評会用大吟醸の利き酒に挑戦!

『ヤマフル』蒸留最終日、2釜目が一段落した昼前。古舘社長が「良かったら、今度の全国鑑評会に出す予定の大吟醸があるんですが、飲んでみられますか?」とおっしゃる。当然のことながら、さらに目が急激にギラついたカネさんとわてである。

「そ、そりゃぁもぉ~(*^^*)」

蔵の奧にある検査室に案内いただくと、机の上に4つの蛇の目が鎮座していた。これまで全国鑑評会金賞を通算10回も受賞した誉れの蔵、鳴滝酒造の造りの粋が、目の前に在る。

わては清酒、特に吟醸酒は貧窮を極める家庭財政もあって未知の領域だ。

ここは福岡国税局利き酒会金賞受賞者であり、探検隊随一の味覚の持ち主、カネゴン隊員の御出座である。

最近はCask Strengthなる紅毛樽出し原酒に走り、“バテレン転び”のカスクトリウス派キリスト教酒派カネカウィ司祭ともあだ名されるカネさん。

60度近い高度数の紅毛酒に味覚蕾が擦り切れてるんじゃねぇか? なんち懸念もなんのその。他でもない鳴滝酒造さんの鑑評会用大吟を前に、カネさん、神妙なる面もちで取り組む。

そっと香りを嗅ぎ、蛇の目で色合いを確かめる。なかなか口を付けない。「ああ、早くわても舐めてぇ」と心細波立つ。

石橋を叩いて壊すが如き慎重な立ち合い、まさに剣豪の勝負のようなのだ。

古舘社長「この中で、どれを全国鑑評会に出すと思いますか?」

カネさんが慎重派になったのは、このような宿題を出されたからである。利き酒会金賞の面目をかけて、正解を出せねばならぬ。

じっくりと利くカネさんを、古舘社長が横から見つめている。いやぁ~、マジに緊張しちゃった。わてなんか「こ、これりゃウマイっすねぇ!デヘ」なんて言うのが関の山だもんね。

立ち合い後、10分も経ったんじゃないかと思える、長い時間が過ぎた。

カネ「・・・左から2番目だと思います」
古舘社長
「はい。当たりです。それを出そうと思ってます」

4つの蛇の目に対する両者の話が続くが、わてにはサッパリだ。とにかくカネさんを追って、わても飲ませていただく。清酒には無知だが、何事も経験ってこってチャレンジした。

飲んで驚いた。一般的な吟醸酒というイメージとはまったく違うのだな。華やかでフルーティ・・・なんてものではない。『聚楽太閤』という同社の銘柄に絡めて例えれば、こんな感じだ。

普通思っている「華やか+フルーティ」吟醸酒は、秀吉がギンギラギンの黄金茶室で大茶会を開き行う大名たちの豪放な闘茶のイメージ。

しかしそれとは逆に、鳴滝酒造の全国鑑評会用の大吟は、利休が朝鮮様式の鄙びた住居を茶室として設えて開く“一期一会”の侘び茶なんて味わいなのだ。

香りは落ち着いており、味わいは淡泊、渋味というか酸味さえ覚える。わてにとって、これはとても新鮮な驚きだった。

それにしてもカネさん、さすがという他はない。


(5)に続く。

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