素敵な靴は、素敵な場所へ連れていってくれる。 26
南村の事は以前から、少しは知っていた、大津同様、仕事に関しては有能な人物らしい。
大津に挨拶した後、南村へも挨拶へいった、三十半ばで、長身の瓜実顔のきれいな顔をした、この女性課長は、有美の事情はもう何もかも知っているようで、
「いろいろと、大変だったわね・・・」というと、
「でもこれからは、うちでビシビシ鍛えるからね・・・」と、笑顔で有美を歓迎してくれた。
昼頃、紗季が様子を見にやってきた、
「あれ?なにも変わっていないんだね・・・・・」
正式に異動したのに、従前と同じ席にいる状態に、少し驚いたようにそう言うと、逆に有美が、
「そっちはどう?」と聞き返した。
「前に話したとおりだね。」
紗季は、そう言うと、お昼いこうと誘ってきた。
有美は簡単に仕事を、片づけて、「行こう」と言って、二人して部屋を出た。
一階までおりて、あの絵の前を通るとき、有美は少し前から、必ずと言っていいほど、絵を眺めるようになった。朝夕の通勤の際も、最近ではちらっとだけど、目を遣ることにしている。
以前は、は全くと言っていいほど、興味もわかなかったけれども、あの絵が、平穏だけど小さく変化してく日々生活の中で、唯一変わらず、有美を見守ってくれている存在のような気がしてきた。
ドアを開けると室内は真っ暗だった、有美は慌てて靴を脱ぐと、明かりをつけて、窓を全開にしてすぐに、エアコンのスイッチを入れる。
今夜もまだ、拓海は帰って来ていなかった。
今週は、ずっと拓海の帰りが遅い、たぶん前回話していた、ワークショップや新作の稽古などで忙しくしているのだろう。
二、三日前は、帰ってきたのは明け方近くだった。
素早く部屋着にきがえると、やっと涼しくなってので、窓を閉めて、スマホを持ってベッドに横になる。
さっきまで一緒に食事していた紗季から、ラインが来ていた、既読にすると、有美は少し溜息をついてスマホを見直した。
紗季が、今付き合っている男性と別れる決意をしたらしいことは、さっき彼女から聞いたばかりだった。
生活を共にすることを嫌う、紗季の性格もあって、互いのマンションを行き来する関係を続けていたが彼女だが、別れた理由を聞いた有美に、紗季は、
「・・・・・・彼からは、もう学ぶことがなくなったわ・・・・」
普段から、あまり感情的にはなることない、紗季だったが、少し涙声でそう言ったのが、有美には凄く印象的だった。
少しその意味を、考えたけど、それは二人にしかわからないことだった。
「・・・学ぶことがない・・・か」
有美は、そう呟いて、紗季のラインに、(凄くきれいな、お別れの言葉だね)と返信すると、スマホをおいて、シャワーを浴びに行った。
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今宵も最後までお読みいただきありがとうございました。
「書いていて一番苦労するのは、何気ない一日を的確に、描写すること」
最近この言葉意味が、分かり始めました。
物語は、まだまだ続きます。